テラーノベル
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「背丈はええな!」
「肩幅もある!」
「足腰が心配じゃが・・・まあ、やってみりゃ分かる!」
容赦ない評価の声が飛び交う中、ジンは黙って立っているしかなかった
「さぁ!飲んでいけ!飲んでいけ!婿殿!みんな御神酒を飲んでいけ!!」
「清めじゃ!清めの酒じゃ!」
松吉が樽を割って枡に気前良く注いでいく、指揮を上げるため、皆が飲んだり頭からかぶったりしている、そこら中にお酒の匂いが充満している、Tバックよりひどい褌姿でこれだけ堂々とされたら逆に恥ずかしがっている方がみっともない
酒の香りと男たちの汗の匂いが混じり合い、それを見物したり、旅館が振舞っている、お神酒を貰いに来たりする旅館の観光客で、山田旅館の中庭は人だかりでごっちゃになり、異様な熱気に包まれていた
駆けつけ三倍飲まされて、朝からこんなに酒を飲んで大丈夫なのかとジンは思ったが、誰も気にする様子はない
むしろ、酒を飲むほどに声が大きくなり、気合いが入っていく様だった
「米吉じいさまは?」
「もう宮入りして神楽を舞っとる!」
誰かが答える声が聞こえた、祭りは既に始まっているみたいだ、なのに自分だけが未だに何も分かっていない
「ジンさん、これ!」
桜が真剣な表情で小さな紐のついた布袋を差し出した、中には淡路島の神社で祈祷された小さなお守りが入っている、昨日桜は慌てて車で何処かへ向かったと思っていたが
どうやらこれを祈願しに行っていたらしい、そして夜遅くまで祭りの準備があると部屋に帰ってこなかった、なのでジンは一人で眠った
「首から胸に下げてください!怪我をしないようにっっ!みんなそれぞれの想いが入ったお守りを首から下げるんです!夕べ急いで作りました!」
「け・・・怪我?」
「まあ、多少はな、でも死にはせんから安心せえ!」
「いや、二年前は死人が出たぞ」
「そうじゃったかいな?」
誠一郎初め、担ぎ手達がワハハハとバシバシジンの背中を叩く、その豪快な笑い声とは裏腹に、「死にはせん」という言葉の重さがずしりとジンの心に沈んだ
死なない程度の怪我?——それは一体いかほどの怪我なのか
「切り火を!!」
桜がジンの後ろで「切り火」を打つ、出陣やお祭りで神輿を担ぐ前などに、首の後ろや右肩あたりに向けて、火打ち石をカチカチと打ち合わせて火花を散らしている
火花が散るたびに、ジンの肌に小さな熱が触れる、古来からの儀式で魔を祓い、身を清める火だ、桜が担ぎ手みんなに順番に切り火を打つ、それは同時にこれから起こることの危険性を物語っていた
「みなさん!ご武運を!!私達も後で宮入りしますね~!」
うおぉぉぉぉ!!
「乗り込め!乗り込め!出陣じゃ!」
「今日こそ東の荒くれ者どもに目にものを言わせちゃる!」
手を振る桜達に見送られ、次々にトラックに乗り込み、ぎゅうぎゅう詰めになってジンは彼らに攫われながらも必死で周りの言っていることを聞いて状況判断をしようとした
荷台に押し込まれ、四方八方から男達の咆哮と体温が伝わってくる
「あ・・・あのっ!!祭りって!いったいどういう祭りなんですか?」
トラックが物凄い勢いで山道を走って行く、荷台でジンは振り落とされない様にしっかり掴まって大声で聞いた、風が顔を叩く、エンジンの轟音と男たちの雄叫びで、自分の声さえよく聞こえない、それでもジンは必死で尋ねた、知らなければ心の準備もできない
「なんじゃ!松吉おじきから聞いとらんのか?」
誠一郎が驚いたように目を丸くした
「この祭りは古今東西、四つの地域の青年団が集まって神輿を担ぐんじゃ、その際にお互いの神輿をぶつけ合って邪気を払う、最後に勝ち残った神輿のみが宮入りできる」
キラ―ン!と誠一郎の目が戦士のように光った
「喧嘩祭りじゃ!」
ジンを乗せたトラックは波穂神社へと・・・喧嘩祭りの舞台へと、容赦なく突き進んで行った
コメント
2件
喧嘩祭りーー\(*°∀°*)/おー うわぁこれは気合い入れて行くしかない!! 桜ちゃんから貰ったお守りが、ジンさんを守ってくれるはず! いざ出陣じゃーー(*•̀ㅂ•́)و✧
うわぁ〜🤣 血気盛んな男たちの人いきれが伝わってくる〜😂 ジンさんもうコレやるっきゃないね✊️ ファイティン🚩ご武運を✨️