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◻︎尾行?
ひまわり食堂に帰り着いた。
駐車場に車を停めて、一息つく。
___あれ?
気がついたらずっと後ろにいた車が、少し離れて停車した。
___やっぱりつけられてた?
思わず、自分の車をロックしてお母さんに電話をかける。
『はい、綾菜?』
「お母さん、あのね、なんかつけられてたみたい、怖くて車から降りられない」
『誰かいるの?』
「ううん、相手も車なんだけど」
『わかった』
すぐに玄関ドアが開いて、進さんとお母さんが出てきた。
お母さんの手には、ハエ叩き(?)のようなものが握られている。
「ほら、おいで、今だよ」
慌てて車から降りて、私を中に入れてくれる。
「あの車?」
「そう」
白いハイブリッド車。
でも、すぐに走り出した。
すかさずお母さんがスマホで写真を撮る。
「逃したか!とりあえず中に入って、早く」
玄関のドアを閉め鍵を二重にかけた。
「よかったぁ、ここに帰れて。アパートだったら怖かったよ」
ソファに寝ている翔太を見て、心底ホッとした。
「あれ、女に見えたけどな」
「うん、マスクしてたけど、髪が長かったようだし」
「綾菜は思い当たることないの?」
そう言われて、もう一度考えてみる。
仕事のトラブル?報告はない。
異性関係も親しくなった人や、トラブルになった人はいない。
あ。
「関係あるかわからないけど。さっきパーティーの帰りに、神崎って人に付き合ってって言われたけど」
「どんな人?」
「神崎フーズの二代目で、見た目も性格も人望も、私が知る限りでは最高ランク?みたいな人。結婚してるのかなぁ?詳しく知らないけど」
答えてるあいだに、お母さんが検索していた。
「おぉっ!イケメンだ。独身みたいだね。そこそこの年齢みたいだけど」
「あ、そう、この人。いきなり付き合ってって、おかしいでしょ?そんなに接点ないんだけど。今日で多分3回目くらいかな?会ったのは」
「ふーん、どんな意味での『付き合って』だったのかね?」
「こっちが聞きたいよ」
「でも、独身ならさ、奥さんに付け回されるとかでもないしな」
「うーん」
3人で考え込んでしまった。
その時、プルルとメッセージを受信した。
『また、会えることを期待してるよ。さっきのこと、考えておいて』
差し出し番号は、さっきの、神崎の番号だった。
「はぁ??」
「え、なに?」
「いま、その人から、メッセージが届いたんだけど」
そう言ってメッセージを見せた。
「お?これはもしかして??」
「「玉の輿?!」」
お母さんと進さんが同時に声を上げた。
「冗談じゃないよ、ったく。からかってるんだってば私を」
メッセージの返事はしなかった。
再度、家の鍵を確認して、この日はここに泊まった。
「ねぇ、しばらくここにいてもいい?」
翔太と2人での生活は、こんなことがあると心細い。
「もちろん、いいに決まってるよ。相手が誰かわかって解決するまではここにいるといいよ、ね?進君」
「あー、もちろんだよ、ここは実家なんだから」
「ありがとう、明日、アパートから少し着替えとか持ってくるね」
こういう時、実家があるのは助かる。といってもここの夫婦はとっくに離婚しているんだけど。
それにしても、あれは誰なんだろう?
次の日は仕事が入ってなかったから、アパートに着替えや日用品を取りに帰った。
念のため、進さんがついてきてくれた。
辺りを見回したけど、昨夜の白いハイブリッド車は見当たらない。
「ここはバレてないのかな?」
「わからないけど用心した方がいいからね」
荷物を持ってさっさとひまわり食堂へ帰る。
ぴろろろろろろろろろ🎶
スマホが鳴った。
また、神崎だ。
無視しようかと思ったけど、もしかして、あの車の女と関係があるかもしれないと思い、電話に出る。
「はい」
『よかった、出てもらえないかと思った』
「無視しようかと思ったんですけど」
『けど?』
「ちょっとお話したいことがありまして」
『なに?付き合ってくれるってことかな?』
「そうではないですけど」
『……、わかった、すぐ行く。あ、こちらの話。もう時間がないから、そうだ、今夜時間ある?食事でもどう?』
「は?え?」
『7時に。お店は後で連絡するから』
そこまで言うと電話は切られた。
しばらくして、メッセージでお店の情報が届いた。
堅苦しいお店かと思ったら、普通の焼肉屋さんでほっとした…ほっとしたけど。
「お母さん、今夜ちょっと出かけてくるね」
「いいけど。どこへ?」
「隣街の焼肉屋さん。そこであの神崎さんと会ってくる。もしかしたら、あの車の女のこと、何か知ってるかもしれないし」
「わかった。気をつけて行ってらっしゃい」
「念のため、お母さんが撮った車の写真、私に送っといて。直接見せて聞いてみるから」
「オッケー」
お付き合いを断ることと、あの女に関係はないかと聞くこと、それが神崎と会って話すことだ。
それでも、とりあえず焼肉は楽しもうと思った。