テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
episode #3 start
┈
長尾謙杜side
きっかけは、ほんまに些細なことやった。
仕事終わって、家帰ったら、
みっちーはもうおって、ソファに座ってた。
「おかえり、長尾」
立ち上がって近づいてくる。
自然に、当たり前みたいに。
「今日な、長尾が好きそうな――」
「みっちー」
俺の声で、止まる。
「……なに?」
一瞬、戸惑った顔。
「ちょっと疲れてる」
「そっか」
それでも距離は詰めてくる。
「じゃあ、抱きしめたら楽になるやろ」
腕伸ばされて、
反射的に、一歩下がった。
「やめて」
はっきり言ってしもた。
空気が、重くなる。
「……前も言ってたな」
みっちーの声、低くなった。
「俺、そんなあかん?」
「ちゃうって」
即否定したけど、
もう遅かった気がする。
「好きやから触れてるだけや」
「それは分かってる」
「ほんならなんで?」
問い詰めるみたいな目。
胸がぎゅって締め付けられる。
説明せなあかんのに、言葉が追いつかん。
「……近すぎるねん」
やっと出た言葉。
「ずっと一緒で、ずっと触られて、ずっと言われて」
息、整えながら続ける。
「正直……」
言いたくなかった。
言うつもり、なかった。
でも。
「ちょっと、ウザい」
口から、零れた。
しまった、って思った時には、
もう戻らへん。
みっちーは、しばらく黙って俺を見てた。
怒ると思った。
声荒げると思った。
でも、違った。
「……そっか」
笑った。
それが一番、きつい。
「ごめんな。俺、気づかんかった」
そのまま、少し距離を取る。
「長尾が嫌なことは、もうせえへん」
淡々とした声。
「もう、触らへん」
その言葉が、
胸の奥に重く落ちた。
「みっちー、俺は――」
言いかけたけど、
もう背中向けられてた。
その日から。
本当に、何もなくなった。
朝、隣にはおる。
でも、触れへん。
名前も、最低限。
「長尾、飯できた」
それだけ。
ハグも、キスも、
「可愛い」も、なくなった。
望んでたはずの距離。
なのに。
夜、布団で横になっても、
手が触れへんことに、
胸がざわざわして眠れへん。
俺が言ったんや。
ウザいって。
分かってる。
それでも、
こんなに何もなくなるなんて、思ってなかった。
——俺は、この時やっと気づき始めた。
欲しかったのは、
距離やなくて。
安心やったんやって。
┈
episode #3 finish
𝐍𝐞𝐱𝐭…🩷💛𓈒 𓏸
コメント
2件
うぉ!!ここから凄い展開来そうな予感…✨楽しみにしてます!!🥹
続きが楽しみです ... !! ✨️