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バスルームでのキスの感触は、より湿っていて、より官能的だった。
動く度に揺れるお湯の音と、琴音の色っぽい声が静かな空間に響く。
乱れる姿、感じている顔に、このまま1秒でも長く、この人の白い肌に触れていたいと思った。
「好きだ」、その一言を吐き出してしまいたい。
ずっと長い間胸に秘め、閉じ込めてきたこの想いを、今ここで――
俺はすぐ目の前にいる琴音の濡れた髪を触り、そして、かすかに震える手でゆっくりと頬を撫でた。
「龍聖……君……」
俺の名前。
何度も何度も聞いていたのに、今ほどその呼びかけが嬉しいと思えたことはない。
強く激しく高鳴る心臓の音が、俺の耳の奥でずっと鳴りやまない。
さあ、もうすぐ……
あと少し、声に出すだけでいい……
「琴音……」
その時だった――
突然大きな揺れが2人を襲い、浴室内のシャンプーなどがバタバタと倒れた。
地震!?
俺は、琴音の頭を慌てて自分の体で覆った。
「大丈夫か?!」
「う、うん。大丈夫」
俺にしがみついてじっと耐えている琴音。
少しずつ小さくなっていく揺れが、しばらくして完全におさまった。
すぐに琴音を支えながらバスルームを出る。
「すごく長かったね、ちょっと怖かったな。久しぶりの地震だったね」
「あ、ああ」
俺の告白は……
自然の力にあっけなく消し去られた。
あまりのタイミングの悪さに肩を落とす。
いや、今はまだ止めておけということか――
琴音を生涯守り抜く力がお前にはまだ備わっていない……そう言われてるような気がした。
この幸せを絶対に手放したくないと思うのに、あと1歩前に進む勇気がない。