※※※グロ血あり。モブがめちゃくちゃずっと気持ち悪い。無理な方即Uターン推奨。
遂に、遂にあの子に触れることができた!
そして、犯して穢してやった!
オレが!
オレが、1番だ!
最初になってやった!あの子の初めてを奪ってやった!
あぁ、思い出しただけでまた体が熱を持つ。
トラゾーくん。
オレに優しくしてくれた人。
オレを助けてくれた人。
オレが好きになった人。
オレのモノにしたいと思った人。
なのに、堕ちてきてくれなかった。
オレがあんなにも愛を囁いたのに嫌だやめろと拒絶の言葉ばかりを叫んでいた。
ムカついて可愛い顔を叩いてしまった。
そのことは謝らないと。
トラゾーくんが他の奴らに触られているのは腹が立ったけど、余計にオレで綺麗に消毒してあげないとって思った。
だけど、他の奴らは満足したのかヘラヘラ笑いながらその場を去ろうとして。
気絶しているトラゾーくんをオレも放置するのは可哀想だと思ったけど、仕方なかった。
今まで付き合ってきた人はたくさんいたけど、こんなにも強く想ったことはトラゾーくんが初めてだった。
それなのに、彼はオレに靡くことはなかった。
「……」
触れた感触も、泣く顔も、嫌だと言いながらも抗えずに小さく喘ぐ姿も。
「また、見たいな」
また会いに行こうか。
一度は彼の仲間に邪魔をされて、ほとぼりが冷めるまで身を隠していたけど。
きっと、トラゾーくんもオレのことを想ってくれてるはずだ。
だって、あんなにも愛し合ったんだから。
「今度は愛してるって囁いてみようかな。トラゾーくんもきっと同じように返してくれる…」
「そんなあり得ないこと未来永劫こないよ」
「!!」
「テメェ、気持ち悪りぃな。全部、声に出てたぜ」
「あんた、マジでヤバいは」
「お前ら…っ」
オレとトラゾーくんを引き離した奴らだ。
「……ははっ、いや、嫉妬?」
ぴくりと3人の口元が歪む。
どうやら図星らしい。
「いいだろ?お前らより先にあの子を汚してやった!ははは!!羨ましいだろ!何も知らなかったトラゾーくんの身体に教え込んでやったんだ!このオレが!」
好意を向けてるこいつらより先に。
オレの想いの方が先に通ったのだ。
「可愛いかったよ。…そうだ、トラゾーくん、嫌だやめろって叫んでたけど最後の方は助けて、って弱々しく呟いてたな。オレが助けてあげるよって言ったら子供みたいに大泣きし始めて…それもそれで可愛いかったな」
「……言いたいことはそれだけ?」
「お前たちには自慢してやりたいよ。目に焼き付けているトラゾーくんの可愛い姿を」
「……そう。なら、その目俺らにくれない?」
「あぁ、そうですね。そんなにご自慢がしたいなら僕らにくださいよ」
「焼き付けたんだろ?なら、テメェには必要ねぇよな」
「は?」
何を言ってるんだこいつらは。
と思った時には猫のように俊敏に背後に回ったこいつらのリーダー格の奴に首を締め上げられ、オレは意識を失った。
寒い。
顔を上げると、どこかの部屋に連れてこられていた。
窓も何もない薄暗い部屋。
その真ん中に椅子に金具で固定されているオレはびしょ濡れになっていた。
「あ、起きてますよ」
「え?ホントだ。水無駄になっちゃったね」
「いや、これかけときましょうよ。俺らの労力が勿体ねぇ」
よくよく見れば奴らは防寒着を着込んでいる。
ばしゃりとバケツの水がかけられた。
「おーい」
目の前に紫髪の奴が立つ。
「…っ、?」
口を開こうとしたが開けない。
猿轡をされてるようだった。
それにしても視界がなんだかおかしい。
そう思っていたら、それを感じ取ったのか分からないけど紫髪が口を開いた。
「やっぱり要らないから返しますよ」
ぽいと太ももの上に投げられた球体。
なんだと投げられたものを見る。
「?、…⁇、!っっ〜〜〜!!?」
それは目玉だった。
「両方取ろうとしたけどやっぱ要らねぇってなったからさ。てか、焼き付けててもテメェ自体がいなくなればその焼き付けたモンも消えんだよ」
なんてことをしたんだと暴れる。
左側からドロリとしたものが流れていて、汗だと思っていたものは血のようだった。
「あーぁ、真っ赤になって。暑くなってきたなら温度もっと下げるよ?」
手元で何かを操作し出した猫のような奴は部屋を見渡した。
「だいぶ寒かったと思うけど、きみ暑がりなんだね」
冷たい、と言うよりも刺すような冷風が流れ出す。
オレはどうにか逃げようと必死で暴れた。
「ここって昔保冷庫だったんだって。ま、ここも俺らで改造させてもらって使わせてもらってんだけどな」
「下手に動くと皮膚剥がれ落ちますよ」
びくりと動きを止める。
さっき水をかけてきたのもそれが理由なのだと理解した。
「いきなり氷漬けみたいにはならないから安心しなよ。きみは特に長く苦しんでもらわないと」
奴らを睨みつけると、にこりと笑った片目を隠した男にぶん殴られた。
「自分の立場分かってねぇな」
「こういう勘違い野郎がそんなこと分かってると思います?」
「思わねぇわ」
ズキズキと痛む頭。
そこを伝う血。
「きみがしたことは誰にしようと許させることじゃないよ。あれは人の尊厳も何もかもを踏み躙る行為だ。……ただ、よりにもよって彼にそれをするなんてね」
猫のような奴は近付き座らされるオレを見下ろした。
怒りで瞳孔が開いている。
「あの時、殺しとけばよかったよ。きみみたいな人間いる価値はない」
例え殺されたとしても、こいつらが奪うことができなかったトラゾーくんの初めてをオレが奪ったという事実は何も変わらない。
一生、消えることはないことだ。
「…何笑ってんの」
氷のように冷たい声。
奴らを見上げて残った方の目を細める。
無言で振り上げられた拳は腹にめり込んだ。
どれだけ痛みを与えられようともオレには、その事実があることで余裕しかなかった。
さっき頭をぶん殴られた衝撃か、はらりと猿轡が外れる。
「はっ、…はは、あははっ!ざまぁみろ!!」
ずっと言ってやりたかった言葉を言ってやった。
寒さなんてものも、トラゾーくんのあの姿を思い出せば何も感じなかった。
「1番傍で指を咥えて見ていたお前らの大切で大好きなトラゾーくんを奪われる気持ちはどうだよ。羨ましいよな?」
興奮で痛みも感じない。
「ははは!ざまーみ…」
片目を隠した奴と紫髪の奴が、開ききった瞳孔で左側と右側を殴られた。
「は、は、…あんたら、のは、なんもできなかった、八つ当たり、だ、」
「クロノアさん、…こいつ、もう殺しましょう」
「僕、もう耐えられません」
押し殺したような地を這う声。
クロノアと言われたそいつは、無表情でオレを見ていた。
「…ぺいんと、しにがみくん。言っただろ、簡単には殺さないって」
「「でも…、」」
「俺が許さない。こんな簡単に殺したらトラゾーが感じた苦痛と割に合わないだろ」
「なんで、もすれば、いいさ…オレが、死んでも、トラゾーくんに、刻まれたこと、は、…消えない、消させない…っ」
恐怖だとしても、トラゾーくんには”オレ”というものが刻み込まれている。
「何度も何度も、…きみがその名前を呼ぶこと、俺がいつ、許可した?」
「あん、たに…許可とる必要、あん…のかよ」
「少なくとも、きみが呼ぶ権利もないよ」
殴られた衝撃で口の中を切ったようで、血が溜まっていく。
ぺっとそれを床に吐き出した。
「…ぺいんと、しにがみくん。俺、ちょっと席外すからその間こいつよろしく」
冷気の充満する部屋の扉が開けられ、一瞬暖かい空気が流れ込んできた。
「はい」
「分かりました」
バタンと閉まり、また冷たい空気で満たされていく。
「こいつタフだな」
「別の人間は既に息絶えてるのに、気持ち悪いですね」
冷めた目でオレを見下ろす奴らを見上げる。
「あんたらに、いいこと教えて…やるよ」
とっておきの。
オレにとっては不快であったことを。
「助けて、って…言ったあと、トラゾーくんは、あんたらの名前、呟いてたぜ」
「「………」」
「たすけて、クロノアさん、ぺいんと、しにがみさん、って。…その顔も、可愛かったよ。…誰も助けに、なんか来ないって…言ったらもっと、泣いちゃった…けどね」
ぺいんととかいう奴が顔面を蹴ってきた。
眩む視界。
「テメェがその名前を呼ぶなってあの人に言われただろ。その気持ち悪ぃ声で言ってんじゃねぇ」
「いやマジで。やっぱりこういう奴の頭は空っぽでできてるんですね」
鼻から滴り落ちる血。
「は、は、随分、手荒、だな…もっと、拷問、じみたこと…されると、思ってたけど、…こんなもんか…寒さで、鈍ってんのか…?」
ひくりと口元を引き攣らせるこいつら。
クロノアとかいう奴より単純な頭のようだ。
「……」
「……」
顔を伏せ肩を震わせる2人に、言い負かしてやったと口角を上げた。
「「、…ふ…は…、…はは、…っ、あはははははははははっっ!!」」
「⁈」
「見ろよしにがみ。こいつの勝ち誇った顔」
「ずっと負けてんのに、とんだ大馬鹿野郎ですね」
「あ…?」
三日月のように口元を歪めて笑う奴ら。
「あんたにもひとつ教えてやりますよ」
「とっておきをな」
「あの人は」
「あいつは」
「あんたのことなんて」
「テメェのことなんて」
「「全く覚えてねぇから」」
その言葉で今まで我慢できていた感情が沸騰するようにして溢れ出す。
「そんなわけないだろうが!!あんだけ、オレを刻み込んでやったんだぞ!!忘れるわけない!!覚えてないわけない!!」
「されたこと、は憶えてる。けど、テメェの顔なんてなんも覚えてねぇんだよ。まぁでも安心しな、俺らが全部消し去るから」
「あんたのことなんて、すぐに記憶の片隅にも残らないようにするんで安心してください」
「!!!!、そんなの、ゆるさ、ないぞ!!」
精神を揺さぶられている。
ここで慌てれば奴らの思うツボだ。
なのにはらわたが煮えくりかえるほど腹が立つ。
「1ミリも、残らせねぇよ」
「あんたのことなんて」
バンッと扉が開けられる。
「ただいま」
「「あ、おかえりなさい」」
「やっほー」
「「うわ出た。ガチ勢が」」
「虫みたいな言い方すんなよー。ちょっとノア、こいつら躾なってねぇぞ」
青い髪に帽子、赤いマフラーを巻いた見知らぬ男。
「すみません。そういうのするの俺じゃないんで」
「あー、それもそうかお前も躾なってなかったわ。…んで?こいつがトラ泣かせた奴?」
「えぇ」
「ふぅん?」
オレに歩み寄りじっと見下ろしてくる。
「人の弱味につけ込みそうな顔してんな」
「らっだぁさん」
「お、悪い悪い」
「あなたが、俺も参加したいっていうから仕方なく連れてきたんですよ」
「そりゃあ、トラを泣かせたとなりゃあ参加せんといけねぇだろ」
半纏のような上着の中から、何かを取り出した。
「今までの奴より丈夫そうだな」
「それはもうかなり。しぶといんですよ」
「ゴキブリみてぇ」
「まぁ、寒さのせいで痛覚弱ってるし、何よりしにがみくんの薬のおかげでそう感じないんでしょ」
「へー。しにー今度俺にもそれ分けてよ」
「えぇ?まぁいいですけど」
青い奴が懐から取り出したものをオレに見せる。
「ホントは俺も最後までやりたかったけど、今回はノアたちがすべきことだからな」
取り出したものをオレの首につけた。
「これ、寒さに応じてどんどん絞まってく金属」
「えげつなーもん作ってんな」
「そりゃ、トラの為なら惜しまないぜ」
じゃーなと出ていく青い奴。
あまりの速さに理解が追いつかない。
「……それじゃあ、まだまだ耐えれそうなきみに忘れられないくらいの苦痛をあげよう」
「痛み効かんくなるやつもそろそろきれる頃ですかね」
「お、じゃあマジ殴りしてもOK?」
「とりあえずこっちの目も潰しておこうか」
先の尖った細い何かが眼前に来た頃には視界は闇と化した。
「っ、ぎぃ⁈」
「おぉ、効果きれましたね」
「ぶん殴っていい?」
「「どうぞー」」
左のこめかみを鈍器で殴られたくらいの衝撃がきた。
頭がぐらつき、ふらふらする。
「僕はあんま力無いからな…」
さっき殴った時のが力がないだって。
「ま、これでいっか」
何も見えないオレは何をこれからされようとしてるか分からない。
「えい」
「あ゛ぎゃっ!」
指先が熱い。
「うわ、芋虫みたい。キモ」
熱いし、痛いし、寒いし、苦しい。
「ねぇ痛い?」
急に日常会話をするようにして穏やかな声をかけられる。
「ぃ゛だい…」
「ふぅん、苦しい?」
「ぐるじぃ…」
「へぇ、寒い?」
「ざむ゛い…」
「そう」
その次には穏やかさなんて全くない地を這うように冷たく低い声で囁かれた。
「その全てを感じながら死ね」
最早刺さるといわんばかりの冷気。
金属の扉の閉まる音と鍵のかけられる音。
暗闇の中で思い浮かぶのは、己のしでかしたことで。
既に後悔したところで、意味はない。
いや、後悔はしていない。
する必要のない後悔の方が意味がない。
絞まっていく首元。
痛さを通り越して熱さを感じる指先。
未だにぐらつく頭。
「はは、は…、」
彼に関わった人間が姿形、存在、全て消されてるということを身をもって知った。
あいつらが隠し匿う気持ちも。
オレというものは消える。
奴らの言った通り。
「で、も…オレ、は、…」
彼に傷をつけた初めての人間である、それは一生変わらない。
それさえあれば、死んだっていい。
「ははは、は、はは…っ」
薄れいく意識の中、オレの乾いた笑いだけが大きく反響していた。
─────────────────
『クロノアさん?』
「寝ないで待ってたの?」
『……ダメでしたか』
「ううん、ダメじゃない。嬉しいよ」
『クロノアさんたちにしては、随分時間かかってましたね。…怪我とかしてないですか?』
「思ったよりしぶとくてね」
『しぶとい…?あ、じゃあ、掃除でもしてたんですか?』
「…うーん、まぁそうだね」
『⁇』
「もう少ししたら迎えに行くよ。汚れちゃったからね」
『まぁ、お掃除してたんなら時間もかかるし、汚れますよね』
「うん。綺麗にしといたからね、トラゾー」
『⁇⁇、よかった、です?』
「ふふ、いい子で待ってるんだよ」
『もう!だから、俺子供じゃないですってば』
「ごめんごめん。ついね、…いい子で待ってたらご褒美あげるね」
『ご褒美…?、まぁ、あんま期待しないで待ってます』
「はは、言い返せるくらいには元気になったようだ」
『ともさんやソーラさんたちのおかげで、…でも、なんか、…どうして、俺こんな体中に怪我してるからあんま、覚えてなくて…』
「……」
『クロノアさん?』
「…いや、覚えてないならそのまま忘れてた方がいいよ」
『…まぁ、あなたがそう言うなら…』
「じゃあ、もう少し待っててね」
『はい、分かりました』
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「ソーラさんだね」
「ですね」
「あの人、優しさの裏に狂気じみたものあるからね」
「あらやだ私ったら?ってやつ?」
「まぁあの優しい声で大丈夫とか催眠かけられればそうなるか」
「あの人の催眠解けれる人誰もいねぇしな」
「気遣わせちゃったね」
「ともさんたちには恩しかないですからね」
「ま、早いとこ体綺麗にしてトラゾー迎えに行こうか。また拗ねられちゃうから」
「「了解です」」