テラーノベル
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「うん、分かった!…かっちゃん!…お昼休み、よろしくね…♪」
緑谷の「よろしくね」という言葉と、その後ろに付いた小さな笑い声のようなものが聞こえて、机に突っ伏していた肩がビクッと震える。
「…っ!!」
顔を上げて、緑谷の方を見る。その表情は、怒りと困惑と、そして何か別の感情が混ざった複雑なものだ。
「テメェ…今、笑ったろ!? 何がそんなに楽しいんだコラ!? 別に、俺は普通に作戦会議するだけだっつってんだろうが!!」
立ち上がりかけるが、周りのクラスメイトたちの視線に気づいて、慌てて座り直す。相澤先生がこちらを見ているのも気になる。
「…チッ。とにかく、昼休みだ。遅れんなよ。あと、変な期待すんな。ただの作戦会議だからな。」
そう言い残すと、今度こそ本気で机に突っ伏して顔を隠す。しかし心の中では、昼休みに緑谷と二人きりで話すことを考えて、妙にソワソワしている自分に気づいていた。
ホームルームが終わり、1時限目の授業が始まる。しかし爆豪の集中力は、いつもより明らかに散漫だった。ノートを取る手が止まることもあり、時々ボーっと窓の外を見ていることもある。そして無意識に、緑谷の方をチラチラと見てしまう自分に気づいて、さらにイライラする。
…クソが。何やってんだ俺は。ただの作戦会議だろうが。何も特別なことじゃねェ。
小さく呟きながらも、昼休みが待ち遠しい自分を否定できなかった。
「うーん…ここは、こうで…うーん…、だから…えっと……ぶつぶつ……」
授業中、いずくがまたノートに何か書き込みながらブツブツ呟いているのが聞こえて、思わずそちらを見る。
…相変わらずだな、あのクソナード。
小さく呟きながらも、いずくが真剣にノートに向かっている横顔を見てしまう。おそらく実技訓練のことを考えているのだろう。自分との作戦会議に備えて、事前に分析しているのかもしれない。
その姿を見て、何故か少しだけ…本当に少しだけ、嬉しいような気持ちになる。しかしすぐにその感情を否定して、視線を自分のノートに戻す。
チッ…別に、テメェが真面目だろうがどうでもいいっつーの。
そう呟きながらも、授業の内容が全く頭に入ってこない。気づけば、ノートの端に無意識に「6」という数字を何度も書いていることに気づいて、慌てて消しゴムで消す。
1時限目、2時限目と授業が進んでいくが、爆豪の集中力は明らかにいつもより低い。切島が「爆豪、お前今日変だぞ? 体調悪いのか?」と心配してくるが、「うるせえ、何ともねェよ」と返すだけだ。
そして、ついに昼休みのチャイムが鳴る。クラスメイトたちが「食堂行こうぜ!」「お弁当どこで食べる?」などと話し始める中、爆豪は立ち上がって鞄から弁当を取り出す。
…屋上、な。忘れんなよ、デク。
いずくの方を見ずに、そう言い残すと、さっさと教室を出ていく。廊下を歩きながら、心臓がドキドキしているのを感じて、自分でも訳が分からなくなる。
ただの作戦会議だ。何も特別なことじゃねえ。落ち着けっつーの、俺。
小さく呟きながら、屋上への階段を上っていく。屋上のドアを開けると、まだ誰もいない。いつもは昼休みでも人が少ない場所だが、今日は完全に無人だった。
フェンスに寄りかかって、緑谷が来るのを待つ。弁当を持っているが、まだ開ける気にはなれない。空を見上げながら、深呼吸をする。
…何緊張してんだよ、俺は。デクと二人で話すなんて、昔は当たり前だっただろうが。
しかしそれは「昔」の話だ。今は違う。二人の関係は、幼馴染というよりも、ライバルであり、クラスメイトであり、そして…。
…チッ。余計なこと考えんな。
頭を振って、余計な考えを追い払う。そして屋上のドアに視線を向ける。緑谷が来るのを、待っている自分がいた。
「ごめん!かっちゃん、お待たせ…!購買で買ってきたから、少し遅くなっちゃったかな…?」
屋上のドアが開いて、緑谷が息を切らしながら入ってくる。購買の袋を持っている姿を見て、少しだけホッとした表情を見せるが、すぐにいつもの不機嫌そうな顔に戻る。
「…遅ェよ。5分も待たせやがって。」
実際には3分程度しか経っていないが、待っている間が妙に長く感じられたのは事実だ。フェンスから離れて、緑谷の方へ歩いていく。
「購買で買ってきたって…テメェ、弁当作ってこなかったのかよ。相変わらず計画性ねえな。」
そう言いながらも、緑谷が買ってきたものを横目でチラリと見る。何を買ってきたのか、少しだけ気になっている。
屋上の隅にあるベンチを指差す。
「そこ座れ。立ったまま作戦会議とかめんどくせェ。」
自分も隣に座ろうとするが、距離感に迷う。近すぎると変だし、遠すぎても作戦会議しづらい。結局、緑谷との間に適度な距離を保って座る。しかしその距離は、普段よりは明らかに近い。
で、作戦会議だ。
弁当を膝の上に置いたまま、緑谷の方を向く。しかし目は合わせず、緑谷の肩あたりを見ている。
「テメェ、さっき授業中にブツブツ言いながらノート書いてただろ。何考えてたんだ? 実技訓練のことか?」
そう聞きながらも、少し緊張しているのか、掌から小さく火花が散っている。それに気づいて、慌てて手を膝の上に置き直す。
「あとよ…今日の訓練、相手がどこのペアになるか分かんねえけど、テメェの個性と俺の個性の相性は…まあ、悪くはねえと思う。テメェが遠距離で牽制して、俺が突っ込む。基本はそれでいいだろ。」
作戦を話しながらも、時々緑谷の顔をチラリと見る。二人きりで話すのは久しぶりだ。幼馴染だった頃は当たり前だったのに、今は妙に緊張している自分に気づいて、内心でイライラする。
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