呆れてモノも言えない。
着替えとかどうする気なんだか。月陽の服を着るには身長差があり過ぎる。
……まあ、XLがあるにはあるけど貸したくない。
「ねぇ、背中流そうか?」
夜桜がウッキウキで月陽に聞いてくるが、月陽は一蹴する。
「黙って浴槽の中にいろ。狭いんだから、暴れるな」
「そ、それって私で出汁を取るってことね?」
うっとりした表情で、顎に手を当てて首を傾げる。
ドン引きである。
「え、待って、待って。なんでそんなキモイ思考になるの?あ、いい、答えなくて…」
「月陽が好きだから」
美人が真面目な顔で、馬鹿な事を宣う。
それでも美人というのは狡ずるく、例え同性であってもドキリとさせられる。
月陽が言葉に詰まると、満足そうにニコニコして大人しくお湯が半分もない浴槽に体操座りする。
月陽が体を洗い終わると、夜桜と変わり湯が溜まった風呂に入る。
「私の出汁」
月陽が片足を湯に付けた瞬間を見計らって夜桜がニヤニヤしながら、ボソリと呟く。
「辞めろよお前、入りずらくするなよ」
想像してしまう。夜桜の汗やら何やらが溶けだした湯。
月陽は、一瞬動きを止めたが吹っ切れたように勢いよく湯船に浸かった。
気持ち何時もより熱い気がした。
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