第7話:戦闘演習、碧律の音
ツリーハウス学舎、最上層の円形演習場――
碧素の柱が周囲を囲み、今日だけは“街の一角”を模した本格バトルフィールドが再現されていた。
「実戦フラクタル授業だ! 今日のテーマは“即時連携”。おまえら、命のテンポ合わせてみやがれ!」
スエハラ先生の号令が、演習場に響く。
生徒たちはチームを組み、コードの連携と戦闘判断力を競う練習だ。
「いくぞタカハシ!今日はマジで合わせていこうぜ!」
ゲンは演習服の上着をゆるく羽織り、左腕のフラクタルリングをきらりと光らせる。
「いつも“合わせる”気なかっただろお前!」
タカハシはきっちりと制服を着こなしながら、眉をひそめたが、口元は少し笑っていた。
対戦相手がフィールドの奥から現れる。
《BLADE = SPIKE》《VELOCITY = +10》《LOCK = “双方向追尾”》
光の槍を持ったフラクタルが猛然と迫ってくる。
「速い!ゲン、バリア貼るぞ!」
《SHIELD = TRUE》《RESPONSE = AUTO》《ANGLE = WIDE》
タカハシのシールドが展開され、前方に青いカーテン状の防壁が張られる。
だが、敵のコードは予測不能の角度から突っ込んでくる。
「なら、合わせようか!」
ゲンが踏み込む!
《SPLIT = SOUND》《PULSE = “呼吸”》《COLOR = “焦がれる碧”》
空中に“音を分ける”コードが放たれた。
視覚では捉えられない振動が走り、敵の動きが一瞬、ブレた。
「今だ、タカハシ!」
《GRAVITY = -2》《REFLECT = SYNC》《SPEED = +4》
重力を制御しつつ、シールドが敵の攻撃を“跳ね返す”。
光と音、論理と直感。
ふたりのコードが繋がった瞬間、碧律のようなひとつの旋律が空間を包んだ。
演習後――
スエハラ先生が腕を組んで笑う。
「……なんだお前ら、曲でも書くつもりか? 今のコード、完璧に“響いてた”ぞ」
ゲンが天井を見上げながら笑う。
「タカハシのコード、やっぱ響きやすいんだよ。“意味”が通ってる」
「……お前のも、“綺麗すぎて腹立つ”けどな。なんか悔しいけど、またやりたい」
ふたりは、音もないコードの余韻の中で笑った。
教室に戻ると、他の生徒たちが演習のリプレイを見ながらざわついていた。
「え、あのタイミングで《PULSE = 呼吸》入れるとか、どういう感性してんの?」「あれは無茶と芸術の間!」
「ええなぁ……次はオレも“コンビ”やってみたいな!」
フラクタルは命を削る力。だが、重ねれば――旋律になる。
そして今日も、命が削られる音が、碧律として“ひとつの街”を作っていく。
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