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「ま、言いふらすことでもないし黙ってよっか」
真衣香の、その考えを肯定するように坪井の声が届いた。
当たり前の言葉だと思う。
社内での恋愛のアレコレなんて黙っているのが、いいのだと思う。
仕事をしにきている場所なのだから。
……そ思うのに一瞬言葉が喉の奥に逃げようとした。
いったい自分は坪井からどんな言葉をかけられるのを待っていたんだろうと考えて、胸のあたりが重く締め付けられるように痛む。
初めての、痛みだ。
その痛みの理由なのだけれど、
どこをどう繋げればそんな思考になるのか自分でも説明がつかないのだが、何故か。
『小野原や、他の同僚たちには自分から喜んで話したくなるような彼女ではない?』
そんなふうに考えて、胸が痛むようだ。
(いやいや、週末からの今日で何調子乗ってるのって……)
「……う、うん。そうだね、それがいいよね」
ありきたりな、模範的な。
真衣香の答えを聞いて、坪井は真衣香の表情を確認するように見つめた後。
いつもの屈託のない笑顔を見せて言った。
「ん。じゃ、そろそろ戻るね。てか総務誰もいないの?お前だけ?」
ぐるりと坪井が見渡して、真衣香に問いかけた。