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《SNS・午前0時03分》
「直径220m、衝突確率15%。NASAもJAXAも知っている。
だが、誰も言わない。#地球終了まであと100日」
投稿後、30分。
リポスト数は10万を超えた。
午前3時には100万、夜明けには世界トレンド1位。
“#地球終了まであと100日”
“#オメガ”
“#NASA隠蔽”
誰もその投稿者がJAXAの技術職員・城ヶ崎悠真であることを知らない。
だが世界は、もう彼の存在を嗅ぎつけ始めていた。
《アメリカ・NASA/JPL・CNEOS(軌道解析)》
アンナ・ロウエル博士は、朝のニュースを見て固まった。
画面には日本語のタグが英訳されて流れていた。
“#100DaysUntilImpact”
「……誰が出したの、これ。」
部下が答える。
「Twitter経由の匿名投稿。内容は正確すぎます。
JAXA内部か、それとも政府リークか。」
アンナはすぐに電話を取った。
「JAXAの白鳥博士に繋いで。彼女なら何か知ってる。」
《日本・JAXA/ISAS 相模原キャンパス(軌道計算・惑星防衛)》
電話の着信音が鳴る。
白鳥レイナが出ると、アンナの声が聞こえた。
「あなたの部下? 誰かが出したのよ、軌道データを。」
白鳥は息を呑む。
「……悠真。」
「政府が動く前に、世界が動き出した。
“真実”はもうネットのものよ。」
白鳥は一瞬だけ目を閉じた。
「わかってる。けど、まだ確定してない。」
「確定なんて、いつだって“後づけ”よ。
でも人の恐怖は待ってくれない。」
通話が切れたあと、白鳥は深く椅子に沈み込んだ。
夜明け前の観測室が、どこまでも冷たかった。
《東京・記者クラブ》
社会部記者・桐生誠の携帯が震えた。
「来たぞ……“#地球終了まであと100日”。」
同僚が叫ぶ。
「これ、昨日の匿名メールと一致してる! 本物だ!」
桐生はすぐに原稿を書き始めた。
「政府筋はコメントを避けているが、複数の専門家によれば――」
デスクが止めに入る。
「まだ早い。公式発表が出てない。」
「でも、もうニュースは始まってる!
“ネットが先に報道した”んだ!」
上司は頭を抱える。
「お前、わかってんのか。
これは“情報の津波”だ。止められねぇぞ。」
《日本・総理官邸 危機管理センター》
鷹岡サクラは、モニターに映るトレンド画面を見つめていた。
#地球終了まであと100日
#NASA隠蔽
#JAXAリーク
「……出たのね。」
藤原が言う。
「SNSは完全に暴走。
“日本政府が隠した”という見出しが海外メディアでも拡散中です。」
黒川教授は焦ったように言った。
「誤報です! まだ確定していない! ただのデータ段階だ!」
中園広報官が静かに言う。
「でも、“誤報”だって人は信じません。
“政府が何も言わない”ことが、もう“証拠”になってる。」
サクラは立ち上がる。
「つまり、言葉を奪われたってことね。」
藤原が尋ねる。
「総理、どうされますか?」
「私たちの声で、取り戻すしかない。」
《東京都内・一般家庭》
テレビが一斉に臨時ニュースを流す。
「ネット上で“巨大隕石衝突説”が拡散しています。政府は公式発表を――」
母親がスマホを握りしめた。
「本当に落ちるの? 地球に?」
小学生の息子が不安そうに問う。
「ねぇ、お母さん。僕たち死んじゃうの?」
母親は言葉に詰まる。
ニュースのテロップには、“オメガの正体”という特集タイトル。
そしてスタジオの科学者が言った。
「“3%”が“15%”になったとすれば、もう“天文学的な偶然”ではありません。」
その声が、全国に響いた。
《東京郊外・廃教会》
白いローブをまとった女が、配信カメラの前に立つ。
天城セラ。
その目は深く、静かに光っていた。
「皆さん、恐れないで。
これは“終わり”じゃなく、“始まり”です。」
コメント欄が一瞬で埋まっていく。
〈セラ様戻ってきた!〉
〈これは神の試練?〉
〈祈れば助かるの?〉
セラは微笑む。
「“光は神の息吹”。
天が炎を降らせるとき、人は新しく生まれ変わるのです。」
数十万人がその映像を見ていた。
SNSではすぐにハッシュタグが並ぶ。
#光は神の息吹
#黎明の時が来た
《日本・総理官邸 夜》
官邸の電話が鳴り続けていた。
海外メディア、国内局、議員、抗議、市民。
全員が「真実を話せ」と叫んでいた。
サクラは深呼吸し、マイクを前に立つ。
「……私たちの国は、恐怖に飲まれない。
そして、科学を信じる。」
背後のスクリーンに“プラネタリーディフェンス地球防衛連絡本部”の設立ロゴが映る。
「明日、正式に記者会見を開きます。
“オメガ”とは何か。私たちは、どう戦うのか。
すべてを、私の口から伝えます。」
中園がそっと呟いた。
「総理、それで混乱が収まるとは限りません。」
「わかってる。
でも、“誰も知らないこと”が一番の地獄よ。」
窓の外には、カメラのフラッシュのような稲妻が走った。
それはまるで、夜空が一瞬だけ白く燃える“予告光”のようだった。
本作はフィクションであり、実在の団体・施設名は物語上の演出として登場します。実在の団体等が本作を推奨・保証するものではありません。
This is a work of fiction. Names of real organizations and facilities are used for realism only and do not imply endorsement.