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にょたゆり中太。・・・後天的女体化です。
中也は女だったら首領とかの前では「私」だけど砕けた場面では「俺」だと思ってる。そうであってほしい。
あと、どうでもいい話だけど・・・っていうか完全に私の主観だけど・・・
女の子同士が恋人繋ぎして歩いてても「仲良しの親友なんだなぁ(ホッコリ」ってだけなのに
男の子同士が恋人繋ぎして歩いてたら「へえ、あの2人ゲイなんだぁ、。」ってなるのなぁぜなぁぜ?(古い
ヨコハマの租界跡地、崩れかけた倉庫の影に、二つの人影があった。 一人は、返り血を浴びた黒い外套を翻し、荒い息をつく小柄な少女。もう一人は、その背後でひらひらと手を振りながら、場違いなほど柔らかな微笑みを浮かべる長髪の少女だ。
「……っつー、。手際が悪ィんだよ、手前は」
中也は、低く、けれどどこか鈴の鳴るような響きを含んだ声で毒突いた。 彼女は、うなじの後ろで一つに束ねた髪を乱暴に揺らしながら、愛用の帽子を深く被り直す。女性の身体になっても、その立ち振る舞いは「ポートマフィア最悪の武闘派」そのものだ。
「ひどいなぁ、中也。僕は僕なりに頑張ったよ? ほら、この通り、腕を擦りむいちゃった」
太宰は、ゆるふわに巻かれた茶色のロングヘアを揺らしながら、中也の視界に割り込んだ。 袖を捲り上げ、白く細い腕を差し出す。そこには、確かに小さな掠り傷があった。 かつての「少年」の頃の、どこか刺々しい雰囲気は影を潜め、今の彼女には、本能的に庇護欲を唆るような、不思議な愛嬌が備わっている。
「んなもん、唾つけときゃ治るだろ。……あー、クソ。血でベタベタすんのが一番腹立つ」
中也は顔をしかめ、自分の細い指先を見つめた。 身体が女に変わってからというもの、彼女には不思議な変化があった。以前よりも指先の感覚が鋭くなり、複雑な爆弾の解体や、服の修繕といった細かい作業が驚くほど正確にこなせるようになったのだ。 その代わり、第二次性徴というやつは彼女に対して酷く厳しかった。腹筋は鋼のように割れ、四肢は引き締まっているが、女性らしい曲線には程遠い。
「中也のそういう、野蛮なところが素敵だよ。……ねぇ、痛いの飛んでいけ、してくれない?」
太宰が、上目遣いで中也の顔を覗き込む。 童顔で愛らしい顔立ちに、豊かな胸。細身の体型に反して、彼女の身体は女性としての「武器」を揃えすぎていた。おまけに、以前よりもずっと距離感が近い。
「……死ね。誰がやるかよ、そんな気色の悪いこと」
中也はそう言いながらも、無意識に太宰の腕を掴んでいた。 手先が器用になった彼女は、懐から清潔なハンカチを取り出すと、手際よく太宰の傷口を拭い、応急処置を施していく。 太宰はそれを、嬉しそうに、そして当然のように受け入れている。
「やっぱり中也は優しいね。僕、女になってから、中也に甘えるのが趣味になっちゃったよ」
「手前は男の頃から大概だっただろうが」
中也は呆れたように息をつく。 公式の場――首領や紅葉姐さんの前では、中也は「私」として、凛とした立ち振る舞いを崩さない。だが、こうして太宰と二人きりになると、どうしてもかつての「俺」が顔を出す。 それは、彼女にとって太宰が、最も自分を自分たらしめる場所だからに他ならない。
二人は、夜のヨコハマを歩き出した。 まだ街灯がまばらな裏通り。太宰は当然のように、中也の手を握った。 中也の指は節くれ立っているが、女性になったことで、その掌は以前よりも柔らかく、温かくなっていた。
「……おい、離せよ。歩きにくいだろ」
「いいじゃないか。中也の手、小さくて可愛いよ。僕の手にすっぽり収まっちゃう」
「っ、手前のがデカいだけだろ! 嫌味か!」
中也は顔を赤くして怒鳴るが、その手を振り払うことはしなかった。 太宰の体温は、以前よりもずっと高く感じられる。ボディタッチが増えた彼女の仕草に、中也はいつも振り回されていた。 太宰の方は、そんな中也の反応を楽しんでいる節がある。彼女はナルシストではないが、自分が中也にだけは拒絶されないということを、確信犯的に理解していた。
「ねぇ、中也。僕ね、最近思うんだ」
太宰が、ふと足を止めた。 街灯の下、彼女の茶髪が光を反射して、幻想的な輪郭を描き出す。
「何だよ」
「僕たちが男でも女でも、結局こうして一緒にいるっていう事実は変わらないんだよね。……それって、少しだけ気持ち悪くて、最高に面白いと思わない?」
太宰の瞳に、深い愛情と、それと同じくらいの独占欲が浮かぶ。 それは、言葉にせずとも伝わる「相思相愛」の証だった。付き合っているわけではない。互いに好きだと言い合ったこともない。 けれど、二人の間には、血と硝煙で結ばれた、どんな恋人よりも強固な絆があった。
中也は、太宰の握る力を少しだけ強めた。
「……気持ち悪ぃのは同感だ。だが、面白くはねえよ。手前と一緒にいるのは、仕事だからだ。それ以外に理由はねえ」
「嘘だ。中也、今、僕と繋いでる方の手の温度、上がってるよ?」
「うっせえ! 走るぞ! ぐずぐずしてたら姐さんに怒られる!」
中也は強引に太宰の手を引っ張り、夜の闇へと駆け出した。 筋肉質な彼女の脚力は、女性になっても衰えるどころか、重力を操る才によって磨きがかかっている。
「わあ、ちょっと待ってよ中也! 僕の胸が揺れて痛いんだけど!」
「知るか! 削げ落としてやるよ!」
「ひどいなぁ、あんなに昨日、柔らかいって褒めてくれたくせに!」
「言ってねえ!!!」
夜の帳に、二人の少女の笑い声(と怒号)が溶けていく。 性別が変わっても、魂の形は変わらない。 傷だらけの拳と、包帯だらけの知略。 二人は、これからもこの街で、誰よりも美しく、誰よりも醜く、共に生きていくのだ。
例えその先に、どんな破滅が待っていようとも。
中也が首領への報告を終え、本部ビルの長い廊下を歩いていると、壁に寄りかかって待っている太宰の姿があった。 彼女は中也の姿を認めると、パッと顔を輝かせて駆け寄ってくる。
「お疲れ様、中也。この後の予定は?」
「……。飯食って寝るだけだ。手前は?」
「僕はね、中也の部屋で、中也の作ったご飯が食べたいな。あ、手先が器用になった中也のオムライス、期待してるよ」
太宰は自然な動作で、中也の腕に自分の腕を絡めた。 豊かな胸が、中也の二の腕に当たる。
「……ったく。手前、本当に図々しくなったな」
中也は、呆れたように、けれどどこか嬉しそうに口角を上げた。 「私」でも「俺」でもない、ただの中也として、彼女は隣に並ぶ「相棒」を連れて、自宅への道を歩き出す。
それは、双黒という最強の二人が、ただの「二人の少女」に戻る、束の間の休息だった。
#旧双黒