中野 菜乃/教室
いつもと同じ日常。なんにも変わらない。つまらない。
そう思っていた。時計に目を向ける。まだ、休む時間がある。
全く時間が進んでなく、止まっているのかと思った。
また、別の場所に目を向ける。すると、私の目はそこから離れなかった。
まるで、目を動かしてはいけないと言われてるようだった。
私は、目を釘付けにされたところへ行く。
自分の行動に驚いた。まるで、勝手に動いたように行ったからだ。
そして、勇気を出し声をかけた。
「ねぇ…」
そして、振り向いた子は氷のように冷たい目、整った顔立ちをしていた。
心臓が飛び跳ねた。いや、一目惚れなんかじゃない…多分…
「何?」
彼女がそう言った。私は、別にとか誤魔化してはいけないと感じた。
だから、
「気になったの。ねぇ、一緒に話そうよ」
と言った。できるだけ明るい声で。
疑ってほしくない。バカにしてると、疑ってほしくない。
彼女は、うろたえているようで、言葉を返すことはなかった。
わかる。すんごいわかる。そりゃ急に話しかけられたら、戸惑うよな。
なら、私から話しかければいい。
「あっ、うちの名前な、菜乃っていうの。なっちゃんとかいろんな呼び方で呼んでよ。」
良かった。言えた。でも、急すぎたか?急すぎとしても、この瞬間を逃すわけには行かないのだ。そして、彼女の口が開いた。怖かったが、不安が顔に出ないよう笑顔の仮面をつける。
「わ、私は真琴」
口が開いて、声がかえってきたのが嬉しかった。
あの、嫌な感じじゃなくて良かった。ホッとした。
「真琴って言うんだ!じゃぁ、うーん」
私は唸る。どんなのがいいか。考えて、考えて、考えて、私は言う。
「まこっちやな」
真琴は、うん!と少し大きな声で言った。真っ赤になった顔を見ると、私もさらに大きな声でうん!と返した。そのせいだろう。周りの視線を感じる。でも、あの頃とは違う。私の体を刺すような視線ではない。このクラスは、あの頃とは違うだろ。もう知っているではないか。でも、まだこのクラスは安心できない。いや、考えてる場合じゃない。私は、真琴と喋っているんだ。彼女は笑顔だった。でも、少し不安なのだろう。私は、人の表情を読み事が得意だ。でも、わからないときもあるのだが。
私は、真琴ともっと仲良くなって本音を話し合えるようになったらいいな。なんて、思った。本当にそうなったら、昔のことを話そう。私は、隠し事をして人と付き合うのが嫌なんだ。この苦しさや辛さは、充分味わったから。そしてチャイムがなる。
話す時間が終わったのが、惜しく感じだ。今度は、彼女から
「ありがとう」と声をかけてくれた。嬉しくて、思わず仮面ではない笑顔を顔に出していた。でも、仮面が割れな音はしなかったー
私は、席へ戻った。明日も、話せればいいな。