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私は、ディートル侯爵家の屋敷に留まっていた。

ラフェシア様のご厚意によって、メルーナ嬢はこちらで保護してもらっている。そんな彼女を引き止めた者として、私もここにいるべきだと思ったのだ。


「つまり、リルティアは今回の件がアヴェルド殿下による暗殺だと思っているということなのね?」

「ええ、その可能性はあると思うんです」


私はラフェシア様とメルーナ嬢に、自分の推測を伝えてみた。

二人は、神妙な面持ちをしている。私の推測は、どう思われているのだろうか。そこまで間違ってはいないと思うのだが。


「まあ、確かにアヴェルド殿下にとって私やお父様は邪魔者なのかもしれません。ネメルナ嬢との婚約が決まったら、当然お父様はごねていたでしょうし……」

「まあ、三人いた令嬢の内一人が婚約なんてことになったら、他の二組の貴族達は快く思わないでしょうね」

「それで暗殺ですか……あり得ない話ではないように私も思います」


二人とも、私の推測を支持してくれてはいるようだった。

もっとも、それは今その推測を否定できる材料がないからだろう。それを確かめるための方法が、実の所ある。


「もしもアヴェルド殿下が今回の首謀者であるならば、ラウヴァット男爵やネメルナ嬢と同じ立場であるモルダン男爵やシャルメラ嬢も暗殺の対象になると思います」

「なるほど、それを確かめるためにあなたは、モルダン男爵家に関する情報を使用人達に探らせているのね?」

「ええ、そちらでも何かが起きていたら、私の推測は確実なものになると思うんです」

「まあ、仮に違ったとしても、メルーナはここに留まらせるべきでしょうね。しばらくは様子を見ておきたい所だわ」


ラフェシア様は、不安そうにため息をついていた。

その不安は、私がもたらしたものだ。ただ、これに関しては仕方ない。万が一ということもあり得る以上、ことは慎重に運んだ方が良いはずだ。

しかし気になるのは、メルーナ嬢のことである。彼女の方は、この対処についてどう思っているのだろうか。


「メルーナ嬢、すみませんね。引き止めてしまって……」

「ああいえ、大丈夫です。別にラウヴァット男爵家に、戻りたいとも思っていませんから」

「え?」

「お父様のことは、驚きました。でも実の所、少しだけですけれど、いい気味だって思っているんです。お父様は散々、私を利用していましたから」


メルーナ嬢は、ゆっくりとそう吐き捨てていた。

その言葉には、父親に対する怒りが籠っている。どうやら本当に、ラウヴァット男爵家に戻りたいと思っては、いないようだ。

ただそれは、ラウヴァット男爵家における彼女の立場を、悪くすることであるような気がする。その点は大丈夫なのだろうか。やはり少し心配である。




◇◇◇




ディートル侯爵家の屋敷で一夜を明かした訳だが、正直あまり眠ることはできなかった。

アヴェルド殿下の女性関係において、何かしらの陰謀が渦巻いている。その不安から、中々寝付けなかったのだ。

とはいえ、当事者として数えられているか怪しい私の不安など、そう大したものではない。メルーナ嬢などと比べると、些細なものだ。


「おはようございます、ラフェシア様、それにメルーナ嬢も」

「ええ、おはよう、リルティア」

「おはようございます、リルティア嬢」


私が食堂に赴くと、既にラフェシア様とメルーナ嬢がいた。

二人は、何やら神妙な面持ちをしている。そういった表情をしているということは、何か良くないことでもわかったのだろうか。


「ラフェシア様、何かありましたか?」

「使用人達が調べた結果、モルダン男爵とシャルメラ嬢のことがわかったわ」

「……二人に何かあったのですか?」

「ええ、亡くなったそうよ」

「……そうですか」


ラフェシア様の言葉に、私はゆっくりとため息をついた。

私の推測は、当たっていたということになるのだろうか。正直、まったく嬉しくはない。むしろ、頭が痛くなってくる。


「あなたの推測は、間違っていなかったみたいね……」

「ええ……ただ、昨日ずっと考えていたのですけれど、今回の首謀者はアヴェルド殿下とは限らないのかもしれません」

「それは、どういうこと?」

「オーバル子爵の可能性もあると思うんです」


私は二人に、考えていたことを話してみることにした。

アヴェルド殿下のことを考えて、私は改めて思ったのだ。彼に暗殺などという大それたことが、本当にできるのかと。

あの中途半端な小心者に、それができるとはあまり思えない。それなら、アヴェルド殿下と同じく、二家を邪魔に思うであろうオーバル子爵の方が、可能性が高いと思ったのだ。


「なるほど……どちらにしても、メルーナをラウヴァット男爵家に帰らせることは得策ではないわね。この子のことは、ディートル侯爵家が責任を持って守ってみせるわ」

「ラフェシア様、ありがとうございます。私なんかのために、そこまでしていただいて」

「気にする必要なんてないわ。私達は、友達なのだから」


ディートル侯爵家が守ってくれるなら、一先ず安心することはできそうだ。

侯爵家の守りをすり抜けて暗殺するなど、簡単なことではない。充分に警戒もされるだろうし、大丈夫そうだ。


「ラフェシア様、そういうことなら私は王城に向かおうと思います」

「王城に?」

「ええ、イルドラ殿下にメルーナ嬢から教えてもらったことを伝えます。そして彼に協力して、今回の件を終わらせます」


私がやるべきことは、決まっている。

アヴェルド殿下の身勝手から始まったこの件を、終わらせることだ。

それは最早、エリトン侯爵家の利益とかイルドラ殿下への義理とか、そういった問題ではない。私はこんなふざけたことをした者達に、心の底から罰を受けさせたいと思っているのだ。

せっかくの婚約ですが、王太子様には想い人がいらっしゃるそうなので身を引きます。

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