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翌朝、山田旅館の玄関先に呼ばれたジンは、目の前に映る姿鏡の自分の姿が信じられず、顔面蒼白になった



朝から桜に着付けされたジンの今のいで立ちは—




昨日桜が「」と呼んでいた物の正体が姿を現した、上半身裸で腹筋に晒しさらしを巻き、そして股間は短くて真っ白な五尺褌ごしゃくふんどしだ、水着の方がまだ布がある、頭には真っ白なねじり鉢巻き、そして足首まである地下足袋しか身に着けていない




鏡に映る自分の姿を見てジンは現実感を失いかけていた、都会のオフィスで働いていた自分が、まさかこんな格好をする日が来るとは、ここの連中はふざけているのだろうか?これが氏神様へ参る格好だと言う




晒しさらが腹を締め付け、ふんどしの感触が妙に生々しく、褌はなんとか足の付け根までは隠れているが、どことなく気恥ずかしい、しかし地下足袋は思いのほか足にフィットして、まるで素足で歩いているようだった




「よ・・・良くお似合いです・・・ジンさん」





桜が頬を染めながら目のやり場に困っているのか、どこかジンと視線を合わせられず、そわそわと手を動かしている




しかし当のジンは呆然と立ち尽くしたまま、今自分がどういう状況か全くつかめていなかった





朝の光が山田旅館の庭園に差し込み、庭の木々が風に揺れている




いつもと変わらない平和な朝のはずなのに、自分だけが異世界に迷い込んだような感覚だった





その時、軽トラックが勢いよく山田旅館の庭園に入って来た、エンジン音が囂々と庭に響き渡り、砂利を蹴散らす音が聞こえる




そしてなんとトラックの荷台には、派手な刺繍の上り旗に、山田一族の上半身裸の男衆がぎゅうぎゅう詰めで10人ほど乗っていた




誰もがねじり鉢巻きに晒しと褌を締め、地下足袋を履いていた




「うおおおおっ!」




荷台から雄叫びが上がる、上り旗が風にはためき、朝日を浴びた男達の肌が光っている、桜初め、山田旅館の従業員も拍手で彼らを迎える、まるで戦国時代にタイムスリップしたかのような光景だった






「これが祭りの正装じゃ!今回の祭りはこの旅館から(かつぎ手)が出ることは名誉な事じゃ!何年ぶりじゃ!」





松吉もトラックの若い衆に拍手をしながら威勢よく言い放った、その表情はまるで戦に送り出す将軍のようだった





「桜の婿さんっっ!」


「ハッ!・・・ハイっ!」




目の前のトラックから飛び降りて来た丸刈り頭の青年が、ジンに向かって大声で叫んだ、ジンと同じふんどし姿で小柄だが、とても威勢が良い、声量と気迫が凄い



その目には獲物を見つけた猛獣のような鋭い光が宿っていた、筋肉質な体はまるでバネ仕掛けの人形のように躍動感に溢れている




「わしゃぁ!桜の父さんの三番目の弟の息子の誠一郎じゃ!」




誠一郎と名乗った青年は、ジンの右手を力強く握り締めた、その握力にジンは思わず顔をしかめる





「ワシは桜の父さんの二番目の弟の長男じゃ!よろしゅうな!」


「おいらはさっちゃんの母方の四番目の妹の息子じゃ!」


「お前さん、ええ体しとるの!」





次々とトラックから降りて来る男衆に挨拶をされて、ジンはもう何が何だか分からず顔も名前も覚えきれないまま、挨拶を交わした



全員が同じように引き締まった体つきで、同じように闘志に満ちた目をしていることだけは分かった、山田一族の血の濃さを、ジンは肌で感じていた





ワイワイ!

「コイツはデカいの!」


「うむ!神輿の前の担ぎ手ではどうかの!」


「右翼が少し人手が足らんぞ!」


「よもや、よもやじゃ!」





それぞれ山田一族の神輿の担ぎ手達がジンを囲んで作戦会議を立てている、まるで品定めをされているようだった、誰かがジンの肩を触り、誰かが腕の筋肉を確かめる、都会のジムで鍛えた体が、今こうして値踏みされていた




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