テラーノベル
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午後六時。参加者は夕食の席に集まる。慶迅の胸の内を聞いている月呼は、今一度彼と依榛の様子を観察してみた。そう言われてみると、彼はパートナーのことばかり気にかけている。しかも、相手の依榛もまんざらでもなさそうだ。
「野利彦! これ、あげる!」
食事中、くるるは野利彦に自分の分のおかずを渡す。レムリア・ゲームが開始してから、くるるはこういうことがよくある。今回は漬け物をあげていた。くるるは食べ物の好き嫌いが多いのかもしれないと、月呼は感じている。
「皆さん、ここの食事で自分の好きな食べ物は出ましたか?」
慶迅が他の参加者に聞いた。
「僕の好物はお茶漬けです。お茶漬けのもとがキッチンルームにあるので、食事でのストレスを感じずにすんでいます」
言い出した自分から、という具合に話す。
「私はみかんが好き」
慶迅の次に依榛が口を開く。
「俺は焼き肉」
野利彦が告げる。
「あたしはみたらし団子がこの世の食べ物でいちばん好き」
くるるはけだるそうにものを言う。
「私はシャンポリオンのシュークリームです。この島だと、食べられそうにないかな」
月呼は次にしゃべるであろう侑加をちらっと見た。
「俺は――前沙さんが作ってくれたホットケーキ」
侑加がそう言うと、くるるが大笑いする。依榛もつられて笑いだした。
「『前沙さんが作ってくれたホットケーキ』だって。仙敷さんってば、かわいい!」
くるるはそれがよっぽどおもしろかったようだ。まだ笑っている。
「それって、このゲームがはじまってから好きになったってこと?」
依榛が聞いた。侑加は首をたてに振る。
「侑加くん、この島に来るまで好きな食べ物がなかったみたいなんです」
月呼は補足説明した。
「……十九歳まで好きな食べ物がなかった人間なんて、この世にいるんですかね」
慶迅がぼそっと言う。慶迅は時々言葉にとげがある。自分より美しい男に嫉妬し、排除したいと思うのは男の性か。純朴なふりをしているに決まっている、という風な視線だ。
「……」
月呼は慶迅の素朴な疑問に不安をおぼえる。侑加はこのゲームの期間中に自分になにか料理を作ってもらうつもりだった。そして、その手料理を絶賛。それがはじめてできた自分の好物というシナリオ。疑いの目を向けると、そういう風にだって考えられる。
「あいつが皆に好きな食べ物を言わせるから、みたらし団子が食べたくなったじゃないの! ああ、もう!」
くるるは慶迅にたいして相当イライラとしていた。月呼は考えすぎか、と、くるるの暴言に気持ちの明るさを取り戻す。
コメント
1件
うわあ…!第34話読み終わったよ🌸 くるるが野利彦におかずあげるところ、もうほっこりしすぎでしょ🥺💕 侑加くんの「前沙さんが作ったホットケーキ」発言には思わずにっこりしちゃったよ〜!!あれ、普通にめっちゃキュンするやつじゃない!? でも慶迅のとげある言葉がちょっと気になるね…。「純朴なふりしてる」って、侑加くんに対して疑いの目なのかな?月呼ちゃんが「考えすぎか」って切り替えるシーン、読んでてほっとしたよ。 みんなの好きな食べ物聞くだけでキャラの個性が伝わってくる良い回だった✨
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