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コメント
1件

最高です!!!!!!😭😭😭😭
リクエストで書いた銀土です!土銀要素もあるかもです。
暖簾をくぐるたび、ああ今日もか、と思う。江戸の夜風に当たりながら、銀時はだらりとした足取りでいつもの居酒屋へ入る。甘いものはない、酒はまずい、つまみも大したことはない。なのに通うのは、家に帰っても神楽と新八に小言を言われるだけだからだ。――それと、ほぼ確実にあの男が来るから。
カウンターに腰を下ろし、適当に熱燗を頼む。
「おい、マヨネーズはあるだろうな」
聞き慣れた低い声に、銀時は顔も上げずに舌打ちした。
「なんだよ、今夜も来たのかよ。ここは真選組屯所じゃねーんだぞ、土方十四郎」
「うるせぇな、てめぇの顔見たくて来てるわけじゃねぇ。ここが一番落ち着くだけだ」
カウンターの隣に当然のように腰を下ろす副長に、銀時は肩をすくめる。
「落ち着く? マヨラーが? 胃袋の中で油戦争でもしてろ」
「てめぇは糖分で脳みそ溶かしてろ、坂田銀時」
開始三十秒で火花が散る。けれど、二人とも立ち上がらない。刀にも手を伸ばさない。ただ盃を傾け、憎まれ口を叩き合う。
それが、ほとんど毎晩の流れだった。
仕事の愚痴は大抵、土方から始まる。
「近藤さんがまた妙な女に入れ込んでな……沖田はサボるし、隊士は言うこと聞かねぇし」
「へぇ〜大変だねぇ副長さん。俺なんて万事屋だぞ? 給料未払い常習犯だぞ? どっちが不憫か勝負すっか?」
「勝負にならねぇ。てめぇは自業自得だ」
そこから話はずれていく。真選組の方針がどうだ、幕府がどうだ、甘味が正義だ、マヨネーズは万能だ――くだらない論争はいつも最後に殴り合い寸前まで発展する。
「表出ろコラ」
「望むところだ白夜叉」
店主に止められ、二人して座り直す。
その度に、店の勘定は必ず土方が払った。
「今日は俺が払っといてやる。てめぇの懐事情は知ってる」
「は? 別に頼んでねーし。俺だって払えるわ」
「じゃあ払え」
「……今度な」
呆れたようにため息を吐きつつも、土方は文句を言わずに金を置く。その背中を見ながら、銀時は何とも言えない気持ちになる。
ムカつく。偉そうだ。真面目すぎる。融通が利かない。煙草臭い。マヨネーズ臭い。
なのに。
愚痴を聞いているときの土方の横顔は、どこか人間臭くて。副長の仮面を外したただの男みたいで。殴り合い寸前まで行ったあと、同じ酒を飲んでいると、不思議と肩の力が抜ける。
嫌な気分になる日もある。言い過ぎた、と思う夜もある。
それでも、どちらも居酒屋に来るのをやめなかった。
銀時は理由を考えたことがない。ただ、暖簾をくぐればあいつがいる、という前提が、いつの間にか当たり前になっていただけだ。
――鬱陶しい腐れ副長。
そう心の中で悪態をつきながら、隣に座る体温がないと妙に落ち着かないことに、本人だけが気づいていない。
盃を合わせたとき、指先がわずかに触れる。
「手、冷えてんぞ」
「うるせぇ」
短いやり取り。目も合わない。
それでも銀時は、なぜか胸の奥が少しだけ温かくなるのを、酒のせいだと思い込んでいた。
それが、無自覚な恋だとも知らずに。