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残る問題は一つだけ。
祝宴が続く中、アルフォンス様は緊急議会を招集した。
それに私とレティ、カール上皇陛下も参加する。
議事堂内には拡声魔術に加え、大陸中にこの様子を中継する映像魔術も用いられている。
当然、結婚式の招待客にも内容が伝わる事になっていた。
いきなり招集されてざわついている貴族たちを前に、アルフォンス様は朗々とした声で告げた。
「昨晩、長年帝国の空を支配していた雲が晴れた事は、諸君も知っているだろう。加えて、帝都に住まう者なら、この帝国の存在を左右してきた魔石の存在も知っていると思う」
そこまで言い、アルフォンス様は私を示した。
「長きにわたり、帝国の空を奪い、皇帝を苦しめ続けてきた魔王の呪いは、シャレット聖王国の第二王女フェリシテ殿下が解いた」
それを聞き、議事堂内がざわつく。
「聖女ではないのか?」
「レティシア様の間違いだろう」
予想通りの反応がするなか、レティがスッと手を挙げて発言の許可を求める。
「今回、特別に参加を許可したレティシア王女に、説明してもらう」
アルフォンス様に言われ、彼女は起立して話し始めた。
「陛下から魔石の呪いを聞いた私は、聖女として問題解決に取り組みました。ですが魔王の力に対抗できず、逆に魔石に魅入られてしまいました。そんな中、私たちを救ってくれたのは妹のフェリシテです。彼女は感覚魔術という素晴らしい能力で、誰も傷つける事のできなかった魔石を見事粉砕しました」
堂々と発言するレティは、聖女の威厳を遺憾なく発揮している。
次に上皇陛下が起立し、話し始める。
「私は父から指輪を受け継ぎ、十七年間皇帝を務めてきた。そして皆も知っている通り、魔石の影響を受けて次第に人格を変えていった。本意ではない事を口走り、大切な子供たちにも忠臣にも、心ない言葉を浴びせてしまった」
カール様の苦悩をよく知る上皇派の貴族たちは、グスッと洟を啜り涙を流す。
皆、賢帝としての彼をずっと求めてきたのだ。
魔石が破壊されるなんて思っていなかったから、もう一度昔のカール様を見られるなんて、思ってもみなかっただろう。
「私がレティシア王女をアルフォンスの妻にと願ったのは、私欲ゆえだ。かつての私は聖女を私物化し、帝国の威光の一つとなればいいと思っていた。……しかし、アルフォンスが愛したのは妹のフェリシテ王女だ。彼女は周囲から王女らしからぬ扱いを受けながらも、誰の事も恨まず、健気に生きてきた。そして彼女は帝国と大切な人のため、見事魔石を砕いてくれた。フェリシテ王女は聖なる加護を持たない姫君だが、感覚魔術という素晴らしい神からのギフトで帝国を救ってくれた」
みんな、真剣な表情で上皇陛下の発言を聞いていた。
「私はフェリシテ王女こそ、皇妃に相応しいと思う」
けれどその言葉を聞き、貴族たちはどよめく。
アルフォンス様はみんなが静まるのを待ったあと、再度話し始めた。
「結婚式を挙げる前日、レティシア王女は魔石を破壊する役目に失敗し、その身に呪いを受けて倒れた。しかし列国の賓客を招いてしまった以上、結婚式を延期する事などできない。俺は急遽、フェリシテ王女に花嫁の代役を頼んだ」
また場がざわつき、私は緊張でドキドキと胸を高鳴らせる。
「結果として、俺はみんなに黙ってフェリシテ王女と結婚した事になったが、ここで問いたい。呪いが解けた上皇陛下は、俺とフェリシテ王女の結婚を許可している。俺は長い間彼女を見守り、今は一人の女性として心から愛している。加えて帝国を救ってくれた恩人として心から感謝している。俺はフェリシテ王女を妻としたい。どうか許してもらえないだろうか?」
彼はそう言ったあと、帝国全土の人々が見ている中で頭を下げた。
その隣で私も訴え、頭を下げた。
「お願いします! 私はアルフォンス様を心から愛しています。皆さんに認めてもらえたあかつきには、必ず良い皇妃となるよう尽力いたします!」
どよめきは続き、その中で声がする。
「聖女様はどうお思いなのですか?」
それにレティが答える。
「私には聖女のお役目があり、夫を持って家庭を築き、国母となる覚悟はまだ持っていません。もっと見識を広め、人としての厚みを得ていく中で、良いお相手と巡り会えたらと思っています。断言できるのは、アルフォンス陛下と結婚すべきなのは私ではないという事です」
凜とした声で告げたあと、レティは微笑んで言った。
「妹は私にはない潔さがあり、人を信じられる懐の深さ、勇気、優しさと愛に満ちあふれた人です。彼女が皇妃となれば、帝国はさらなる繁栄に恵まれるでしょう。私が聖女として断言いたします」
聖女の正装である白い衣に身を包んだレティは、手に杖を持ち、優雅に礼をしてみせる。
その時――。
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