テラーノベル
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episode #4 start
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長尾謙杜side
触れられへん。
それだけのことが、
こんなに苦しいなんて思わんかった。
同じ家に住んで、
同じソファに座って、
同じベッドで寝てるのに。
距離は、ちゃんと保たれてる。
みっちーは、俺に触れへん。
ほんまに、言葉通り。
朝も、夜も、
すれ違う時も。
肩が当たりそうになったら、
さりげなく避ける。
俺が近づいたら、
一歩、引く。
……俺が言わせた距離。
分かってる。
でも。
頭の中では、
勝手に思い出してしまう。
前はどうやったっけって。
朝、目覚めた時に
腕引かれて、
「まだ」って囁かれたこと。
ソファで隣に座ったら、
何も言わずに手、絡めてきたこと。
「長尾、可愛い」
何回も言われて、
その度に、照れて、
ちょっと鬱陶しいって思って。
……あほや。
今やったら、
いくらでも言われたい。
夜、目閉じると、
空想ばっかり浮かぶ。
みっちーが、前みたいに
何も考えずに近づいてきて、
俺の名前呼んで。
手、伸ばしてきて。
「……長尾」
そう呼ばれるだけで、
胸がきゅってなる。
でも、現実は違う。
隣におるのに、
背中合わせ。
触れたいって思う気持ちを、
お互い、押し殺してるのが分かる。
みっちーの指、
たまに俺の方に伸びかけて、
途中で止まるのも。
俺が無意識に、
距離詰めかけて、
踏みとどまるのも。
全部、我慢。
でも、この我慢を
どうやって言葉にしたらええか、分からへん。
俺が言った「ウザい」が、
まだ喉の奥に引っかかってる。
今さら
「触ってほしい」なんて、
どの口が言うねん。
みっちーも、何も言わへん。
優しいから。
俺が嫌がること、
もう一切せえへんから。
その優しさが、
今は痛い。
寂しい。
悔しい。
自分で選んだ距離やのに、
自分で耐えられへん。
空想の中のみっちーは、
前より優しくて、
前より熱を持ってる。
現実のみっちーは、
俺に触れへん。
その差が、
胸を締め付ける。
——このままやったら、
俺、多分、壊れる。
そう思った夜、
決めた。
ちゃんと、聞かなあかん。
逃げたらあかん。
次、みっちーが目の前におったら。
俺から、言う。
やって、俺から言い始めたんやから。
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episode #4 finish
𝐍𝐞𝐱𝐭…🩷💛𓈒 𓏸
コメント
2件
続き待ってます !!