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第90話 〚予知の新しい形〛(澪)
夜。
澪は、胸に手を当てていた。
(……痛い)
頭じゃない。
こめかみでもない。
心臓の奥が、ぎゅっと締めつけられるような痛み。
「……っ」
息を吸うと、
胸がひりつく。
その瞬間――
視界が、ふっと歪んだ。
でも、
今までみたいな“映像”じゃない。
流れない。
再生されない。
代わりに――
感情だけが、押し寄せてくる。
不安。
焦り。
選択しなかった未来の気配。
(……これ)
澪は、はっと気づく。
(予知……じゃない)
これは、
「決まった未来」を見る力じゃない。
(可能性……)
胸の痛みが強くなる。
その中で、
一つだけ、はっきりしたことがあった。
――このままだと、何かが起きる。
でも。
(変えられる)
不思議と、そう思えた。
澪は、目を閉じる。
頭の中に、
一つの“想像”を浮かべる。
守られている自分。
誰かに助けられる未来。
……違う。
(私が、動く)
声を出して笑う自分。
立ち止まらない自分。
誰かの手を、掴み返す自分。
その瞬間。
「……っ!」
今度は、
頭が、ずきんと痛んだ。
懐かしい感覚。
今まで何度も経験した、あの痛み。
(これ……)
澪は、荒く息をしながら理解する。
心臓が痛むのは、
避けられない可能性を感じ取った時。
頭が痛むのは、
未来を書き換える“本物の妄想(想像)”をした時。
「……分かった」
ぽつりと呟く。
今までの妄想は、
未来を“受け取る”ものだった。
でも、これからは――
(選ぶんだ)
見るか、
変えるか。
心臓が教えてくれる未来と、
頭が痛むほど願った想像。
その両方を、
澪は使えるようになった。
胸に残る痛みは、
まだ消えない。
でも、怖くはなかった。
(これは……)
(私の力だ)
窓の外で、
夜風が吹く。
『誰も知らない、高嶺の花の裏側』は、
ここで終わりに近づいている。
そして――
『誰も知らない、高嶺の花の裏側2』は、
“未来を変える物語”として、始まろうとしていた。