テラーノベル
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煌びやかな食器、見たこともない形のバスタブ、どんな態勢で寝ようがフワフワなベッド……
――非日常だけれど、これが私の最期の日常
目を閉じてそう思った瞬間、意識を手放した。
前夜の深夜バスの分も深く沈んだ、というのが正解か。
6時には目覚め、パソコンとタブレットを立ち上げると、タブレットで【ハヤカワ総合住宅グループ】の場所を調べる。
そしてパソコンでは、寄付先の候補を調べ始めた。
――還す場所
怪しい団体に寄付は出来ない。
ちょっと時間をかけて調べないといけないかな。
真新しい、明るいネイビーのセットアップパンツスーツ。
インナーには薄い白ニット。
小さなネックレスをつけて、持つのは昨日のリュック。
――仕方ないよね、貴重品を担いでいるんだもの
リュックを背負う前に、体を前後左右に伸ばしてストレッチをしてみる。
どこも痛くない。
スイートルームのお風呂とベッドは疲れを取るようだ。
そして、父と同じだと思っていた背中の痛みも倦怠感も、今朝はなかった。
――よし、今のうちに動くよ
と、張り切ってやって来た、ハヤカワ総合住宅グループ本社は、ガラス張りの巨大なオフィスビル内にあった。
一流企業の社員と思われる人たちが、颯爽と行き交う中、とりあえずセットアップは着ていてよかったと、ガラスに映る自分を見る。
それから、3階のオフィスへ行くと……不審そうな顔をした受付さんと数秒見つめ合った。
「おはようございます。副社長の早川さんとお約束をいただいています。一ノ瀬菊と申します」
私が彼の名刺をスッと見せると
「失礼いたしました、一ノ瀬様。少々お待ちください」
一度最敬礼を見せた受付さんは内線電話を持ったようだ。
「副社長、一ノ瀬様がお見えになりました。どちらへご案内いたしましょうか?……承知いたしました。ご案内します」
彼女は私をこちらへ、と手と言葉で静かに案内してくれる。
コンコンコン…
「失礼します。一ノ瀬様です」
受付さんがドアを開けて私を通してくれたので
「ありがとうございます」
会釈してから部屋に入ると、すぐに背後でドアが閉まった。
「……本当に来たか」
大きなデスクの前で、早川希輔は幽霊でも見たかのような目で私を見た。
コメント
2件
えっ来ないと思ってたの?菊ちゃんは人生を賭けてるんだから!!真摯な対応をお願いします🙏
希輔さんは来ないと思ってたのか… 菊ちゃんハヤカワを調べたからこそお願いしようと決めたんだよね? 深く眠れて疲労も回復してるようだし、体の痛みも倦怠感もないようだから、きちんと話が出来そう。協力してくれるといいんだけど… もちろん希輔さん調査済みでしょ? 信じたくないけど菊ちゃんには時間がない… 体もだけど、追っ手もせまってくるもんね。確実に完璧に急いで…