テラーノベル
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その後、ヨハンナ含め、全員でテーブルに並べられた豪華な食事を食べる。
「あ~美味かった。ギデオンにはない料理ばっかだったぜ」
ジャガーは膨らんだ自分の腹を撫でる。
「トリスタンにもないものだった」
ナプキンで優雅に口元を拭くソニア。
「トリスタンは焼くか煮るかしかしねーだろ」
「工業アルコールで、舌が焼けてるギデオンの人間に言われたくない」
「んだと腐ったチーズありがたがって食ってる連中がよ!」
「あれはブルーチーズと言う貴重なものだ!」
「嘘だろ、カビを貴重がってんのかよ!?」
ガヤガヤと楽しい食事が過ぎていくと、ママ上がふと首を傾げる。
「アクアレムのセレーネちゃんはいないのかしら?」
すると俺含め、ジャガーとソニアは複雑な表情を浮かべる。
俺は軽く状況を説明する。
「アクアレムは、今かなりゴタついててね」
「そうなの?」
「リガルドと仲良くしたい王女派と、協力したくないオクタス率いる騎士派が分裂しちゃってるんだよ」
側で控えている爺やが補足を入れてくれる。
「現在騎士派が優勢で、ガレス神聖国のように革命起こされて、最悪王族が排除される可能性があるとも聞きました」
ソニアも脚と腕を組み、険しい表情を浮かべる。
「アクアレムは世界屈指のヒーラー国、戦争が多いリガルドを受け入れられないものが多い」
ジャガーも眉を寄せて、原因を話す。
「アクアレムは、リガルドと協力するメリットがふわっとしてんだよな。ギデオンのコアメタルや、トリスタンの遺物みたいに、協力すれば手に入るってものがない」
「いや、なくはなかったんだよ。実際ダークラインの第2区と第3区の間に、大きな水路があって、ここを自由に使えるようになれば、アクアレムはリガルドに交易路を繋げられた」
一応俺も、ダークライン攻略を手伝ってくれれば、そのメリットをアクアレムに渡すつもりだったのだ。
それをあのタコ騎士が、リガルドは何を考えているかわからない、そんな餌に釣られない。みたいなこと言いやがって。
「まぁあの騎士派からすると、繋げたくないと思ってたかもだけどな」
「大体、あのタコ騎士なんなんだ? 魔獣防衛会議にも口出してたし」
ヨハンナが、セレーネの背後霊みたいにずっとついて回っていたオクタスのことを尋ねる。
「騎士兼摂政って奴だな。アクアレムの王は、体調悪くてちゃんと政治が行えないみたいで、セレーネも経験がほとんどない。王族にかわって政治をしてくれる人」
「でもあのタコ、かなり思想入ってないか? あたし的には、あのグローリーって野郎に共感してるやつは、全員やばい奴って気がするんだが」
ヨハンナの意見に、何も言い返すことが出来なかった。
◆
その頃、アクアレム王宮ではガレス共和国代表グローリー、王女セレーネ、騎士オクタスの三人による会合が行われていた。
円卓につくセレーネの顔には、長い会議で疲れの色が見えた。
「ですから、私は何度も同盟破棄の話を――」
「姫様、なぜそのようなことをおっしゃられるのです。リガルド帝国に対抗するには、ガレス共和国との同盟が必須です」
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「オクタス、なぜあなたはリガルドと事を構えることを前提で話をするのです。彼らは魔獣ではなく、対話を行える人なのですよ?」
「姫様は、奴らの恐ろしさがわかってらっしゃらないのです」
「ギデオンやトリスタンは、リガルドとの和解の道を進みました。我々も――」
「いけません。リガルドと和解するということは、奴らと同類にみなされるということです」
オクタスの話に、グローリーは付け加える。
「考えて欲しい、セレーネ王女。あの国は、あれだけ経済が発展しているのに、未だに奴隷制度を採用しているのです。リガルドの奴隷に人権はなく、子供が貴族の遊び半分に殺されると聞きます」
「それは……あくまで噂であって」
「火のないところに煙はたちません。幼い命が自由を与えられないまま囚われているなんて、あっていいことではありません。リガルドに賛同するということは、即ち奴隷制度に賛成ということになるのです」
「それは話が飛躍しすぎています。そういった制度が存在することに対して、批判の声があってもいいとは思いますが、協力関係を結んでいる国まで同じ思想と思われるのはおかしいです」
「考えて下さいセレーネ王女、もしリガルドが突然襲ってきた時を。協力関係を結んでしまえば、アクアレムはあっさりと制圧され、植民地化されることでしょう。民が奴隷化されてしまうのですよ?」
セレーネは2対1で、リガルドは悪であると結論ありきの説得をされ続けて、苛立ちすら感じ始めていた。
「だからなぜ戦争を前提で話されているのです。もしリガルド帝国がおかしなことをすれば、各国で協力し――」
「その時他国が助けてくれると思いますか? 一度リガルド派と思われれば、小国はまず助けてくれませんよ。それにここだけの話ですが……」
グローリーは声をひそめて言う。
「帝国が保有する聖剣、あれには過去の厄災で現れた悪竜、”ニーズヘッグ”が封印されているのです。奴らは封印を解き、厄災を再現しようとしているのですよ」
「!」
その話は知らなかった為、セレーネは目を見開き驚く。
「ダークラインで現れたゴーレム、あれは間違いなく聖剣の力でしょう。リガルドは、あれほど強力な聖剣を複数本所持しているのです」
「…………」
「禁じられた魔導兵器を所持しているのと同義。想像して下さい、あの巨大なゴーレムが列を成して襲いかかってくる光景を。世界をいとも簡単に、火の海に沈めることが可能なのですよ」
「聖剣のリスクについては承知致しました。ですが、ラウル王子の人となりからして、そのような恐ろしい事を企てているとは到底思えません」
グローリーとオクタスは、ダメだこれはと言いたげに肩を竦める。
「姫様は、ラウル王子に肩入れしすぎているのです。あの男の事をなにもわかっていない」
「オクタス、ではあなたに逆に聞きますが、ダークラインで孤立した4国同盟を救い、崩壊しかかった防壁を守るため、己を盾にして戦った勇敢なる王子の何がわかると言うのです?」
「そ、それは……我々を信用させるための」
「我々を信用させるためだけなら、あそこまで体を張る必要はありません。ギデオンもトリスタンも、彼を信用したからこそ国交を改善し、上手くいっているのでしょう?」
オクタスは、「姫様はラウル王子に惹かれてらっしゃる」と、恋に絆されたバカ娘を見る目をする。
これには彼女もカチンとくる。
「私は自身の感情で政治を誤るようなことはしません。今一度アクアレムの立ち位置をはっきりさせます。アクアレムはガレス共和国との同盟関係を破棄、リガルド帝国との交易再開について協議を開始。またダークラインについても、兵を派遣致します」
セレーネが毅然とした態度で言い切ると、オクタスとグローリーは深くため息をついて首を振る。
「仕方あるまい。騎士よ、セレーネ王女を拘束せよ」
「なっ!?」
オクタスの命令を聞いて、騎士が彼女の後ろに立つ。
「どういうつもりです、オクタス?」
オクタスは背筋を伸ばし、冷静な目で王女を見つめる。
「セレーネ王女、あなたはリガルド帝国に傾倒しすぎています」
「違います、あなたが不必要なまでに帝国を恐れているのです!」
セレーネは声を荒げるが、オクタスは淡々と続ける。
「ダークラインへの派兵、これは王女が意図的に国民を戦いに巻き込もうとしています」
「……魔獣防衛会議への出席を求めたのは、あなたでしょう? 自分の思った通り事が運ばなかったから、このようなことを」
「言い訳は不要です!」
オクタスは都合の悪いことは大声でかき消す。
「今のあなたは、王女としての責務を果たしているとは、とても言えません」
オクタスは言葉を切り、静かに宣言した。
「本日をもって、セレーネ王女には玉座から退いて頂きます」
広間が、張り詰めた空気に包まれた。
「……」
セレーネは震える唇を噛む。
この手際の良さ。最初から自分が望む回答を言わなければ、クーデターを起こすつもりだったとしか思えない。
そこで目立つのはガレス神聖国にクーデターを仕掛け、成功させたグローリー。オクタスと彼が、裏で繋がっていたことは想像に容易い。
「あなたは……はなからガレスと組んで」
「私は、アクアレムを戦争に巻き込ませない。私は私の信念に従って、この国を守ります」
騎士からセレーネの手首に手枷がはめられる。
「あなたの身柄は、国家の安定のため、幽閉させていただきます」
騎士に連れて行かれる王女の背中を見送る、オクタスの口端には笑みが浮かんでいた。
コメント
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うわっ、クーデター来た……! オクタスとグローリーが最初から組んでた感じ、読んでてすごくもどかしかったです。セレーネが正論で抗っても「恋に絆されたバカ娘」扱いされるの、政治に真摯な人が報われない構図が辛い……。最後のオクタスの口元の笑み、めちゃくちゃ不気味でした。アクアレムがどうなっていくのか、これは目が離せませんね。