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〈smile side〉
午後の授業は眠気に耐えながらも机にしがみついて、なんとか一日を終えた。
先生 「それじゃあ気をつけて帰るんだぞ」
ーーーさようなら
その挨拶でゾロゾロと生徒たちが教室から出て行き、ザワザワと騒がしくなってきた。
br 「みんな帰ろー」
sh 「昇降口混んでるから空き教室でちょっと暇つぶししてから行こーぜ」
kn 「ありだね」
nk 「せっかくだし棚に隠してあるお菓子食べちゃおうよ。湿気で萎れたりしたら最悪だし」
kr 「バレないようにな」
sm 「俺、トイレ掃除あるから先行ってて」
br 「よーし行くか」
kr 「、、、。」
校庭にはどんよりとした空気の色の中に鮮やかな雨具で彩られる。
そんな光景をただぼーっと眺めては掃除をしているふりをした。トイレ掃除は別に当番が決まってるわけじゃないんだけど、ここにいると落ち着くから一日のルーティーンとしてくるようになった。
先生も褒めてくれるわけじゃないし、共に時間を過ごすクラスメイトはいないけれど、それがいい。
この小さな個室が数個はある程度の広さでひとりの時間を味わう
sm 「七不思議ね。ほんとに存在するのか?」
噂はいつもなかむが中心に仕入れてきて、そこから聞く話しか知らないから他に何があるのかわからない。
世間で有名なのは、理科室の人形が動くとか?トイレの花子さんとか。
ここ、女子トイレじゃないけどできるかな
sm 「もしかしたらいるのかもしれない、トイレの花子さん。」
トイレのノックは二回。やってみるしか、
ギュッ
sm 「っ!?」
sm 「びっくりしたぁ、なんだよ」
sm 「きりやん。」
kr 「ノックしちゃダメだ。」
sm 「バレたか。でも別に良くない?」
kr 「みんな噂だからって甘く見てるけど危ないんだよ?絶対ダメ」
、、、、いつもこうだ。
みんなっていうけれど彼はいつも俺の心配ばかりする。なかむやきんとき、ぶるーくやシャークんへの気配りももちろんしているけど、俺にはわかる。
俺への過保護は尋常じゃない。
今日もこうしてみんなとの団欒の時間よりも俺の元へ来る
sm 「なんで、そんなに心配すんの」ボソッ
kr 「え?」
sm 「いや、、みんなは?」
kr 「雨強くなる前に先帰るって、俺は車で迎えが来るから」
kr 「俺ももう帰るけど乗ってく?」
sm 「いや勉強してから帰る」
kr 「今日も?」
kr 「程々にしろよ〜」
そう言いながら背を向けた手を振る彼を見送った。
…………………………………………………*
〈nakamu side〉
電車の中での他者の会話、駅のホームですれ違う人の会話、クラスメイトが話す会話。
溢れる情報量の中で興味のある話題に耳を覚ましては記憶するのが得意だった。
「ねぇ、知ってる?白尾学園の七不思議」
お?白尾学園といえばうちの学園だ。
古き良き文化を重んじ、近くに山があり自然豊かでのびのびと学力と体力の向上を図る。我ながら素敵な場所に入学したと思っているが、そんな学校に七不思議?
単なる噂にしても、真実にしても、なんにしろ興味深い。
そこから俺の探究心が芽生える
情報を手に入れてはみんなに共有をして本当か否かの話をする。ただそれだけ
初めは話を聞くだけで満足していた。
だってただの噂だし。所詮何かの言い伝えや伝承、または本の世界にしか起きないフィクションにすぎないと思っていた
しかし今回は別だ。
この学園の、しかも同じ学年の生徒が被害にあっている。それに七不思議が関連していようがいまいが、行方不明というところが妙に引っかかる。
実際旧校舎の中を目にしたのは入学式の校舎案内に立ち入り禁止になっていますという説明と列の中で背伸びをしてのぞいたあの隙間の景色だけ。
そこで今、一体どんなことがあったのかを想像するだけでも楽しいが、この目で見てみたいという好奇心も湧く。
いやぁ、でもきっときりやんが許さないな
きりやんはとにかくそういったことに敏感で厳しい。多分俺たちの中で唯一霊感があるのだと思う
傘にぽつんぽつんという振動とコンクリートとなんともいえない雨の匂いが飽々としてきたこの頃。
nk 「ねぇ、明日旧校舎覗きに行かない?」
sh 「マジで言ってる?あの話聞いたばっかじゃん」
nk 「覗くだけだよ覗くだけ。だって気になるくない?」
br 「でも僕もぶっちゃけ気になってはいるんだよね」
kn 「行方不明ってなんだろうね。不登校になったとかならまだわかるけど」
nk 「それも引っかかるよな。」
sh 「スマイルときりやんはどうする?今ここにいないけど、」
nk 「きりやんは絶対ダメっていうだろうから俺たちで行こう。スマイルは明日誘ってみるか」
旧校舎東玄関前。雨がしとしとと屋根に叩きつけられる音はいつもよりも激しく、ほんの少し開いたドアには隙間風が吹いている
空の暗さとドアから見える中の闇に、風のおどろおどろしい音が相まって背筋が伸びる感覚がした
ギィィッ
錆びて重々しい扉をひらけば皆が脚をすくませた
nk 「なに、これ」
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