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「葵、そろそろ寝る?」
お互いシャワーは済ませた。
「うん」
「葵、明日は仕事だよね?出かける時、起こして。送ってくから」
「いいよ。寝てなよ。生活リズム、違うんだから」
「ダメ!起こして?」
「わかった」
二人でベッドに入る。
私はソファで寝ると言ったが、瑞希くんが許してくれるはずもなかった。
「おやすみ」
電気が消される。
「おやすみ」
隣を見ると、瑞希くんがいる。
不思議、だけど安心する。
「瑞希くん、今日はありがとう」
「いえいえ」
隣で寝ている彼の手を握ってしまった。
「やばい、すげー幸せなんだけど」
私もだよ。
そう言いかけたけど、目を閉じる。
一人で過ごしていたら、きっと恐怖で眠れなかっただろう。
瑞希くんが隣にいてくれたおかげでゆっくり眠ることができた。
朝起きると、瑞希くんは寝ていた。
「起こすと可哀想だな」
出勤の準備をする。
朝ごはんとか作ってあげたかったけど、冷蔵庫の中、何もないんだもんな。
朝起きて鏡を見ると、まだ少し顔が腫れていたが昨日よりは赤みが引いている。良かった。
鍵をかけてもらわなきゃいけないから、結局は起こさなきゃ。申し訳ないな。
「瑞希くん。私、仕事行ってくるね」
「う……ん」
なかなか瑞希くんは起きなかった。
疲れてるだろう、仕方がない。
「鍵だけしてね!」
瑞希くんの寝顔、可愛い。
思わずチュッと頬にキスをしてしまった。
「嬉しい」
「へっ?」
瑞希くんは、普通に起き上がった。
「寝たふりしてたの!?」
「途中までは本当に寝てたけどね。葵、良かった。昨日よりも顔、腫れてないね。痛くない?」
「うん」
「また連絡して。俺の家ならいつでも泊まって」
そんなわけにはいかないよ。
「行ってきます」
瑞希くんに見送られながら、出社する。
昼休憩中、マンションの管理会社に連絡をして、鍵交換について相談をすると「十日ほどお時間かかります」という予想外の返事をされた。
「どうしよう」
ため息しか出ない。
尊がまた家に来るって可能性は低いけど、それでも殴られた恐怖からか、トラウマに感じる。
スマホを見ると、瑞希くんからメッセージが届いていた。
<どうだった?>
メッセージが届いていたのは十分程前だ。
今、起きているかな?
瑞希くんに電話をする。
<どうした?>
彼の声を聞くと安心するようになっちゃった。
「ごめん、今大丈夫?」
私は鍵交換に十日ほどかかることを彼に伝えた。
<だったら、俺の家にいればいいじゃん?>
「でも…」
<俺、そっちの方が嬉しいんだけど……>
「いいの?」
<当たり前じゃん>
瑞希くんと相談をして、十日間ほど彼の家にお世話になることになった。
その日、会社を半休にし、尊も仕事をしているであろう時間に帰り、瑞希くんの家にしばらく泊まるために着替えなどを準備した。
準備が終わってすぐに瑞希くんの家に向かう。
良かった、彼の出勤時間前に間に合った。
「おかえり!」
出勤前の彼はやっぱり、雰囲気が違う。
「葵、これ」
渡されたのは合鍵だった。
「出かける時とか、困るだろ?」
「うん。ありがと」
「帰りが遅くなる時とかあるから、先に寝てな?基本的には仕事用の携帯はすぐに出れるから、なんかあったら連絡して」
「うん!あのさ……」
「どうした?」
口籠る私の言葉を彼は待っていてくれた。
「夕ご飯、作っておくから、もしいらなかったら連絡ほしいな」
そんなことをして迷惑だろうか。
食事や家事、私が瑞希くんのためにできることはそれくらいしかない。
「マジで!嬉しい!楽しみに帰ってくるから。じゃあ、行ってくる」
彼は、チュッと私の唇にキスをした。
「行ってらっしゃい」
赤面する顔を隠すため下を向いてしまったが、瑞希くんを見送る。
瑞希くんが出かけてから、私はしばらくして買い物に出かけた。
食料品を買いに行かなきゃ、冷蔵庫に何も入っていなかった。
やっぱり、外食が多いんだろうな。
今日は何を作ろう。瑞希くんに聞けば良かった。せっかくだから、彼の好きなものを作ってあげたい。メッセージなら送ってもいいよね?
返事が来るかわからなかったが、プライベート用のスマホに連絡をした。
すると、そんなに時間がかからないうちに<葵の作ってくれるものなら何でもいいけど、唐揚げが食べたい>という返信が来た。
唐揚げか。やっぱり男性ってガッツリした物が好きなんだろうか。
せっかくだから、揚げたてを食べてもらいたい。下準備だけしてしとうこうかな。
あと、野菜も買わなきゃ。普段食べてなさそう。
メニューを考えながら買い物をするのは楽しかった。瑞希くんの家に帰宅し、夕食の準備をする。
彼が帰ってくるのはまだまだだけど、喜んでもらえるよう何かできないか考えた。
・・・〜〜・・・
「なんか、流星さん。昨日体調不良で帰ったクセに今日は完全元気ですね。むしろ、いつもより調子良さそうじゃないですか?」
歩夢が流星の今日の途中までの売上を見て、春人に話しかける。
「そうだね、なんだろうね。昨日、俺、また頑張ったのにね」
頬杖をつき、接客中の流星を見つめる。
なんだか楽しそうだ。
これは接客が楽しいわけではなく、プライベートで何かあったのだろうと二人は予想する。
「流星さんのところ、またボトル入りました!!」
新人ホストから声があがり、何人か流星のテーブルへヘルプへ回り、コールが始まった。
「げっ!俺、今月は流星の売上抜けると思ったのな」
春人はため息をついた。
・・・〜〜・・・
「ねー。流星、どういうこと?説明して」
「何が?」
裏で休憩していたら春人に話しかけられた。
「昨日はなに?どうしたの?」
「ああ。昨日も悪かったな」
そう言えば、ちゃんと春人に話してなかったな。
「説明して」
浮気を目撃した女のように、説明をしないとこの場から離してくれなさそうだ。今日は仕事を早く終わらせて、葵のいる家に帰りたい。
「俺も聞きたいっす」
歩夢が近くに寄ってきた。
「えーと……。ちょっと長くなるけど」
春人と歩夢はコクンとうなずく。
「昨日……」