厨房へ行くと、いつものおじいちゃん料理人が調理器具の手入れをしていた。
「すみません、急にお邪魔して」
「これはこれは、陛下。皇太后様まで。直々に起こしいただいてありがとうございます。」
「いえ…、はじめまして。綾桜と申します。」
「綾桜…きれいなお名前だ。
ところでどうなされましたか?」
「えっと…蕎麦の用意は可能ですか?后が食切れを起こしていて…」
「可能ですよ、それは大変。沢山ご用意いたしますね」
「あ、ありがとうございます…!」
「いえいえ、」
優しく笑った料理人は調理をするため、奥へ入っていった。
「優しそうな、方…」
「料理人さんには私が入ってきたときから直属で来てくれてて…、凄く優しい人なんですよ」
「そうなんですね…!」
蕎麦を食べ終えた後、俺たちは少しの間、厨房の長椅子に並んで腰掛けていた。窓の外は、夕暮れから夜へと移り変わろうとしている。空の色が深く、濃い藍色に染まり始めていた。
「もうこんな時間ですね」
俺が呟くと、dnqさんは俺の肩にそっと頭をもたせかけてきた。
「なんだか、夢みたい。本当に自由なんだって、今、実感してます」
「夢じゃないですよ。俺がずっと隣にいますから」
肩に乗せられた重みが、温かい。髪は短くなってしまったけれど、俺の好きな優しい匂いは変わらない。
「mfくんの匂い、やっぱり落ち着きます」
「dnも。…もう少し、こうしててもいいですか?」
尋ねると、彼女は無言で、こくりと頷いた。その小さな仕草が、心にじんわりと染み渡る。
二人で静かに寄り添いながら、今日という長い一日が終わっていくのを感じた。
「本当に、良かった」
dnqさんが、まるで自分に言い聞かせるように呟く声が聞こえる。
「本当に。」
俺は、繋がれた手に少しだけ力を込めた。そして、手の甲に優しく口付けを落とした。
「久しぶりですね、これとか」
「っ…//」
dnqさんは耳まで赤くして、俯く。俺の手をぎゅっと握り返すと、自分も口付けを落とそうと思ったのか、口に近づけたがやっぱりおろした。
この温かい時間が、いつまでも続けばいいのに。外の世界のしがらみや悪意なんて、今は忘れてしまいたいほどに。
どれくらいそうしていただろうか。静かな時間が流れる中、ふとdnが顔を上げた。
「あの、mfくん」
「何でしょう」
「…ありがとうございます」
改めて、まっすぐに目を見て伝えられる感謝の言葉。俺は少し照れくさくなった。
「いえ、…//」
お互いに微笑み合い、少しだけ視線を逸らす。この距離感が、今は心地いい。
「そろそろ、部屋に戻りましょうか…?」
「はい」
「今日…もしmfくんが疲れてなければ、…久しぶりに…っ//
や、やっぱ無理ですっ!//」
自分から誘ってきたのに恥ずかしくて言い切れない彼女が可愛らしい。
「俺は全然。dnqさんこそ、大丈夫ですか?」
「っ…はい//」
「では、少し湯船にでも浸かりに行きましょうか」
「そうですねっ…!/」
俺は立ち上がり、そっと手を差し出した。彼女はまだ熱を持ったその手で握り返し、ゆっくりと立ち上がる。
「おじいさん、御飯、ご馳走様でした。」
「私も。ご馳走様です」
「また、いらっしゃってください」
料理人の優しい視線に、少しだけこの生活にまた戻ってこれたような、安心感があった。
NEXT1000
終盤…どうしようか迷い中です!
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コメント
7件
dnちゃんデレ出ちゃったの可愛い~! 安心して出ちゃったんだ!それでもツンデレなとこが やっぱdnちゃんって感じがする‼mfくんに伝えたくなったんだね! 料理人のおっちゃんの生暖かい視線が好きすぎる!知らなければ 読んでみてほしいんだけど本好きの下剋上って本があって、それの 登場人物たちの主人公たちを見守る視線がそんな感じでね! お蕎麦ちゅるちゅるすすってるdnちゃんを見守るmfくんという構図が 出来上がってる、、!最高すぎた!
穏やかな空気と、可愛い雰囲気が交互に襲ってきて、なんていうかずっとキュンキュンしてます! そんなところに、最後のdnさんの、可愛らしいお誘い文句がこの野郎っ!て感じです! 料理人さんの優しい視線、優しい視線向けられる料理人さん優しい‼︎ 私だったら、フー↑↑みたいな視線しか向けられません!w

あんなことの後だから、もう泣いちゃいますー。一文一文の気持ちがしみました。。え、もう終盤なんです…?!さみしい。。どうなるのか楽しみにしていますね。 dnさん、なんて積極的なんですか…✨この後お幸せな時をお過ごしください…🥰✨