久々に夜、樹が同じ部屋にいてくれる幸せ。
ご飯を食べ終わって、こうやってソファーでコーヒーを飲みながら二人でまったり出来る幸せ。
「ねぇ。透子」
「ん?」
何気のないそんな幸せを実感している私に樹が声をかける。
「透子はさぁ。いつからオレのこと好きになったの?」
隣りでまったく冗談でもない雰囲気でそんな恥ずかしくなることを堂々と私を見ながら聞いて来る。
「は!?」
思わず飲んでたコーヒーを吹きそうになる。
「ねぇ。いつから?」
「いや・・いつからって言われても・・」
正直自分でもいつからかわからない。
出会った時から多分気になっていて。
他の人となんか違っていて。
どんどん気になっていったのは確かだけど、好きになったタイミングなんて正直どれなんだかわからない。
「気付いたら好きになってた、みたいな?」
「それよく聞く言葉」
「う~ん、多分最初出会った時から気にはなってたんだと思う。でも多分自分でその気持ち止めてたから」
「なんで止めてたの?」
「ん~樹がどうこうっていうんじゃなくて、もう誰かを好きになるのが怖かったのかもね」
「でも・・オレを好きになってくれた」
「うん。なんか樹はそういうことが気にならないくらい、自然に私の中に入って来た。好きになっていくのが自然すぎた」
どのタイミングだったかなんて思い出せないくらい、今は樹との時間が自然で当たり前で。
「でも。多分。樹と離れた時、それを強く実感したのは確か」
きっと最初から好きだった、多分。
だけど職場での関係性や年齢差や、また恋をすることに必要以上に敏感になって前へなかなか進めなかった。
だけど、離れたことで、そんなこと以上に樹が大切だと実感した。
「じゃあ。もし。また離れたらどうする・・・?」
「え?」
「変わらずオレを好きでいてくれる?」
もしも、とか。
その時にならないとどうなるかはわからないけれど。
でも。
例え一緒にいても離れても、樹への気持ちは変わらないってことだけは、今の自分でもわかる。
「私は。樹と例えどんな状況だとしても、今の樹への想いは変わらない」
樹は?
離れてしまったら、樹は私への気持ちはどうなる?
「樹は?」
「ん?」
「樹はいつから私を好きでいてくれたの?」
いつから樹の中で、私が存在してたのだろう。
「いつからだと思う?」
「わかるわけないじゃん」
「だよね。多分その時はオレの事これっぽっちも気づいてなかっただろうから」
もし、その時。
私が樹の存在に気付いていたら、また何か変わったりしたのだろうか。
「何年か前に、透子、新人研修の指導したことない?」
「あぁ、うん。一時期、何人か対応してたことあったけど」
「オレ。その時いたんだよね」
「え?そうなの!?ごめん。いっぱいいたから全然覚えてないかも・・」
「そりゃそうでしょ。その時オレもこんな感じじゃなくて、全然やる気なかったから目立ちもしてなかったし」
「意外・・。今こんなエースなのに、最初はやる気なかったってこと?」
「まぁ。最初は入りたくて入った会社じゃなかったから」
意外な言葉だった。
この年齢でここまでの活躍してるだけに、ずっと意欲があって今までやってきてたんだと思った。
「なのに。なんでそんな変わったの?」
「オレがここまで変われたのは、透子のおかげ」
「えっ!?私!? 全然、意味わかんないんだけど」
「この会社入社してまだやる気も見いだせなかった時、透子が新人研修についてくれてさ。その時さ、透子がオレたち新人にかけてくれた言葉だったり、仕事してる姿勢が、やけにその時のオレには響いてさ。カッコイイな~って素直に思った」
「えっ、いつだろう。どんな私見られてたか不安なんですけど!」
「大丈夫。オレにとってはその時から透子は輝いてたから」
樹にとってそんな最初から、私は存在してたんだ。
「そん時さ、オレ少し透子と話したことあんだよね」
「えっ!そうなの!?」
ことごとく覚えてない。
私昔すでに樹と会話してたんだ。
「やっぱ覚えてないかー!」
樹はちょっと残念そうに笑う。
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