テラーノベル
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第80話「神の傷、悪魔の影」
空を裂くような轟音が、神界中に響き渡った。
アテナの剣が、マモンの肩を深く切り裂いた。
アテナ vs マモン――決着。
マモン「……フッ、金じゃ……買えぬものもある、か……」
その体は黄金に変わりながら、静かに崩れ落ちていく。
アテナ「……お前の強欲は、神の秩序に抗うには脆すぎた」
しかし、アテナもまた深く呼吸を乱し、左腕は血で染まっていた。
ポセイドンとレヴィアタンの戦いも、終わりを迎えつつあった。
レヴィアタン「こんな海に……呑まれるとは……」
ポセイドン「俺の海は、命を護るためにある。――お前はその敵だった」
水竜がレヴィアタンを包み、海の霧の中へと飲み込んでいく。
しかし、毒に侵されたポセイドンの体は徐々に黒く蝕まれていた。
ポセイドン「クッ……これは、かなり深くまで来てるな……」
同時に――
アレス vs ベルフェゴールも終焉を迎えた。
アレス「立って戦え! それが神であろうが悪魔であろうが、誇りを示せ!!」
ベルフェゴール「……面倒だな、本当に……けど……少しは熱くなれたよ」
一瞬の隙を突いたアレスの炎槍がベルフェゴールを貫き、炎が爆ぜる。
ベルフェゴール「……このまま、眠らせてくれ……」
燃え尽きる怠惰の悪魔。その灰が風に舞った。
――その頃、アポロンの矢が、アスモデウスの心臓を貫いていた。
アスモデウス「……アァ……でも……最後の愛は……私の中に残るわ……♡」
アポロン「……悪くない終わりだ。君にとって、ね」
アスモデウスは微笑んだまま崩れ、霧のように消えていった。
しかし、アポロンの胸元には傷が走り、彼も片膝をつく。
アポロン「……まだ立てる。星の英雄たちが見てる……負けるわけにはいかない」
――そして、勝負のつかない戦場もあった。
アフロディーテ vs ベルゼブブ
アフロディーテ「……くっ……この虫ども、しつこすぎるわ……!」
ベルゼブブ「喰らうだけが、我らの性よ。貴様の恐怖も、喰らい尽くす!」
アフロディーテはかろうじて優勢を保っていたが、風魔法も限界が近く、追い詰められていた。
オーディン vs アザゼルもまた、未だ決着せず。
黒炎に包まれたオーディンのマントはボロボロになり、アザゼルの拳も血に染まっていた。
オーディン「……貴様、強いな」
アザゼル「お前もな……だが、ここで終わりにする」
二人は最後の力を振り絞り、突進し合う――!
そして、天の最深部。
アルテミス vs アザトース
アザトース「……なぜ貴様は、それほどに己の誇りに固執する?」
アルテミス「それは……神だからよ。何よりも、私自身の誓いを裏切らないため!」
その瞬間、アルテミスの双剣が月光を纏い、アザトースの鎌を押し返す!
アザトース「グッ……この我が、押されているだと……?」
アザトースの身体が裂け、闇が噴き出す。
しかし――
そのとき、戦場に突如、冷たい風が吹き抜けた。
「……終わったか」
――サタンが、再び姿を現す。
漆黒の衣を纏い、玉座から立ち上がる彼は、すでに「光と闇」を併せ持つ絶対の王としての姿を纏っていた。
サタン「よくやった。だが、ここまでだ」
神の幹部たちは、一瞬にして凍り付いたような緊張感に包まれる。
その冷たい視線が、彼ら全員に向けられた。
サタン「神の軍勢よ、存分に抗ったな。だが、その力……余には届かぬ」