TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


陽翔が教壇に立つ教室の空気は、薄い氷膜のようだった。


悠翔の姿を見つけた陽翔は、口元だけで笑った。

まるで、最初からそこに“そうあるべきもの”が収まったように、自然に。


「さて……君たちの中には、もう動画を観た人もいるかもしれないね」


講義の冒頭で、唐突にそう言った。


学生たちは笑った。わずかに。

だが、それは曖昧な笑みではなかった。共犯の笑みだった。


悠翔は反射的に視線を逸らす。だが、それさえ遅い。

彼の机の隣に座っていた男子学生が、スマホをちらつかせるように机に置いた。

それは、見慣れた構図の動画——自宅で撮られた、最初の“晒し”の映像。


「これって、ほんとに“あいつ”だよな?」


囁き声が、すぐそばで落ちた。


「ねえ、あの顔……完全にイっちゃってたよね。ゾクッときたわ」


「こういうの、合法なんだっけ?いや、まあ、自分からされてるならいいのか」


陽翔はそれを見て、講義資料をゆっくりと裏返した。

「支配されることに快感を覚える人間の、構造的な特徴」というタイトルが、スライドに投影された。


悠翔は手元のノートを見つめたまま、鉛筆を動かすふりをした。

だが、何も書けてはいなかった。


——逃げられない。

——今、大学という空間までもが、彼の“家”になった。


陽翔がそこで、まるで自分の弟などいないかのように言った。


「支配というのは、繰り返されると“安定”になる。

安心や依存と区別がつかなくなって、ついには“自分が望んだ”と錯覚する」


その言葉は講義のものではなかった。

ただの事実だった。





その日の講義後。

構内の自販機前で、悠翔は背後に視線を感じた。

振り返ると、少し離れたところに、ひとりの学生が立っていた。


薄い青のパーカーに、黒縁の眼鏡。

一見して目立たない、けれどその眼差しは、どこまでも正確に悠翔を見ていた。


蒼翔だった。

しかし、その姿はまるで“他人”だった。


まだ、名前は名乗らない。

ただ、その目だけが語っていた。


「そっち、そろそろ壊れるだろ」



空白の肖像 悠翔 大学編(未完)

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

36

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚