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第7章 「焦げつく真実」
夜の雄英。
誰もいない資料室。
ホークスは、ひとつの封印ファイルを開いていた。
ホークス(心の声):「……やっぱり、“轟燈矢”――生存記録。
雄英入学の裏で、身元データを改ざん……誰が、こんなことを。」
画面には、焼け落ちた屋敷跡、そして一人の少年の記録。
“轟家長男・燈矢、行方不明”
ホークスの拳が小さく震えた。
ホークス:「……哀、知らないんだな。」
⸻
一方そのころ。
寮の裏庭で、哀はダビを探していた。
訓練場には、焦げた跡。
その中央に、炎をまとった背中。
哀:「ダビ……!」
ダビ:「……来るな。」
哀:「どうして?」
ダビ:「もう、止められねぇ。」
炎が爆ぜる。
彼の体から青い火があふれ、夜空を焦がした。
哀:「痛いの?」
ダビ:「痛ぇさ。けど、それより……お前に知られるほうが怖ぇ。」
哀:「何を?」
ダビは一歩、哀の方へ。
その目に、決意と恐れが混ざっていた。
ダビ:「俺は、“轟燈矢”だ。
エンデヴァーの息子で、ヒーローの家の失敗作。」
哀は息を飲んだ。
けれど逃げなかった。
哀:「……そうだったんだ。」
ダビ:「驚かねぇのか?」
哀:「少し。でも、それであなたが変わるわけじゃない。」
ダビ:「俺は、ヒーローを憎んでた。親父を憎んで、全部燃やした。
……人殺しだぞ、俺は。」
哀はそっと彼の手を取った。
その手は熱く、焦げた皮膚が痛々しい。
哀:「でも今、私を傷つけてない。
それが“今のあなた”だよ。」
ダビ:「お前……どうしてそんな簡単に許す。」
哀:「許してない。受け止めてるの。」
炎が少しずつ弱まっていく。
青かった光が、穏やかな橙に変わる。
ダビ:「……お前は俺を救う気か?」
哀:「ううん。あなたを“生かしたい”の。」
ダビ:「俺に、生きる資格なんてねぇよ。」
哀:「あるよ。だって――私が生きてほしいと思ってる。」
沈黙。
夜風が二人の間をすり抜ける。
その静けさの中で、ダビは哀を抱きしめた。
ダビ:「……お前、優しすぎて壊れるぞ。」
哀:「壊れてもいい。あなたが笑うなら。」
ダビ:「そんな顔で言うなよ……俺、ほんとにお前に溺れる。」
彼の声が震えていた。
それは後悔でも悲しみでもない。
ただ、“生きたい”と願う音だった。
⸻
その瞬間、遠くの屋上でホークスが二人を見つめていた。
風が羽をなで、彼の胸が締めつけられる。
ホークス(心の声):「……彼が“轟燈矢”なら、雄英は守れない。
でも、哀があんな顔をするなら……どうして止められる。」
ホークスの羽が一枚、夜に散った。
彼もまた、選べなくなっていた。
⸻
🌑 次章予告:第8章「炎の約束」
過去を受け入れた哀とダビ。
だがその愛の裏で、雄英が動き出す。
“燈矢”という名が再び世界に広がるとき――
ふたりの絆が、最大の試練を迎える。