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ヘリアディオスで得られた暗黒魔法といっても大それた魔法では無く、単なる闇属性に過ぎない。まともな神ではなかったこともあり、直接教わったわけでは無いのが問題だ。
鉄扉の向こう側にいる奴をここに呼ぶには、強引なやり方でなければ厳しい。敵の魔法攻撃力がそれなりに高い以上、確実に成功させる必要がある。
その意味でもまずは魔法効果を試してから使う。
「対象を引きずり込め、《シュレイン》……!」
いったん鉄扉から離れ、離れた所のミルシェたちを遠目で見ながら魔法を唱えた。すると彼女たちが何やら騒ぎ始めた。
「攻撃魔法が止んだと思ったらこれは一体何事!? 何かが引っ張っている……?」
「ひぃええぇぇ!! 何ですか何ですかぁぁぁ!?」
「ウニャ!? 尻尾がいうことを聞かないのだ! この力は何なのだ!?」
ミルシェたちがいる範囲を確かめながら暗黒魔法を使ったはいいが、失敗しただろうか?
だが魔法効果を感じているということはすぐに表れそうだ。
「ウニャニャニャ!? な、何なのだ? 何でアックが目の前にいるのだ!?」
「おっ! シーニャが来ちゃったか」
「ウニャ?」
何が起こっているのかといった感じでシーニャが顔を傾ける。その仕草が猫っぽく可愛いせいか、ついついなでなでしてしまった。
「よしよし……」
「フ、フニャ」
「――っと、悪いな、シーニャ。悪いけど、ミルシェの所にもう一度戻ってくれないか?」
「よく分かんないけど分かったのだ!」
訳が分からないといった表情でシーニャは素直に戻ってくれた。どうやら誰かを引きずることは分かったが、特定したわけじゃなさそうだ。
魔法の命中精度はそれほど高くないように思える。今度は対象の名前を付け加えてもう一度試すことに。
「ルティシア・テクスを引きずり込め、《シュレイン》!!」
シーニャを引きずり込んだ時は範囲内の誰かといった感じだった。だが対象となる名前が分かっていれば、確実に対象者が引っ張られるはず。
「はぇっ!? あああ、アック様が間近にいますよ!? ど、どうしたことですか!!」
「成功のようだな!」
「な、何がですか!? そもそも敵はどこにーー?」
「敵なら鉄扉の向こう側にいる」
これで問題は無さそうだ。すでに敵の名前が判明している以上、確実に奴を引きずり込める。ルティが間近にまで引っ張られたことを考えると、すぐに反撃を喰らうことになるはずだ。
だがさすがに想定をしていないことが起きれば敵も一瞬はひるむ。その隙をついて相手の間合いを見極めれば問題は無い。
「間近にアック様……これってもしかして、運命の――」
「よし、とりあえずルティはミルシェの所に行ってていいぞ」
「ええっ!? せっかくアック様が間近にいるのに!?」
「敵を何とかしてから相手するから、とにかく言うことを聞いてもらえるか?」
ルティが何とも言えない表情でおれを見つめるが、ミルシェから声が上がっている。
どうやらシュレインの効果が切れたようだ。
「ルティ!! アック様から離れて、あなたも氷を叩き割って!」
「ドワーフ、早くするのだ!!」
ミルシェの守りだけでは防ぎきれなくなっていてシーニャも応戦しているようだ。
「あうぅ……ミルシェさんが大変なことに! アック様分かりましたです。敵が近くにいるなら早く終わらせてくださいっ!」
「もちろんだ」
状況が状況なだけにすぐに理解したようだ。ルティは笑顔を見せて頭を下げた後、すぐにミルシェの所に駆けて行った。敵からの魔法攻撃はエンドレスに続いている。
ミルシェが防御魔法を展開していても敵が止めない限り、完全に止まることは無さそうだ。こうなれば敵と対峙するしか手は無い。おれは敵の名前を加えて魔法を唱えた。
「ヘルフラム・エグリーを引きずり込め! 《シュレイン》」
「――!? な、何っ!? 貴様は――!」