テラーノベル
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私立天成中学校への完全復讐、報復に来た半グレグループの壊滅から三日が経過。
あれからシュートは現実世界では何もしていない。日夜ゲームで遊んだり以前錬成した金塊を金品に作り変えて売って金にしたりなど、自堕落な日々を過ごしていた。
地元の公立中学校へ転校する為の最終手続きには未だに行ってはおらず、完全に放置している。
「もう学校なんかに行く必要も価値も無いしなぁ。あんな…偽善と差別ばかりで教育者を騙る汚い大人どもと、クラスという狭い箱の中でカースト上位になったくらいで自分が偉いと勘違いしている低能で馬鹿な同年代の奴らが蔓延ってるばかりの、糞の掃きだめのような施設なんかに、どうして今さら通わなきゃいけねーんだよ。馬鹿らしい。
そんなところへ通うくらいなら、異世界で冒険してる方がよっぽど有意義だってのーっと」
今日もテレビ画面に映っているゲームキャラを凝視してコントローラーを器用に操作しながら、シュートはこれでもかというくらいに学校を悪し様に語る。事情を知らない人達が今のシュートを見れば、引きこもりの少年だと誰もがそう判断するであろう。
(親父と母さんが帰ってきて、二人に学校行けって言われたら、転校手続きに行こうか。それまでの間、この現代の世界ではこうやって自堕落に生きていこう)
そうして今日もゲーム漬けの一日になろうとしていた、昼過ぎのことだった。
インターホンモニターからインターホン音が鳴り響く。平日の昼間に訪問者など珍しいな、とシュートはセールス系の何かか宅配かが来たのかと予想する。
宅配業者じゃない人間が映ってたら居留守してやろうと思いながらモニターに映っている人物を確認すると、意外過ぎる訪問者にシュートは思わず目を見開く。
(………居留守してやるのも良いけど、わざわざ来たんだ、相手してやろう。ゲームの休憩がてらの暇つぶしにしてやろう)
そう決めるとゆったりとした足取りで玄関へ移動し、扉を開けて訪問者を迎える。
「これはこれは。宅配業者とかどこぞのセールスとかが来たのかと思えば、予想外の訪問者じゃねーか」
「……………」
シュートの家に訪れてきたのは、天成中学の生徒…シュートと同じクラスで委員長を務めている少女、花宮紅実である。
「俺、お前に家の住所教えたっけ?」
「……今年、同じクラスになったばかりの頃、シュート君が自分の家がこの地域にあるってそれとなく教えてくれて…それで、ここに来てからご近所さん方に聞いて回って、こうして訪ねることが出来たんだ」
一学期初期の俺よ何余計なこと喋ってんだよ…とシュートは内心で過去の自分を罵る。それからすぐ気を取り直して、険を帯びた目つきで紅実を見据えながら用件を尋ねる。
「何の用でここに来やがった?」
「シュート君が……あれからどうしてるのかが、心配してるのと、君とちゃんと話がしたいと思って………」
「心配?お前が俺を?虐めを知ってて放置してた薄情な女が、退学して縁も何も無くなってただの他人になったはずの俺を、心配してるって言うんだー?」
「………!」
シュートは周りに聞こえるようわざと大きな声でそう言う。紅実は分かりやすいくらいに動揺して俯いてしまい、外にいる近所の主婦らしき女性や子供たちがシュートたちに目を向ける。
「ねぇ、あの制服って…」「例の名門私立中学の…」「“SHOT”君が虐められていたのを、クラス全員で知らないフリしてたんですって…」「いくら未成年でもやってはいけないことくらい分かるでしょ…」「ああいう子たちの親ってどういう育て方してたのかしらね…」「うわ、あたしさっきあの子から三ツ木さんの家尋ねられて思わず答えてしまったわ…。制服であの学校の子って気付いてれば……」
周りから棘のある小言を受けた紅実の顔がみるみる青くざめていく。そんな彼女をシュートは少し面白そうに見てから、
「皆さーん、彼女は虐めをどうにかしようとしていた数少ない善人の一人なんです。だからあまり悪く言ってやらないでください!」
シュートの気安い発言を聞いた住民たちはそうなんだ…と納得した様子でシュートたちへの興味を失せていった。
「シュート君……どうして私を?」
「一応事実だろ?まぁお前が何もできない弱い奴だったから本当にどうにもしてはくれなかったけど」
「………庇ってくれて、ありがとう」
「別に。それより、心配しに来た他に、ちゃんと話したいとかも言ってたな?」
「うん……。あの日…シュート君が最後に登校した時も、その前の時もちゃんと話し合えてなかったから」
「何の為にお前と話し合いなんかしなきゃならねぇんだよ?」
「虐めを止めさせられなかったことの謝罪がしたいのがまず一つ。それと、君に知らせたいこともあるんだ」
「謝罪はクソどうでもいいけど、知らせたいことってのは気になるな?
まぁ最近暇してたから、時間潰しに付き合ってやるよ。あがれよ」
「……!あ、ありがとう」
暗い表情から一転、紅実は明るい顔つきで嬉しそうに微笑む。シュートはそんな紅実に何も言わずに玄関の奥へ歩いていく。
一方の紅実は緊張と高揚で胸をドキドキさせていた。同じ年頃の異性の家に上がることは今まで一度も無かった為、初めての経験に浮足立っていた。普段はどんなことにもなるべく平静でいられる紅実だったが、気になっている異性の自宅にお邪魔することには動じずにいられなかった。
紅実をリビングへ案内しようとするシュートだったが、途中ふと思いついたことを尋ねることにする。
「俺ん家にはさ、地下室があるんだけど、そこから変な音が聞こえることがあるんだけど。今も少し聞こえてるんだけど、花宮はこの音聞こえる?」
それは地下室に存在する黒い渦巻きを、紅実が認知出来るかどうかの検証だった。何も知らない紅実には今のシュートの発言が少しホラーっぽく思えて、少し怖がる反応を見せる。どうなんだとシュートに問われると紅実は戸惑った様子で、「何も聞こえない」と答えた。
(家族以外の誰かにも音が聞こえない…。なら渦巻きも見えないだろうな。これで俺にしか渦巻きを認知できないってことが確定したな)
一つの事実を確認したことに内心満足したシュートは紅実をリビングへ移動させて座らせる。シュートが飲み物の準備をしている間、紅実は家の中を興味深そうにきょろきょろ見回す。気になる異性の家の中がどういう様相なのか、気にせずにはいられない様子だ。
シュートが用意したお茶を一口飲んだ後、紅実はこんなことを頼んでみる。
「その……シュート君の部屋、見せてくれないかな?そこで話が出来れば……」
「は?嫌に決まってんだろ。調子に乗ってんじゃねぇよ」
「す、すまない……」
こいつは何浮かれてるんだ、とシュートは少しうんざりした気持ちになる。
「というかお前…というかお前ら2のAの連中さ、先日学校に押しかけて来た暴徒たちに襲われたそうじゃねーか。お前はもう大丈夫そうだけど、他の奴らはどうなったよ?」
学校の人間がどうなったのかは、シュートはテレビのニュースでしか知らない。当事者の紅実に詳しく聞いておこうと思い、尋ねると紅実は悲痛な面持ちを見せて答えはじめる。
「みんな……パニックを起こしていた。私も怖い気持ちはあった。何人かは暴徒たちの暴力に巻き込まれてしまった。
暴徒たちは皆、私たちを酷く罵ってきた。虐めの件で私たちが悪だとかゴミだとかと断定して、裁きを下してやるなど口にして……本当に狂いそうになるほどの惨劇だった。
確かに私たちは虐めを放置していた最低なクラスだった。だからといって黙って暴力に晒される気もなくて、私は護身術で友達を必死に守った。
警察隊が駆けつけてくれたお陰で私たちにそこまでの被害は出なかったけど、みんな心に深い傷を負ったと思う……」
「そうかそうか、あいつら深く傷ついたのか!暴徒たちには感謝しないとなー!」
嬉しそうに笑うシュートに紅実は憤りの感情が湧くが何も言わずにいた。自分には彼に怒る資格など無いことくらい分かっていた。
「じゃあ、お前が俺に知らせたいことを聞かせてもらおうじゃねーか」
シュートはテーブルをトントンと叩きながら紅実に話を促す。紅実は小さく頷いてから話を始める。
「中里大企業はもちろん知ってるよね。私たちのクラスにいる中里優太はその大企業の会長の息子だってことも」
(私たちって……俺はお前らのクラスメイトじゃねーって)
「三ツ木君が例の…“SHOT”としてのあの生配信で、学校の虐めや先生たちがどういう人間なのかについての真実を告発したことで、中里大企業も世間から手ひどく非難を受けていたんだ」
(あ、こいつもSHOTが俺だってこと分かってんのね。とはいえここは……)
「おい、何俺があのSHOTだって勝手に決めつけてんだよ。俺はSHOTじゃねぇ」
菫の時と同じように、シュートは自分がSHOTであることを否認した。
「え……そ、そうなのか?」
「そうだ(大嘘)。勝手に決めつけんな」
「ご、ごめん……」
「で、話続けろよ」
「分かった……それで、大バッシングから逃れる為だと思うけど、会長…中里君の父親は天成中学校への出資を止めて、無関係を通そうとしたけど、彼は今も世間から非難されまくっている。もちろん中里君本人にも罵詈雑言を毎日浴びせられているそうだ。大炎上のせいで、大企業の信用は日に日に落ちていって、凋落の一途をたどっているそうだ」
狙い通りに堕ちていってるなぁ、とシュートはほくそ笑んでみせる。
「というか、詳しいな?お前が大企業の事情を知ってるなんて」
「私のお父さんが、中里大企業の会社に勤めているから…それも、会長の直接の部下にあたる地位にいるから」
「そういうことだったのか。となると前から予想していた通り、お前は…お前と中里の親同士の関係を強請として利用しやがったあのクズ野郎にずっと脅されてたんだな。
だから俺が虐められていても、中里どもには全く強く出ることができなかった。どうせ“俺たちの邪魔をしたらお前の親をクビするよう親父に言いつけるぞ”…とか何とか言われてたんだろ。
お前はそのせいで、中途半端な正義気取りの傍観者にならざるを得なかったってわけだ」
「そ、そういうことに……なる」
まぁ薄々分かってたけどね、とシュートは深いため息を吐く。
「あー、話の腰折って悪かった。続き話して」
顔色を少し悪くさせながら、紅実は続きを話す。
「大バッシングを受ける原因となったSHOTの生配信なんだけど。シュート君が違うと主張しても、中里会長は君がSHOTであると決めつけている。彼らはシュート君のことを強く恨んでいる」
「勝手に決めつけた挙句逆恨みかよ、下らねぇ。親がそんなだから子どももクソ野郎に育ったんだな」
鼻で笑いながらシュートは中里大企業について少し考える。中里優太への復讐を終えた気でいたシュートだが、心の底では物足りないと叫んでいた。かといって中里本人を痛めつけることにも少々飽きてもいた。
どのようにして彼にもっと地獄を味わせてやろうかと思案したところで、紅実が心配そうな表情で忠告をする。
「だから、気を付けて欲しい…!あの会長は何をしてくるか分からない。シュート君だけじゃない、君のご両親にも危害が及ぶかもしれない……!」
「(そういえば親父もそんな予感がしてるって言ってたなー)忠告どうも。それがお前が知らせたいことで良いんだよな」
紅実は小さく頷いて肯定する。ここまで自分のことを気にかけてくれる同年代の他人は初めてかもな、とシュートはぼんやりと考える。
「最近、シュート君はどう過ごしているんだ?」
羽海汐遠
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カイガ
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#せんせぇ
コメント
1件
うわ、紅実ちゃんがまさか家まで来るなんてね…!シュートの相変わらずの毒舌とツンデレっぷりが炸裂してて、でも最後の方でしっかり紅実の事情を受け止めてたのがなんかグッときたよ。中里会長が父親に危害を加えるかもって忠告、この先どうなるんだろう…次がすごく気になる!