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第2話 孤城落日
(『記憶が残っていた人が居る』……?)
そんな説を考えながら掲示板から目を逸らし、家へ帰ろうとした。
──帰り道、私はある考えを思いついた。それをポツリと私は呟いた。
「ノートに昨日の事、書いたらどうなるのかな……」
私はこの世界に『記録』がないことを知っている。昨日のことすらも忘れてしまう。それに、忘れた事もしらない。だから記録だなんてしようと思わないし、出来ない。
紙やペンがアートの為に存在する。それなら文字が書けるのではないだろうか?
それを思いついた私はその考えを胸に家へ走り出した。
「はぁ……はぁ……」
私は走って息を切らしていた。疲れた足取りでノートとペンを取り昨日の事を思い出す。
(昨日……村人のアキさんに「おはようございます。」って言われたな……)
アキさんはわたしにいつもおはようございます。って言うのだ。
その理由は分からないが、昨日の出来事と考えそれが真っ先に浮かんだ。
しかし、『記録』がない世界にいきなり『記録』と言う存在が産まれたらどうなるのだろう。
しかし、ただ文字を書くだけ。昨日の事をメモしておくだけだ。大丈夫だろうと思い私は昨日あった出来事、『アキさんは昨日、「おはようございます。」と言った。』とペンのキャップを外しノートに書く。
(──書けた……)
これで何かが、変わるかもしれない……
そう思った瞬間、外から悲鳴が聞こえた。その声を聞き私は急いで窓の外を見た。
この時、私に正体不明の不安感が押し寄せた──。