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読み終わりました。ベンチでスマホを握りしめる主人公の緊張感がひしひしと伝わってきて、すごく切ない気持ちになりました。特に「いつかね」の四文字──あの具体性を避けた返し方が、元カノの距離感と、まだ完全には終わっていない余白を感じさせて、すごく心に残っています。このあと、実際に会うのか、それとも…続きが気になります。
大学二年の春。
キャンパス内の桜は、満開を少し過ぎていた。風が吹くたびに花びらが舞い、歩道の端に薄いピンク色の絨毯を作っている。
俺はベンチに座りながら、スマホの画面を見つめていた。
メッセージアプリを開いて、閉じる。
また開いて、文章を打つ。
そして、消す。
相手の名前は、美咲。
俺の元カノだった。
別れてから、半年が経っていた。
別れた理由は、今思えばたいしたことではなかった。忙しさとか、すれ違いとか、くだらない喧嘩とか。どちらが悪かったのかなんて、今となってはもう分からない。
ただ、別れたあとになって初めて気づいた。
俺は、美咲がいなくなったことが思っていた以上に寂しかった。
付き合っていた頃は、いつでも会えると思っていた。
くだらない話をして、帰り道にコンビニへ寄って、特別なことなんて何もない一日を一緒に過ごして。
それが当たり前だと思っていた。
でも、当たり前だったものは、失ってから初めて大切だったことに気づく。
俺はスマホを握りしめた。
そして、意を決して文字を打った。
『久しぶりに遊ばない?』
送信ボタンを押した瞬間、心臓が大きく跳ねた。
送らなければよかった。
そんな後悔が、すぐに押し寄せてくる。
既読はつかない。
五分。
十分。
一時間。
何度もスマホを確認した。
その日の夜、ようやく通知が届いた。
『久しぶり。いいよ』
そこまで読んだとき、胸が少しだけ軽くなった。
しかし、その次のメッセージを見て、俺は指を止めた。
『いつかね』
たった四文字。
具体的な日にちは書かれていない。
いつなのかも分からない。
それなのに俺は、その言葉を何度も読み返した。
「いつかね」
まるで、まだ何かが終わっていないような気がした。
俺は返信を打った。
『うん。いつかね』
送信したあと、スマホを机の上に置いた。
もう一度、やり直せるかもしれない。
そんな期待を抱いてしまった自分を、俺はまだ知らなかった。