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◻︎隠し事についての持論
しゅんと小さくなった晶馬。
「あー、勘違いしないで。隠し事が全部いけないとは言ってないから。こんな風にうれしいサプライズの時もあるし。ただ、遥那が知る必要がなくて知らない方がいいことは、絶対遥那に知られないようにしてね」
「えっ!なんかお母さん、言ってること矛盾してない?」
「そお?」
「じゃあさ、お父さんが何か隠し事してても、お母さんは平気なの?」
今から結婚する二人にこんな話は不必要かもしれないけどと前置きして。
「夫婦がうまくいく秘訣はね、いかに隠し事が上手かにかかってると言っても過言ではない!」
「隠し事が上手?」
「そう、それから、相手が隠そうとしてるんだなと思うことは、知らないふりで追及しないでいられる強さを持ってること」
お姉さんのスミレまで、驚いた顔をしている。
「スミレさんもご結婚はまだ?」
「はい、したいと思ってる人はいますけど」
「じゃあ、これはあくまで私の持論だから軽く聞いてね」
「隠し事してるって思ったら、追及したくなるでしょ?」
改めて遥那が訊いてくる。
「でも、相手はそれを隠そうとしてるなら、知らなければそれで済むことかもしれないでしょ?わざわざ知らなくてもいいこともあるってことよ。だから、隠す方は徹底的に隠さないと信用がなくなるんだけどね、今回みたいにね」
「んー、わかるようなわからないような?」
晶馬も頭をひねっている。
「みんなまだ若いからね、結婚相手のことを全部知っていたいと思うのは当然だよ。でもね、結婚してももとは他人だし、育った環境も違うんだから知らないことがあっても当然なんだよ。それを全部知ってないと気が済まないなら、それは窮屈でしかない」
「うん、まあ、そうだね」
「お互いにとって必要なことだけはちゃんと共有できれば、あとはほっといていいと思うよ。たとえばへそくりしてそうだと思っても、知らないふりでいたらそのお金でプレゼントを買ってくれるかもしれないし。へそくりを出せ!と言って取り上げてしまったら、なんの楽しみもないしね」
思わず胸ポケットを押さえる晶馬。
「あ、もしかしてへそくりとかしてる?」
「バレた?」
「ううん、私は知らない。だから誕生日プレゼント買ってね♪」
「えー、なんか脅されてる?」
「あはは、そんなことないって」
晶馬と遥那が戯れている。
「それにね、なんでもかんでも知り尽くしてるとそのうち飽きるよ。どこかにまだ知らない一面がある方が面白いと思う。あ、そうだ、みんなに質問!愛してるの反対は、何だと思う?」
「嫌い?」
「嫌悪?」
「それも似てるけどきっとね、無関心だと思うよ。何もかも知りすぎてると安心しきって、ちゃんと相手を見ようとしないようになるかも?雑に扱うというかね。もちろん空気みたいになるのもいいんだけど。年取って来たらそれぞれにそれぞれが知らないちょっとした一面を持つのもいいよ、趣味とかね」
「そうだよね…これから先いろんな事があるだろうし、それを全部知ってないと気が済まないというのは、お互いに苦しいかも?」
「そう。だから、隠し事はしても嘘はつかない!これ大事」
「えー、お母さんまたおかしなことを言って」
「隠し事をすることと、嘘をつくことは似てるようで違うから。そのうちわかるようになるよ。そもそも完璧な隠し事なら、嘘つく必要ないし。なあんて、これ全部私が勝手に考えてることだから、みんなにはみんなの考えがあるから、それを尊重してね」
なんか宿題を出された気分だね、なんて笑っている。
その後は三人でブーケやバルーンの打ち合わせを始めた。私だけ、楽しみはとっておくことにして先に帰った。