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第6章 「光を信じて」
朝の雄英。
いつもと同じはずの空が、どこか冷たく見えた。
哀は廊下を歩きながら、昨夜のことを何度も思い出していた。
哀(心の声):「あの人の炎は、怖いはずなのに……あたたかかった。」
胸の奥がじんわり熱い。
けれど、その小さな幸せに影が差し始めていた。
⸻
そのころ、ホークスは職員室であるデータを見ていた。
スクリーンには、雄英の外部センサー記録。
表示されたのは、見覚えのある炎の痕跡。
ホークス:「……やっぱり。夜中に個性の使用反応。しかも制御不能レベル。」
教師:「ホークス、また監視データか?」
ホークス:「えぇ、少し気になる動きがあって。」
ホークスの目が、ひとつの名前で止まる。
〈轟 燈矢〉
ダビの本名――。
ホークスは深く息を吐いた。
ホークス(心の声):「……隠してたのは、彼女を守るためか。それとも……」
⸻
放課後。
屋上。
哀が空を見上げていると、背後からホークスが現れた。
ホークス:「やっぱり、ここが好きなんだね。」
哀:「落ち着くから。」
ホークス:「……ダビと、一緒に?」
その声に、哀は一瞬息を止めた。
哀:「……知ってたの?」
ホークス:「昨夜、監視データに出てた。……“あの炎”は、雄英にとって危険かもしれない。」
哀:「違う。彼は――もう大丈夫。」
ホークス:「君は信じたいんだろ。でも、俺は“守らなきゃいけない”立場だ。」
ホークスの声が静かに響く。
優しいのに、どこか遠い。
哀:「彼を敵にしないで。」
ホークス:「君のためなら、したくない。でも……彼がまた暴れたら、止める。」
哀:「……それでも、私は信じる。」
ホークス:「どうしてそこまで?」
哀:「だって、あの人は嘘をつけない。」
ホークスは小さく目を閉じた。
風が吹き抜ける。
彼の羽がわずかに揺れ、何かを決意するように音を立てた。
ホークス:「……分かった。君がそう言うなら、俺も“信じてみる”。」
哀:「ホークス……」
ホークス:「でも、もしも何かあったら、俺が君を守る。彼でも、誰でも関係なく。」
⸻
その夜。
ダビは訓練場の片隅で、ひとり炎を見つめていた。
哀がそっと近づく。
哀:「また練習?」
ダビ:「……違ぇよ。炎が、勝手に暴れるんだ。」
哀:「昨日より熱い。」
ダビ:「お前が近くにいるからな。」
哀:「……そうなの?」
ダビ:「俺の炎、感情で変わる。お前を思い出すと、止まらなくなるんだ。」
哀が微笑んで、そっと彼の腕に触れる。
一瞬で炎が弱まり、静寂が戻る。
哀:「ね、止まった。」
ダビ:「……お前が、俺の“鎮火剤”みてぇだ。」
哀:「なら、ずっとそばにいればいいね。」
ダビが一瞬息をのむ。
その目に映るのは、ただ彼女だけだった。
ダビ:「……本気で言ってんのか?」
哀:「本気だよ。」
ダビ:「俺の世界、全部燃えてんだぞ。」
哀:「じゃあ、その中に私も入れて。」
炎がゆらめく。
その光の中で、ダビは彼女を抱きしめた。
燃えるような熱さの中で、
初めて“安心”という温度を感じていた。
ダビ(心の声):「……お前がいれば、俺は生きていける。」
⸻
だがその頃。
ホークスは、雄英のデータルームで別のファイルを開いていた。
そこには一枚の画像。
「轟燈矢――指名手配履歴(抹消済)」
ホークス(小声で):「……消された記録。
“彼”が雄英にいる理由……一体、誰が?」
モニターの光が、彼の瞳に反射した。
静かに、しかし確実に――
運命が動き始めていた。
⸻
🌘 次章予告:第7章「焦げつく真実」
哀が知らないダビの“過去”が暴かれ、
信じることが愛か、それとも嘘か――
炎がすべてを試す時が来る。