ひら「今日は何をしようかな…ん、あれは」
カウンターの前にいるアリアを見つける
アリア「依頼を受けたいのだけど、帝国歴720年のものはまだ残っているかしら」
受付「はい、3件ほど残っていますよ。どちらを受けられますか?」
アリア「11月のものでお願い」
受付「…わかりました、こちらです」
受付のお姉さんがカウンターを離れ、アリアを案内しようとする。
ひら「ちょっと待って」
アリア「!あなたは…」
ひら「先日はどうも。それで、面白いことしてるね?ついて行ってもいいかな」
アリア「もちろん『いいえ』よ」
ひら「あれ?そんなこと言っていいの?この前の宿代、誰が払ったんだと思う?」
アリア「なっ、いつの間に……!」
ひら「名家ミリティアのお嬢様が庶民に介抱を受けたと知られたら……」
アリア「もう分かりましたわ!はあっ、受付さま、この方も案内してもらえませんこと?」
受付「ええ、大丈夫ですよ」
ひら「やったー。」
アリア「まったく、先日から思っていましたけれど、あなたって時々やっていることが魔族のように非道ですわね」
ひら「……そうかもね」
受付のお姉さん、その後ろのアリアについて行き、『staff only』と書かれた扉の前で2人は止まった。お姉さんがぼそっと何かを_恐らくは魔法の詠唱を_唱えると、『staff only』の文字が『vip only』に変わった。
受付「ここからはおふたりのみが進めます。私はこれで」
アリア「ご苦労さま。」
ひら「ありがとう、?」
そしてアリアは扉の方に向き直ると、慣れた手つきで扉を開けた。
中を覗くと、半メートル程の地面がある先は螺旋階段がずっと続いているのが見える。
2人とも中に入り、扉が閉まるとアリアが傍に置いてあった空のランプに魔法で火をつけ進み始めた。
螺旋階段を降りながら、アリアが口を開く。
「貴方、私の行き先を知っておりますの?」
「知らないよ、でもあれは合言葉でしょ?」
「確かにそうですけれど……はあ、まあ見ればすぐに分かりますわ」
そこで会話は途切れた。カツン、カツンと足音だけが響く。
しばらくすると階段は終点を迎え、目の前では入ってきたのより数倍はある大きな扉が異様な存在感を放っていた。
「さあ、心の準備はよろしくて?」
「あぁ、うん」
翡羅の言葉を聞いてすぐ、アリアは扉の取っ手に手をかける。しかしそのまま引くのではなく、扉は勝手に開いた。
第一に目に入ったのは、光り輝く黄金の世界。
「ようこそ、わたくし達貴族のカジノへ」