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 ……雨の匂いがする。

 開けっぱなしの窓の外へ視線を向ければ、揺れる木々と、暗雲に覆われた空が見えた。

 なんとなく、胸騒ぎを覚えた。

 ここ数日ずっと、焦燥感を抱いているせいかもしれない。


 今夜、ようやく、国王陛下と王妃殿下が外遊からお帰りになる。

 接触を試みる相手は、もちろん──王妃殿下だ。


 ラインハルト殿下も、ベネディクト公子様も、ジークフリート殿下の身体の行方について知らなかった。

 王妃殿下も、把握している可能性は低いかもしれない。

 けれど、少なくとも──彼らより情報を握っている可能性は、大いにあるだろう。


 なぜなら王妃殿下は、弟君のベネディクト公爵閣下と同じく、熱心なメコン教徒だ。

 王宮殿の南宮に貴婦人を集め、メコン教の経典を味読するサロンを毎週開催したり、神聖なメコン茶を毎晩欠かさず飲んだりと、その傾倒ぶりは使用*****

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嫌われメイドですが、王子殿下の恋人役になりました

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