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#エリオット
あおあお
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#エリオット
あおあお
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午前中の魔界厨房。
空気には、潰した魔界トマトの青臭さと、煮詰められた香辛料の刺激臭が重たく漂っていた。
その中心で、1eggsは金色の目を極限まで鋭く細めていた。
「いいか、生地野郎……俺のレシピはな、ただの料理じゃねえ」
漆黒の手には精密デジタル計量器。
もう片方には、命の次に大切な金色のフライパン。
コック帽を揺らしながら、1eggsは調理台の上に並べられた材料を睨みつける。
「配合、温度、火加減、投入タイミング……全部だ。全部、1ミリの狂いも許されねえ暗黒芸術なんだよッ!!」
真っ赤な魔界トマトを量る。
342グラム。
「よし」
魔界バジルの抽出液を滴定管で垂らす。
3.5ミリリットル。
「……完璧だ」
その瞬間だった。
「あはは、1eggsは本当に真面目だねぇ」
ふわり。
背後から甘い小麦の発酵臭。
ジョンドゥだった。
首の赤いスカーフを揺らしながら、いつもの満面の笑顔で隣に立っている。
「でもね、僕のミキサーの勘だと、こっちの方がもっと美味しくなる気がするよ?」
「あ?」
1eggsの金色の瞳が嫌な予感で細まる。
「おい待て、生地野郎――」
遅かった。
ジョンドゥは満面の笑顔のまま、計量途中の材料の山へ右腕を突っ込んだ。
次の瞬間。
ブゥォォォォォォォォンッッ!!!!
厨房全体が震えるほどの爆音。
業務用大型ミキサーと融合した右腕が超高速回転を始める。
最高級魔界トマト。
秘密配合の香辛料。
まだ計量すら終わっていない未精製スパイス。
全部。
全部まとめて。
ドロドロに粉砕された。
「ぎゃはははは!!」
窓の外では、ホスフォラスが腹を抱えて笑い転げている。
「全部混ざってる!! 最高!!」
「――――ッッ!!」
1eggsの顔が、一瞬で真っ赤に染まった。
「お前ェェェエエエッ!! 俺の!! 黄金比率がァァァアアアアッッ!!!」
料理人としての魂の叫び。
しかしジョンドゥは、飛び散った赤いソースを白い頬につけたまま、嬉しそうにミキサーをブォン、ブォンと鳴らしている。
その白い顔は、発酵した生地みたいにほんのり熱い桃色へ染まっていた。
「はい、できあがり!」
ジョンドゥはスプーンでソースをすくい、そのまま1eggsの口元へ差し出す。
「怒らないで、味見してみて?」
「誰が食うかッ!!」
叩き落とそうとして――
止まった。
香りだ。
濃厚。
暴力的。
なのに妙に調和している。
料理人としての本能が、強制的にブレーキをかけていた。
「……っ」
悔しそうに肋骨を震わせながら、1eggsは渋々スプーンを口へ運ぶ。
そして。
「…………は?」
世界が止まった。
衝撃。
自分の緻密な計算を全部ぶち壊したはずのソース。
なのに。
信じられないほど美味かった。
濃厚で。
危険で。
感覚を狂わせるほど完璧だった。
1eggsの金色の目が大きく揺れる。
「な、んで……」
プライドが音を立てて砕け散っていく。
そんな彼へ、ジョンドゥはさらに距離を詰めた。
ふんわり甘い小麦の香り。
至近距離。
丸い瞳を熱っぽく潤ませながら、囁く。
「ね? 美味しいでしょう?」
ブォン、ブォン。
ミキサーが嬉しそうに脈打つ。
「僕の右腕ね、大好きな1eggsの料理と、もっともっと『ひとつに混ざり合いたい』って毎日思ってるんだ」
「…………」
「だからね、1eggsの料理を世界一美味しくする混ぜ方、感覚で全部わかっちゃうの」
さらに一歩。
距離が近い。
近すぎる。
「今度はさ」
ジョンドゥが、熱を孕んだ笑顔で囁く。
「1eggs自身も、僕のミキサーで骨の奥までトロトロに捏ねくり回してあげようか?」
「――――――ッッ!!!!!」
終わった。
1eggsの理性が。
脳内で、ホスフォラスが持ち込んだBL本の過激シーンがフラッシュバックする。
壁ドン。
朝チュン。
捏ねくり回す。
ひとつに溶け合う。
全部一気に襲ってきた。
「うるせェェェエエエエエッッ!!!」
カァァァァァンッ!!!!
凄まじい金属音。
1eggsは羞恥と敗北感で真っ赤になりながら、金色のフライパンをジョンドゥの顔面へ全力で叩き込んだ。
「いったぁい……」
ぐにゃ。
柔らかいパン生地の顔が綺麗にへこんだ。
だがジョンドゥは、むしろ恍惚とした顔で頬を桃色に染めている。
「えへへ……1eggsのフライパン、すごく硬くて愛情いっぱい……好き……」
ブォォォォォォンッ!!
ミキサーが過去最大出力で歓喜していた。
完全に逆効果だった。
「……はぁ」
そこへ現れる、死んだ魚の目。
アズールだった。
脇には300ページの『厨房備品損害報告書』。
「朝から不純極まりない騒音ですね」
冷え切った声。
「1eggs。調理器具による暴力行為で減給」
「ジョンドゥ。レシピの無断改変および勤務中の不純誘惑行為で減給」
「あとホスフォラス。窓に張り付いていないで、床に散らばった高級バジルを1グラム残さず拾ってください。胃が痛いです」
ホスフォラスが「えぇー!?」と笑いながら逃げる。
アズールは無言で報告書の角を振り上げ、
ペシッ。
顔面真っ赤でフリーズしている1eggsの頭を軽く叩いた。
「……仲良くするなら、せめて予算内でやってください」
「誰が仲良くだ!!」
即座に叫ぶ1eggs。
しかしその横で、ジョンドゥは満面の笑顔のままだった。
「でも1eggs、ソースは美味しくなったよ?」
桃色に染まった頬。
熱っぽい瞳。
「今日の夜の仕込みの後、僕の体でもっと特別な試作しようね?」
「二度と喋るな変態生地野郎ォォォッ!!!」
真っ赤になった1eggsが再びフライパンを振り回す。
その背中を。
ジョンドゥは、どこまでも甘く、深く、熱い執着を孕んだ笑顔で見つめ続けるのだった。
コメント
2件
ワンエッグがびっくりしてるのが可愛い!!!!やっぱ料理は分量と勘で違うやり方なのが2人っぽい!!!!