第1話 奇々怪々
「ん……、もう朝か」
私、ミナは朝日に照らされて目を覚ました。
(外出よう……)
そう思いそのまま外に出た。
(眩しっ……)
───そう思いながら、私は視線を町の掲示板に目を向ける。
そこには大量の人がうじゃうじゃと居る。老若男女が掲示板の前に集まっている。
掲示板は”名前”を刻む場所。
なぜそんなことをするか。それは……
この星に住む全人類は、昨日の記憶が無くなってしまう。
だから自分の名前を刻み、自分の名前を毎朝確認する。
みんな、なんで確認をしているかは分かっていないが、刻まれている「名前」というメモを見て全員理解しているようだ。
この世界は感覚だけで動いている。人々は感覚だけで生きている。
『記憶が無くなる』ということすらも人々の記憶から消えてしまう。
しかし、不思議なことに言葉、文字─……だけが残っていて、意思疎通はできる。
(なんなんだ……この世界)
───私………ミナは記憶がある。昨日のことも、1年前のことだって私は覚えている。
だからこの世界は、とてつもなく気味が悪い。同じ事の繰り返し。人々は学習をしないし、何もかも覚えていない。
そこで私は疑問に思ったことがある。『建物』、『衣服』生活に必要な物は全部揃っている。そしてそれの使い方もどうすれば良いかが分かる。
それも気味が悪い。記憶が無かったら、建物や衣服だなんて作れるわけが無い。
(──記憶が……無かったら……?)
そこからある説が浮かび上がった。 ───『記憶が残っていた人が居る』そんな説だった。
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