「ないこくん、本めっちゃ良かったよぉ〜!!!」
「あ、ありがとうございます、!」
俺は内藤ないこ。この学校の文芸部入っていて、つい最近作家デビューした高校3年生。
作家デビューしたと言っても、とある伝手で出版社に自分の作品を持ち込むことができ、
それが評判良く、本として出版されることになっただけ。
だから別にすごい賞をとったわけでも、すごい才能があるわけでもない。
「実は次の作品のジャンルで悩んでるんですけど……」
そう、質問を投げようとしたがその声はドアの音にかき消された。
「こんにちは〜。あ、ないくん!出版おめでとう!」
入ってきたのは幼馴染のりうら。
相変わらず笑顔が眩しい。
彼も文芸部だが、読むのが好きなだけで俺みたいに創作活動はしていない。
「ありがと、りうら」
素直にお礼を述べるとりうらは嬉しそうに笑い、
次に不思議そうな表情になり俺のパソコンを覗いてきた。
「あれ、進んでないの?」
真っ白な画面からそう思ったのかそんなことを口にするりうら。
「ん〜、実はね……ジャンル変えてみようかなって思ってるんだけど、なかなか思いつかなくて……」
世界観は出来てるんだけど……なんて付け加え、スペースキーを長押しする。
「じゃあ、「じゃあ恋愛なんていいんじゃない!?」
りうらの提案を遮るように聞こえてきたのは興奮気味の部長の声だった。
恋愛、かぁ……。
正直あまりしっくりこない。
「私、一回ないこくんの文で恋愛小説読んでみたかったんだよね〜」
楽しそうな声をあげる部長。
「いや、でも俺恋愛したことないしなぁ……」
物語を書く以上経験はかなり重要。
でも俺は彼女どころか好きな人すらできたことがない。
こんな恋愛と程遠いような人間に恋愛小説が書けるだろうか?
「ん〜、じゃあさ、」
さっきまで静かだったりうらが口を開く。
が、その言葉は予想外過ぎて、
「 りうらと恋愛しよ? 」