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『初めまして、翠さん。サキタと申します』
『こんばんは、サキタさん、翠です』
サキタこと豊は少し待ってみたが、それ以上翠がなにも言わないので会話をリードした。
『ありがとうございます、ハート。オレ、こういうのが初めてでシステムがよくわかっていないのですよ。失礼があったらすみません。先に謝っておきます』
少しの沈黙の後『お優しいのね、サキタさん』と誘うような甘やかな言葉の翠。
続けて翠が話し始めた。
『あたしも初めてなの。でも初めてでこんな素敵な方とお逢い出来て嬉しい……』
胸の高鳴りを抑え切れない豊だ。
『オレも嬉しいです。オレは、毎日デスクワークに精を出しています。安定していますが変わり映えしない毎日です(笑)』
豊は翠となんとしてもお近づきになりたく、積極的に自分から打ち解けて行った。
すぐに翠から返信が来た。
『毎日のお勤め、お疲れ様です。あたしは今のところ実家暮らしでゆっくりと休職中の身です』
なにか、彼女からはたおやかでおっとりとしたムードが感じられる。豊にとってドストライクの素敵な女性との印象だ。
『そうですか。あの……翠さん、お写真を拝見しました。とてもお美しい、可愛いですね。まるで少女のようです』
『嬉しいです! そんな風に言って下さって、サキタさん……。あの、サキタさんは凛々しくてかっこいいわ』
「あ」
パソコンの前で思わず声を出す豊。魅力的な女性に褒められ大興奮である。
(翠さんの声が聴きたい。しゃべりたい。もっともっと知り合い、深く近づきたい)
豊はなにかに取り憑かれたようにカッカと燃えて来た。
『翠さん、オレのROUL(連絡アプリ)IDをお教えします。出来ればオレは翠さんのお声が聴きたいです。気が向けばいつでもご連絡を下さいね。もちろん、このサイトだけでコミュニケーションをするのでもオレは嬉しいです。翠さんと仲良くなりたい』
『ありがとう、サキタさん。あたしもお教えしたいです、ID』
なんと翠からはそう返って来た!
「やったぜ!」
一人の部屋でガッツポーズを決める豊。
その上翠は『この後、サキタさんさえよろしければROUL通話でおしゃべりしません?』と言って来たのだ。
『はい、喜んで!』
『では、この後5分後ぐらいにあたしからサキタさんに電話しても良いかしら』
『はい』
豊は緊張と歓びで生つばをゴクリと飲み込んだ。
豊は別に翠に直接逢う訳でもないのに、鏡に向かいヘアースタイルを整え、顔の運動をし電話を待った。滑らかにおしゃべり出来るようにと。
そうこうしていると、豊の携帯電話が鳴った。
見ると翠からのROUL通話呼び出し音だ。
「はい、翠さん!」
「サキタさん、初めまして」
「あ、初めまして、翠さん。可愛い声だなー」
「うふふ。ありがとう」
翠の声を聴くと、今すぐにでも逢いたい衝動にかられた豊。しかしがっついているという風に見られると嫌われるかもしれない。必死で紳士的な対応を試みる。
「ありがとうございます。お電話を、翠さん」
「嫌よ。蓮美と呼んで欲しいわ」
甘えた声で彼女が言う。
「は、蓮美さん。ご本名でいらっしゃいますか?」
「ええ。あたしは中田蓮美と申します、サキタさん」
「あ、ああ、オレの本名は城木豊です。どうか豊と呼んで下さい……蓮美さん」
照れくさいが蓮美の名を呼んでみる豊。
「嬉しいわ。豊さん。あのぉ……」
「はい、蓮美さん」
「あたし、いきなりはしたないかしら……。とても恥ずかしいけど、豊さんにお逢いしてみたいです」
蓮美からはお色気がムンムン伝わって来る。豊が時々楽しむ大人向け動画の女優など目じゃない。磁石のように惹きつけられる。
豊は即答した。
「ええ。オレも蓮美さんにとてもお逢いしたい気分です。是非お食事でも」
すると蓮美はなにやら困っているのか、少し黙ってしまった。
(自分から逢いたいと言ったのに、どうしたのだろう?)
不思議に感じる豊。