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それでは、
どうぞ。
ーーー
鉄のような血臭さが広がっている。
この小さな小屋に日が傾ききったこの時間、決まって訪れるのが日課になっていた。
その小屋には、厳重な檻のような部屋が一つあるだけ。
私はその檻の鉄格子から、その“少女“を見下ろした。
🧡「……、」
彼女は私の様子に気付くと、そっと微笑んだ。
痣だらけで痩せ細った体。
その小さな小屋すら自由に移動することも憚られる足枷。
ただその状況に見合っていない美しい容姿だけが、妙に異世界感を漂わせている。
💜「相変わらず、綺麗だね。」
床には、吐瀉物や血の跡が残っていてその部屋と少女の痛々しさを倍増させている。
私は檻の鍵を開けて、彼女に触れた。
🧡「、…桜花。」
💜「……‼︎」
💜「どうしたの。」
彼女は、小さな声で私の名前を呼んだ。
意図した声量ではなく、きっと舌が切れていて喋りにくいのだと悟ると、私は部屋の掃除を中断して彼女の近くにしゃがみ込んだ。
🧡「き、たな…い、よ。」
💜「んーん、大丈夫だよ。私がやりたくてやってるだけだし。」
美咲は、この小さな村の儀式の生贄に使われてしまう哀れで可哀想な少女。
彼女の家系は、大昔に一夜でこの村を襲った“大災害“を起こしてしまった“厄人“と呼ばれる人の子供。
だからこうして毎日色んな人に痛ぶられる。生まれてきてしまったが故に、彼女の美貌は何処にも見せられることなくこの生を終えてしまうのだ。
それが、どうも私は可哀想で堪らなくて、少しだけ、ほんの少しだけ教え込んであげた。
それは。
🧡「きょ、うは、…“あい、し、て“、くれないの……?」
💜「、ほんと可愛い。」
私からの“痛み“だけが、『愛』ということ。
自分でも最低だなって、思う。
でも、そうすれば美咲も少しは気が楽でしょ。
私だけを見てくれるでしょ?
村の人々から受ける痛みの節々に私を感じるでしょ?
なーーんにも、悪いことなんてない。
そうでしょ?美咲。
私は、コンクリートの無機質な床に美咲を無理矢理押し倒す。
彼女は、嫌な顔一つせずにただ此方をにこにこと眺めていた。
ああ、神様。最低な私を許してください。
🧡「ッッ、……“!!」
腹に拳を突き立てるように殴り込む。
脂肪も筋肉もないその身体にダイレクトで振動が伝わって、彼女は表情を歪ませる。
痛みで身体が動いたからか、じゃら、と足枷から重々しい音が響く。
💜「ねえ、美咲。」
片手は首に、片手は手首に。
強く、何方の手にも体重をかける。
彼女は必死に酸素を取り込もうと口をぱくぱくさせる。そんな様子も愛おしくて、私は思わず笑みが溢れると、美咲もそれに応えるように、無理矢理笑ってみせた。
💜「ずーーーっと、愛してるから。」
こんな愛の形が歪んでたとしても、私は間違いだなんて思ってもいない。
だってそれを美咲が受け止めてくれるんだもん。
私より少しだけ背の低い彼女。
彼女に手首にくっきりと私の爪痕が残る。その色はすでに青紫がかっている。私の手だけで簡単に覆えてしまう首筋。彼女がくたりと目を瞑ると私はゆっくり手を離し立ち上がった。
痩せ細った彼女をゆっくり持ち上げる。彼女の体なんかより、よほど重たい足枷が邪魔で鬱陶しかった。
比較的綺麗めな端の方に移動させる。
彼女にまともな食事は与えられない。だから、こうして意識を飛ばした後に、クスリを飲ませたり、食べ物を無理矢理飲み込ませる。
その後、綺麗に体を拭いてあげる。
肋の浮いた上半身。彼女は少し落ち着いて、その細い胸を上下させながら、安らかに眠っていた。
赤、青、紫。
もはや白くなったり、黒くなった斑点たちを撫でながら、私はまた服を着せ直す。
💜「…、よし、これで大丈夫。」
額に口付けて、檻に鍵をかける。
そうして、小屋を後にする。
いつかあの燃え盛る業火と共に、彼女に“本物“の幸せが訪れることだけを願っている。
end…