テラーノベル
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ヤシの葉が月光に揺れ、遠くで波の音が穏やかに響く。
木造の部屋の中、レクトはベッドの端に座り、緊張で息を詰まらせていた。
年頃の少年にとって、転入生ミラ・クロウリーとの相部屋は未知の領域だった。
第18話で、ミラは禁断の果実――グランドランドの「永遠の果樹園」からパイオニアが手に入れた、魔法を根本から変える呪われた果実をカットし、レクトに差し出していた。
虹色の果肉が月光に妖しく輝き、ミラの鋼の魔法がフォークを鋭く光らせていた。
「ほら、レクト君、食べて。」
ミラの声は甘く、鋼のブレスレットがカチャリと鳴る。
彼女の紫色の瞳が、レクトを捕らえる。
(もう少し…私の任務が達成する!)
彼女の目的は、フルーツ魔法を「サンダリオス家にふさわしい力」に変えること。
(あれ……なんか変な感じ…)
そして瞬間、レクトの身体がふらつく。
「う…っ!」
彼はベッドに倒れ込み、喘ぎ声を上げる。
「……っ、、ああ、、あ、あ、あ、!!、」
頭がガンガンと響き、視界が揺れる。
何…!? これ…!
禁断の果実は、魔法を変化させ、心を蝕む。
だが、
レクトの体内で別の何か異変が起きていた。
ボタボタボタボタ
「……!!?」
レクトの手から大量の虹色の果実が現れる。
そう
「禁断の果実」だ
「え……なにこのフルーツ、、、、!」
「はああああああ……!!?!」
ミラは目を見開いて叫ぶ。
フルーツ魔法を司る彼の身体は、果実を「異物」ではなく「フルーツ」として認識し、吸収してしまったのだ。
光が彼の手から溢れ、「禁断の果実」に便乗して床に様々な小さなリンゴがポトリと落ちる。
……
「見たことないフルーツだ、フルーツ魔法のバグ……?」
ミラの目が見開く。
「…効かなかった!?」
彼女の鋼のフォークが震え、果実の残骸が床に転がる。
(どういうこと…? フルーツ魔法には穴があったっていうの……??)
少なからず、
彼女は大きな過ちを犯したことに気づく。
禁断の果実は、レクトには効かない。
永遠の果樹園でしか生み出せない果実を、レクトが簡単に増やしてしまった。
(パイオニアさんに…報告しなきゃ…!)
ミラは慌てて立ち上がり、部屋を出ようとする。
その時、ドアがバンと開いた。
ヴェルが飛び込んできた。
彼女は隣のコテージで、レクトの喘ぐ声を聞きつけ、駆けつけたのだ。
月光の下、
レクトが床に倒れ、
ミラがフォークを持っている光景を見て、
彼女の顔が歪む。
「ミラちゃん……!!!レクトに何したの!?」
激昂。
ヴェルの「震度2」が発動し、ミラの足場を揺らしてしゃがませる。
彼女の怒りが、地面を微かに揺らしている。
そして部屋のオブジェが棚からボタボタ落ちてくる。
「ま、待って、ヴェルちゃん、誤解だよ!」
誤魔化すようにミラが手を振ると、鋼の魔法が発動。
金属の盾が瞬時に形成され、落ちてくるオブジェを弾く。
カンカンと音が響き、部屋に金属の光がちらつく。
「誤解……?何が?!、
前々から何を企んでたの!?!!」
ヴェルの言葉にミラの耳が圧迫され、彼女の紫色の瞳が揺れる。
(ここにはいられない…早くパイオニアさんに伝えなきゃ…!)
ヴェルが叫び、震度2を強め、天井の梁が軋む。だが、ミラの鋼の魔法が再び発動し、金属の網が梁を支える。
「ごめん、ヴェルちゃん。話してる時間ないの。」
ミラはコテージの窓を跳び越え、夜の闇に消えた。
彼女の鋼のブレスレットが、月光に最後に光る。
「ミラ…!」
ヴェルが追いかけようとするが、レクトの呻き声に振り返る。
「レクト!」
彼女は彼に駆け寄り、床に膝をつく。
レクトはまだふらつき、額に汗を浮かべている。
「ヴェル…大丈夫、俺…」
彼の声は弱々しいが、目はしっかりしている。
ヴェルは思わずレクトを抱きしめる。
「よかった…生きてて…!」
彼女の腕が、
レクトの背中を強く抱く。
(恋心…? そんなの、ダメだ…)
彼女の胸が締め付けられる。
(レクトは必死で戦ってるのに…私が浮かれてちゃダメ…!
ちゃんと、そばにいなきゃ…!)
彼女の「震度2」が、微かに地面を揺らし、彼女の決意を象徴する。
レクトはヴェルの温もりに、ほっと息をつく。「ヴェル…ありがとう…」
翌日、セレスティア魔法学園に戻ったレクトは、星光寮の自室でベッドに座っていた。
ジェイド町での出来事が、頭から離れない。
虹色の果実を食べ、フルーツ魔法で虹色の果実を生成した。
レクトは虹色の果実が、禁断の果実だということを知らない。
試しに手を振ると、再び掌から虹色の果実がポトリと落ちる。
「このフルーツ、、、本当になんなんだ」
そしてレクトの脳裏には、
ミラの紫色の瞳、彼女の微笑み、鋼のブレスレットの輝きが脳裏に焼き付いている。
(ミラちゃん……何をしようとしてたんだ……?)
彼女への不思議な信頼と、裏切られたような感覚が、彼の心を揺さぶる。
ヴェルは、星光寮の廊下でレクトの部屋の前に立っていた。
あの夜のことが気になって仕方ない。
(ミラ、レクトに何をしたの…?)
彼女の胸には、不安、そしてレクトを守りたい気持ちが渦巻く。
彼女は決意し、ビータに相談することにした。
ビータのタイムリープ魔法は、過去を少しだけ覗くことができる。
「ビータなら…あの夜のことを調べられるかも…」
夕暮れ、
ヴェルは学園の屋上でビータと待ち合わせた。
屋上には風が吹き、グランドランドの夕陽が校舎を赤く染める。
ビータが現れる。
「よ、ヴェル。何の用だ? レクトのことか?」
彼の声は軽いが、目は真剣だ。
「うん…ビータ、
昨日の夜のことで、
ちょっと調べてほしいことがあってね。」
次話 8月23日更新!
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