テラーノベル
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合格の知らせから数日後。
僕は、都内にある事務所の会議室の前で止まった。 手に持ったカバンが、手のひらの汗で湿ってい る。
『 今日から、此処が僕の居場所になるんだ 』
そう自分に言い聞かせた。息を深く吸い込んで、重圧な扉をノックする。
『 失礼します。今日からM!LKの新メンバーとして加入することになりました、吉田仁人です! よろしくお願いします! 』
練習した通りの台詞、声の大きさ。
「 ….. ふーん 」
広いソファに腰掛けた4人の視線が一斉に注がれた。カメラの前で見せる笑顔とは似ても似つかない、凍りつくような視線だった。
「 … 此奴が、新しい駒? 」
返ってきたのは、想像していた温かい拍手でも、歓迎の言葉でもなかった。
「 言っとくけど、俺らお前のこと認めてないから 」
そこからは地獄の日々が続いた。
. . .
『 … おはようございます 』
震える声で楽屋のドアを開けた。返ってくるのは、冷え切った沈黙と鋭い視線。
M!LKの新メンバーとして加入した僕、吉田仁人を待っていたのは夢に見たキラキラした世界じゃなく、拒絶という名の壁だった。
「 ねぇ、そこ邪魔なんだけど 」
「 いつまで突っ立てんの? 」
挨拶は無視され、ダンスのフォーメンションをわざと間違えて僕のせいにされる。故意でぶつかられたり、僕だけ食事に誘われなかったこともあった。これならまだ、あの時の方が楽しかった。こんな裏の世界なんて知りたくない。
. . .
『 …… 何これ 』
加入してから数ヶ月経ったある日。 楽屋の隅に置かれた僕のリュックは、中身がぶちまけられ、お気に入りの台本は水で濡れていた。
「 新人なんだから、これくらいで凹むなよ 」
誰かが鼻で笑った。
僕は水で濡れた台本を握りしめた。悔しくて、情けなくて、涙が出そうになった。でも、ここで泣いたら彼らの思うツボだ。
『 見てろよ … 』
そう喉の奥で呟いた。僕は「 お荷物 」で終わるつもりなんて、サラサラない。
『 いつか、必ずこの人達に認めさせてやる 』
そう心に誓い、僕の地獄のような努力が始まった。
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