教室に戻ったら結子が話しかけて来た
「ねぇ大丈夫だったー?遅刻確定だったじゃんww」
「大丈夫大丈夫。ギリセーフ」
「絶対嘘wまじ危ない。あんた一応優等生枠なんだからw」
「一応ってなんだよー」
そうやって結子と話していたら少しだけほんとに少しだけ視線を感じた。私じゃないと分からないくらいの僅(わず)かな視線。ちょっぴり嫌悪感を抱いたものの気にせず結子と話す。
その視線の正体を知るまでに長い年月はかからなかった。
学校が終わって、やっと帰れると思った矢先、話しかけられた。また結子かと思ったら今度は違った。ああ、こっちパターンかめんどくさいと思った心を潰して対応する。相手は後輩(多分)の男の子。
「ちょっと時間ありますか?」
敬語だったので後輩だと確信し聞いた。
「あ、私?どうしたの?」
男の子は照れたのを隠した様にそっぽを向いたが隠しきれてない。だって、耳までもが赤い。
「あの俺…」
内心早くしてくれって思ったけど『私』はそんなこと思っちゃダメだ。待ってると意を決したのか男の子がやや早口で言った。
「俺!ずっと先輩のこと見てました!!かっこいいのにどこか可愛い先輩が気になってました!!俺と付き合ってくれませんか!!」
これで34回目だった気がする。この告白の仕方は4回目。出来れば前置きとかどうでもいいからさっさと要件を言って欲しかった。ただ一言好きだから付き合って欲しい。だけが良かった。まぁどちらでも私の答えは同じだけれど。
「ごめんね…私今、彼氏と恋愛とかいいかなって思ってて。私よりいい人探してね」
なるべく傷つかないように配慮しながら言ってその場を去る。この振り方は33回目だと思う。
家に着いても両親はいなかった。大丈夫、慣れてるしいない方が良い。と今日2回目で自分に言い聞かせた。
家に着いて落ち着くと重りが外れて無性に泣きたくなった。でも今泣いたら明日学校に行った時に気づいてしまう人がいるかもしれないと思考をめぐらせて我慢した。そこで決めた。あそこに行こうと。
コバルトブルーに輝いてまるでビー玉の様な海を見て安心した。この場所はいつだったか、散歩してる時に偶然見つけた場所。林を抜けた先にあるから人はいなくてこの場所が私だけのものになった感じがしてすごく好きだった。ボーッとしてたら足音が聞こえてきた。この場所には私以外に人は全く来ないのに。嫌な予感がした時にはもう遅かった。私の通ってる高校の制服。多分…先輩。男の先輩5人でギャーギャー騒ぎながら来た。うるさっと思いパッと先輩たちから目をそむけ他人の振りをしたが見つかってしまった。5人の中の1人が言った
「あっ!!あれ清水ちゃんじゃない!?」
するとほかの4人もこっちを見て(多分。目を背けてたからよく分からない)口々に言った。
「え!?嘘どれどれ!?」
「清水ちゃんってあの!?」
「あれだろあれ」
「うわ、まじじゃんテンション上がるわー」
「遠目からでも分かるわぁ可愛すぎん?」
「声かける!?」
「引かれそーww」
「別にいいじゃん!行こーぜ」
めんどくさいのに絡まれる…無視したかったけど先輩を無視したらどうなるか私が身をもって経験してるからよく分かる。諦めて声をかけられるのを待つことにした。そうしたらすぐに先輩1人が話しかけてきた。
「清水ちゃん?だよね」
諦めて答える
「えっと…そうです。そちらは…?」
「うわ!!本物〜」
「俺ら3年だよ〜」
それっくらい分かるわ私をなんだと思ってんだよ。イライラした。
「えと…私に何かご用ですか??」
なるべく癪(しゃく)に障(さわ)らないように言ったが逆効果だったようだ。先輩たちはさっきよりも声を大きくして話した。
「うわー!!私に何かご用ですか?だって!めちゃ可愛いんだけど」
めんどくさい
「え、清水ちゃんの顔ガチタイプなんだよね。俺と付き合わね?」
めんどくさい
「えっと…」
「バッカ!困ってんだろやめろよなぁ」
めんどくさい
「清水ちゃんはよくここ来るの?」
内心イライラしていたからかなんでかは分からない。この場所を取られたくないと思ったのか。無意識に言ってしまった。
「全然!今日なんとなく来てみただけですよ」
本当は何回も来てる。でもそんなこと言いたくないと思った。
「清水ちゃんがいたら俺、毎日ここ来るわー」
ダハハハハって下品に笑った先輩を見たら不覚にもあの人を思い出してしまった。綺麗な笑顔で笑った関口くんを。そんなことを思っていたら先輩たちは、「うわこんな時間じゃん!怒られるわ」「げ、終わったー急ぐぞ!」「バイバイ清水ちゃん!!」とか騒ぐだけ騒いで嵐のように去って行った。ここに来るのしばらく控えよう。そう決めて家に帰った。
その後も他の人の笑顔を見る度関口くんを思い出すようになった。その度に消そうとしてるになかなか消えなくて更には暇があれば関口くんのことを考えたり関口くんを目で追ってる自分に気がついた。
ああもうダメだ。ものすごく嫌だけど認めよう。
これは恋だ。
私は一目惚れしてしまったんだ。
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