テラーノベル
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宿は村の外れにあった。
木造の、小さな二階建て。
窓辺には白い花が飾られている。
「ゆっくりしていってねぇ」
宿の女将は、穏やかに笑った。
「ありがとうございます」
荷物を置く。
歩きっぱなしだった身体が、ようやく一息つけそうだった。
「……疲れた」
ゆっくりと椅子へ腰を下ろす。
窓の外では、相変わらず白い花が風に揺れている。
静かだ。
「⋯らっだぁ」
「んー?」
「この村、本当に変じゃないのかよ」
らっだぁはベッドへ寝転がったまま頷く。
「変だねぇ」
「…やっぱり」
「でも、」
らっだぁは天井を見つめる。
「この村は、昔からこんな感じだよ」
「⋯⋯昔から?」
「そう」
それ以上は話さなかった。
部屋に沈黙が落ちる。
ふと。
机の上に、小さな白い花瓶が置かれていることに気付いた。
一輪だけ、白い花が挿してある。
「……綺麗」
何となく近付く。
花を眺める。
どこか、懐かしい気がした。
「……あれ、」
何が懐かしいんだっけ。
「どうした?」
らっだぁの声が降る。
「いや……」
首を振る。
「何考えてたか忘れた」
「そっかー」
それだけだった。
笑いもしない。
驚きもしない。
まるで。
最初から知っていたみたいに。
少しだけ胸がざわつく。
その時。
ぐぅ、と腹が鳴った。
「⋯あ、」
思わず苦笑する。
「腹減った〜⋯」
らっだぁが吹き出した。
「ご飯食べよっか」
宿の食堂へ向かう。
木の匂いがする。
テーブルには、温かな料理が並んでいた。
白いスープ。
焼き立てのパン。
見たことのない果物。
「⋯いただきます」
そっと一口目を掬う。
甘い。
優しい味だった。
「⋯⋯美味しい、」
思わず笑う。
女将も嬉しそうに笑った。
「お口に合って良かったわぁ」
食事を終える。
部屋へ戻る途中。
廊下の壁に、一枚の写真が飾られていた。
家族写真。
父親。
母親。
男の子。
幸せそうに笑っている。
「……⋯」
見覚えがある。
⋯誰だっけ、
思い出せそうで。
思い出せない。
「ぐちつぼー?」
らっだぁの声に振り返る。
「行くよ〜」
「あ……うん」
写真から目を離す。
その瞬間。
「…………え、」
今。
何を見ていた?
廊下には写真がある。
それだけは分かる。
でも。
誰が映っていたのか。
何が映っていたのか。
まったく思い出せない。
背中を冷たいものが這った。
「……らっだぁ、」
小さく呼ぶ。
「⋯俺」
喉が乾く。
「今、⋯⋯何か、を⋯忘れた、気が、」
らっだぁは静かに振り返る。
その碧い瞳には、もう笑顔は無かった。
「……始まったか」
ぽつり、と。
それだけ呟いた。
NEXT=♡1000
わかりにくいですね…!
ごめんなさい(_ _;)
たぶん読んでいくうちにわかると思うので許してください…
ぴ
90
コメント
2件
らっだぁが「始まったか…」って言ってたけど多分絶対ダメなやつなんだろうな