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翌朝、包容力があると撤回したいくらい比奈子は、果歩の頭の上に足で挟んでいた。

まるでプロレスをしていたかような格好になっていた。

完全に負けているのは果歩の方。いびきをかいて寝ている比奈子をぐいっとよけた。

結婚してから初めて、晃と寝室を別で寝た。


いつも家族3人川の字で寝ていたのに口喧嘩したせいか

寝室で寝ていなかった。

あくびをして、リビングに行くと朝だと言うのに眩しすぎるくらいのLEDが光っている。

パチっと消して、缶ビールとおつまみが散らかっている。

晃はソファの上でいびきをかいて眠っている。

スマホはゲームだろうか起動したままの状態だった。


音量高めに音楽が鳴り続けている。



「ずっと起きてゲームしてたから寝室にいなかったの?」


後片付けに追われる果歩。

あっちに行ったり、こっちに行ったりして、部屋の掃除をしているとどたんとソファから晃が転げ落ちた。


「いったぁ……」


頭をおさえて体を起こした。


「……」


果歩は黙って片付けを続けた。

状況を察した晃は、台所に行く果歩の後ろを着いていく。


「ごめんって」


「は? 何が」


「寝室で寝なかったし……」


「うん。だから?」


「ちょっとゲームに夢中になっちゃってさ」


「ふーん、鈴木さんと?」


「え、果歩、鈴木さん知ってるの?」


「昨日、スマホで電話来てた。名前書いてたから」


「あー、そっかそっか。そうそう、智也とその鈴木さんと一緒にゲームしてさ。夢中になって夜中の3時にいつの間にかなってて。やばいね。おじさんがこんなにハマるなんてってびっくりされたよ」


水道の蛇口をひねった。洗い桶にどんどん水がたまる。

果歩は黙って朝食を作り始めた。ご機嫌を損ねたようだ。


「え、あ、ゲームしちゃダメだった?」


「別に……」


「取材会見かよ?!」


「ふざけてないし」


「あ、そう。そっか」


「電気代」


果歩はLEDを指差した。


「あーー、つけっぱなしだったね。次から消すから。ごめんなさい」


空気が鉛のように重い。寝室から比奈子の泣く声が聞こえた。

1人になって寂しくなったようだ。

晃は果歩に言われる前に急いで、寝室に向かった。


「ひーなーこちゃん。昨日は遅くなってごめんね。おはよ」


「パパ嫌い!! 口臭い!」


比奈子は慌ててきた晃の頬をバシンと叩いた。平日に会うことが少ないからか好感度が下がったようだ。


「ママがいい。ママーーー」


逃げるように寝室から駆け出した。比奈子に頬を初めて叩かれてがっくりした晃。あんなに抱っこしただけで

ニコニコ喜んでいたのに、そんな姿は見られないかと思うと涙が出た。

比奈子はリビングに続く廊下を歩くと景色が急に変わった。


真っ白な空間に飛ばされた。

見たことある景色だった。


「あ、ひげじいさん。確か、五右衛門?」


「どうも、こんにちは。神様です!! 五右衛門は嘘です」


「え、五右衛門じゃないの?」


「んなわけあるかって。洋装で五右衛門おかしいって言ったの君だよ?」


「確かにそうだけど。名前は結局無いの?」


「無いよ。神様でお願いします」


「はいはい。んで、なんの用事?」」


杖を振りかざして、透明ディスプレイを起動した。


「今のお母さん、果歩さんいるっしょ。兄弟欲しいってよ。弟か妹欲しいって。でもさ、最近、ご夫婦すれ違い多いみたいなんすよね。これ、どう思う?」


「なんで、そんなこと私に聞くのよ」


「うん。今後の未来に関わるっしょ」


「そりゃそうだろうけども」


顎に指をつける。


「ゼロじゃないけど、また離婚も考えられなくもないわけ」


「え? うそ」


「うそではない。また、少し女の影があるのよ。晃っていうお父さんさ」


「あーーー。マジか。あいつまた女作るんだ。懲りないやつだね。青い鳥症候群じゃん」


3歳の体の前世の絵里香は呆れた顔をする。


「忠告だよ。また、ドロドロの人生歩みたくないなら親子関係振り返ってニコニコに戻ったらどう?」


「え、気を使って親子関係良くしろってこと?」


「 YES!!」


舌をぺろっと出して親指を良いねのポーズした。


「晃に気を使って接待しろって? 口臭いし、加齢臭も出てきたんだよね。ちょっと近寄りがたいっていうか。子どもの扱い分かってないっていうか。多分、それは無理だね」


「前世の時の愛が無いってことかな。あれ、隆二くんは会ってるの?」


「時々会ってるよ。むしろ、そっちとの方がうまくいきそうだからもう、離婚してもなんでもいいかな。親子のつながりって絆がないとダメじゃん。お互いが単方向の時点で終わりだよ。私のこと全然興味なさそうだもん、今の晃。前世のこと言ったら

少しは振り向くのかな」


「それはダメって言ってるじゃん」


「占い師とかに果歩が見てもらってついでの私の前世見たらすぐわかるのかな?」


「あんなのインチキに決まってるじゃん」


「え?! 嘘なの? 本当のことわからない?」


「神のみぞ知るってことで……はい、お後はよろしいようで」


ボロンと煙がモクモクの中、神様は消えていった。


「ちょっと、話終わってないのに〜」


ジャンプして、神様の場所に行こうとしたが、もう戻れない。

ジャンプした音が響いたのか、果歩が気にしてリビングのドアを開けた。


「比奈子? どうしたの?」


「あ、うん。ジャンプの練習。ほら、高く飛べるでしょ?」


「あー、そうね。大きくなったもんね」


さらりとかわす果歩。何だか余裕がなさそうだった。

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