TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

しばらく休んだあと、私たちは暗闇の中を再び歩き始めた。


進んでも進んでも暗闇。

そして進む方向も、ルークの感覚頼みだ。


「……ちなみにエミリアさんは、何か感じたりしていますか?」


「そうですね……。魔力のような流れは感じますけど……。

いや、でも……魔力……なのかな……?」


エミリアさんの答えも少しあやふやだ。

何かしらの力が流れてはいるようだけど、魔力ではない。……しかし、似たようなところはある?


「……うーん? 未知の、不思議な力なんでしょうか。場所自体もそんな感じですし……」


――不思議な力。それは、結論の出ないときには便利な言葉だ。

そもそも魔力だって、魔法を使わない限りは分かり難いものだけど……。


しかしどちらにしても、感じられるのは単純な魔力ではないようだった。



「……神殿に、何かがいるんですかね?」


「そうですね。アイナさんは『光竜の魂』を求めたわけですから、それがあるとして――

何者かが、それを護っていたり?」


「むぅ……。条件がどうのこうの言っていましたし、もしかして戦うことになるんでしょうか。

『これが欲しければ我を倒してみよ』、的な感じで」


「うわー、ありそうですね。

そうしたらいつも通り、ルークさん頼りになってしまいますが……」


「――すいません、アイナ様。エミリアさん」


「うん? どうしたの?」


「その……。実は私の剣ですが、お城で没収されておりまして……」


「「え」」


……そういえば、ルークは剣を持っていない。

確かに手枷を付けられるくらいだから、剣なんて没収されていて当然なんだけど――


「その剣って、ずっと使っていた剣ですよね。……うーん、あとで返してもらいに行きましょう!」


「でも、それにはまず、ここから出ないといけませんからね。

もしこの先で戦闘になったら、その時点で武器が無いわけで……」


……しかし、一応それなりの武器は錬金術で作れるのだ。

れんきーんっ。


バチッ


いつもの音と共に、私の手にはシンプルで粗野な剣が作られた。


「――こんなのならあるけど、使える?」


「ありがとうございます。

……長さもちょうど良いですし、使わせて頂きます」


「おぉー。アイナさん、鍛冶屋にもなれるんじゃないですか?」


「いやいや、それは流石に……」


実際のところ私の作る剣は、金属の塊を剣の形にしただけのようなものだ。

日本刀の『折り返し』みたいな繊細な技術は入れ込むことは出来ないし、他にも鍛冶としての技巧は取り入れることは出来ない。


簡単な鋳造で……みたいなものなら作れるけど、それ以上のものは難しい……って感じかな?

でも、管轄外の鍛冶がそこまで出来るんだから、ひとまずは十分だよね。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




再び暗闇の中を歩いていくと、徐々に寒気のようなものを感じてきた。


「……何だかちょっと、寒くない?」


「アイナ様、さすがです。気配の元に、ずいぶんと近付いてきましたからね」


「ああ、そっちが理由……? もう夜だろうし、てっきり気温が下がってきたのかと思ったんだけど……。

そういえば今って何時かな。――クロック!」


時計の魔法を唱えると、時間を示すウィンドウが宙に現れた。


「――18時過ぎ、かぁ。

でもここ、時間がよく分かりませんよね。遅い時間だから暗いってわけでもありませんし」


「最悪、一晩過ごすことになりそうですね。

……いえ、脱出方法が分からないから、何日もいることになるかもしれませんけど……」


「うえぇ、それはちょっと勘弁して欲しいです……。

でも、もう少しで多分神殿に着くんだよね?」


「神殿かどうかは分かりませんが、ここの主要な場所であることは間違いないでしょう」


「そっかー。ぱぱっと素材が手に入って、ぱぱっと出られれば良いんだけど――」




「――……む!? おお……!?」


引き続き話をしながら歩いていると、先を歩くルークが不意に驚きの声を発した。


「どうかしたの?」


「はい、アイナ様の位置からもう少し進むと……ちょっと進んで頂けますか?」


「え?」


不思議に思いながら、ルークの横あたりまで進んでみる。

すると――


「う、うわぁ!!?」


私の目の前に、突然巨大な神殿のような建物が姿を現した。

まさに、突然。……これは正直、心臓に良くないレベルだ。


「どうやらこの辺りまで進むと、突然見えるようですね」


「……なるほど……。それにしても、大きい建物……」


「え? え? 二人ばっかりズルいですよ!

わたしも進んで良いですか!?」


「はい、エミリアさんもどうぞ」


ルークの言葉に、エミリアさんも私の横まで歩みを進める。


「――わっ!? わわっ!!

おぉー!!」


恐らく神殿を目の当たりにしたエミリアさんは、ひたすら感嘆の声を出していた。

何だか面白いというか、可愛らしい。


「これでようやくゴールが見えてきましたね!

神殿の中も広そうですけど、このどこかには、何かがあるでしょうし」


「そうですね。神殿というからには、内装とかにもヒントがあるかもしれません。

ルーンセラフィス教に関わるものでしたら、わたしなら見れば分かりますから!」


自慢気にそう言うエミリアさん。

確かに『光』やら『竜』やらの単語が出てくるのであれば、その辺りを信仰として扱っているルーンセラフィス教は強いかもしれない。


「それじゃ、早速進んでみましょうか。

時間も時間だから、ある程度のところで一晩休むとして――」


「――いえ」


私の言葉を、ルークが遮ってきた。


「うん? ルーク、どうしたの?」


「……この神殿……少し進んだ先に、何かいるようです。

おそらく、2つ先の部屋にはもう――」



――ルークがそう言った瞬間、突然地面が細かく揺れ始めた。



「わっ!? じ、地震!?」


「えぇっ!? 珍しいですね!?」


「いや、これは……気付かれたようです」


「え……? その、中にいる……何かに……?」


「はい。……どうしますか?

さすがに入口や隣の部屋で一晩過ごすのは避けたいので……進むか、戻るかになると思います」


「うぅ……さすがにここから、何も無いところに戻るのはちょっと……。

ちなみにその何かって、友好的なのかな……?」


そこにいるのが番人のようなものであれば、おそらくは敵対的なのだろう。

すぐ戦闘になるのも目に見えてしまう。


「そうですね……。今のところ、敵意や悪意のようなものは感じませんが……」


「……それじゃ、進んでみる……?

ちゃんと帰れるのか、まずは調べておきたいし……」


どこにいるかも分からない状態で、帰れるかどうかも分からない場所。

これでは正直、いくら休んでも疲れは取れなさそうだ。


「分かりました、私は大丈夫です」


「アイナさん、わたしも大丈夫です!」



――少し進んだ先にいる『何か』。

それの正体はまだ分からないけど、ここは覚悟を決めて進んでみよう……!!

異世界冒険録~神器のアルケミスト~

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

24

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚