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「理解していますよね? ……あなた自身も、この私からは逃げられないことぐらい……」
更に追い詰めようとそう告げて、けれど一方で、
「……私に気を許すつもりがないのなら、無理強いはしません……」
無理やりに抱いたところで、関係は何も変わらないのなら、今日まで間を置いた意味もないのかもしれないとも考えていた。
矛盾する思いに相手の出方を見ようと、ワインをごくりと呑み下した。
「……こないだは、違ったじゃないですか? 薬まで飲ませて、無理にしようとして……」
すると、彼女の方から、以前の行為を蒸し返されて、
「……違っては、いないでしょう? あの時は確かに薬は与えましたが、君は自分からそうされたはずです……」
なぜああ言えばこう言い返してくるんだと癇にさわる。
「……キスも、拒まなかったですよね?」
いい加減に不毛な駆け引きを続ける気も失せて、
わざと、触れるか触れないか程度の口づけを与えた。
「……もっと、してほしいですか……?」
もったいをつけて耳元へ囁きかけると、
「し……」
とだけ言いかけて、彼女は口をつぐんだ。
「いいのですよ…してほしくはないのなら……」
指を伸ばし、噛み締めている唇を横になぞると、
顔がそむけられて、
「ほしくは、ないのですね…?」
迫らせていた唇を、わざとらしく引きかけた。
「ほしく…ないわけじゃ……」
追いすがるかのような彼女の言葉に、
「……ほしくないわけじゃ……? その後の言葉も、ちゃんと言ってみなさい……」
その気にさせられるのも時間の問題に違いないと感じる。
それでもまだ最後の砦《とりで》とばかりに、抵抗を見せるのに、
「……こうしている内に、言いなさい……でないと、もう何もしてはあげませんよ?」
目の前で、言い含めるようにも口にすると、
「……キス……して」
ようやく彼女自身から乞う一言が零れ出て、
「そう…言えばいいんです……最初から」
艶かしくも映るその唇に、口づけた──。