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「それにしても、酷いな。女の子の顔を殴るなんて。こんなに可愛いのに」
瑞希くんに見つめられるとドキドキしちゃう。
「俺、ちょっと、片付けられそうなところ片付けるから、葵、座ってて。まだ顔、痛いだろ?」
「うん。ごめんね。ありがとう」
瑞希くんは散乱している洋服を畳んでくれたり、散らかった小物とかを拾ってくれ、部屋を整えてくれた。
子どもっぽいところもあるんだなって思ってたから、リードしてくれる彼をカッコ良いと思ってしまう。
一通り、部屋が戻ったあと
「葵、話せたら話して?詳しいこと……」
彼が私の隣に座り、どうしてこうなったのかを教えてほしいと伝えてきた。
「うん。普通に家に帰ったら、元彼がいて……」
私は、今日の出来事を隠すことなく全て話した。
「はぁ!?二回も殴られたの?んで、お金も盗られたの?」
「うん。お金は……。私がバカだったからしょうがないと思っているけど……」
彼はため息をつき
「でも、無事に逃げることができて良かったよ。葵にはごめんだけど、その男最低だな」
「うん、最低だと思う。付き合ってた自分が恥ずかしい」
「葵、今日、俺の家泊まる?」
「えっ?」
「そいつ、まだ合鍵持っているんだろ?とりあえず、管理会社に頼んで、鍵穴変えてもらいなよ。また知らない間に部屋に入られたら、危ないから。警察には相談しないんでしょ」
「うん」
「俺も葵に何かあったら嫌だし。葵は、俺の家来るの嫌?」
瑞希くんのお家に行くことは嫌じゃない。
一人でいるのが正直今は怖い。
でも甘えてばかりいちゃダメだよね。
「葵、甘えてばかりいちゃダメとか考えてるでしょ?」
どうしてわかるの?
「もっと甘えていいんだよ。今日も電話もらって、俺のこと頼りにしてくれて嬉しかった。葵のこと、こんな目に遭わせたやつは絶対許さないけどな」
「一人でいたくない。瑞希くんと一緒にいたい」
「んっ、よく言えました」
彼の家に泊まる準備をして、部屋をあとにした。
タクシーで彼の家に向かう。
どんな家に住んでるんだろ。
人気のホストさんってやっぱり、家賃何十万円もするところに住んでるのかな?
タクシーで二十分くらいだろうか。
意外と彼の家は近かった。
「着いた。別に普通だろ?」
そう彼は言うが、普通ではない。
ホテルみたいな高層マンションに住んでいた。
「建物はあんまり新しくないから、そんなに綺麗じゃないけど。家賃もそんなに高くないし」
彼のあとを着いて行く。
エレベーターの十階のボタンを彼は押していた。
「ここ」と案内された部屋に入る。
「お邪魔します」
部屋の電気がついた。
「うわぁ、広い」
一人暮らしにしては広いと感じてしまった。
リビングとキッチン。ベッドルーム。
あともう一部屋ある。
「そう?俺は、葵の部屋の方が落ち着くけどな」
ソファに座るように言われた。
部屋も散らかってはいなかった。
物が少ないんだろうか。
「今、なんか飲み物淹れるから」
「あっ、私が……」
立とうとしたが
「たまには座ってて?」
慣れないキッチンに行っても、迷惑だよね。
どこに何があるかわからないし。
瑞希くんは紅茶を淹れてくれた。
「美味しい。ありがと」
瑞希くんは、私の隣に座った。
「うん。葵が俺の家に居るの、なんか変な感じ。でも、嬉しい」
フッと彼は笑ってくれ、瑞希くんと目が合う。
その笑顔は反則だよ。
「ごめんね。今日も仕事途中で抜けて来てくれたんでしょ?」
「ああ、大丈夫。今日、そんなにお客さんの予約入っていなかったから」
気にしないで?と彼は言ってくれる。
「うん……」
話を変えるように
「葵、ご飯食べてないでしょ?食欲ないかもしれないけど、なんか食べなきゃね。俺もご飯まだなんだ」
私の家だったら何か作ってあげられるんだけど。
「なんかデリバリーでも頼もうか?」
彼はスマホを取り出し、サイトを検索している。
「葵、どれが食べたい?」
瑞希くんがスマホの画面を見せてくれる。
「えっと……」
自然と彼の肩に私の肩が触れた。
「瑞希くんは……?」
彼の顔がすぐ近くにあって、目を逸らそうとしたけれど、顎をクイっとあげられ、チュッと優しいキスをされた。
思わず、ドキドキしてしまう。
「こんなに可愛いのに、殴るとか……。絶対許さない。今日は、これ以上は我慢するけど」
私の顔が腫れているから、気を遣ってくれてるんだね。
………・……
「デリバリーとか久しぶり」
「葵のご飯の方が美味しいけどな」
彼が頼んでくれた物をシェアして食べる。
「うん、美味しい!」
「葵ってさ、なんでも美味しいって食べてくれるからいいよな。例え、デリバリーでも。店のお客さんと比べちゃいけないけど、店外とかで行くお店選びが結構大変でさ、やっぱり気を遣うんだよね。良い雰囲気のお店じゃなきゃ機嫌悪くなっちゃう子もいるからさ。まあ、夢を求めてくるんだから、それに応えなきゃいけないのが仕事なんだけど。俺だって普通のラーメンとか食べたいなって思う日とかもあるんだよね」
私は彼のその言葉を聞いて、ははっと声を出して笑ってしまった。
「えっ?なんかおかしかった?」
「ううん。なんか、瑞希くんも普通の男の人なんだなって。面白かった」
王子様のように見えるけど、中身は普通の男性なんだ。