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『偽りの無能、真の覚醒〜転生皇女はすべてを奪い返す〜』
「信じられないな。……本当に、これが初めての特訓かい?」
帝国の広大な王宮の裏庭、結界が張られた専用の演習場。
お兄様――アルベルトは、呆然とした声を漏らしながら、私が放った魔法の軌跡を見つめていた。
私の目の前には、厚さ一メートルを超える巨大な鉄製の標的が置かれている。
その中心には、一切の歪みなく、綺麗な円形に抉り取られた大穴が空いていた。
私が放ったのは、初級の「氷弾(アイス・バレット)」だ。
しかし、ローゼマリーの極上の魔力回路によって純度を極限まで高めたそれは、初級魔法とは思えないほどの超高速の「貫通弾」へと変貌していた。
「お兄様のお教え方が上手だからです。
魔力をこうして、一本の細い糸のように絞り込むイメージですよね?」
私はあどけない笑みを浮かべながら、首を傾げてみせた。
アルベルトは一瞬、言葉を失ったように私を見つめた後、
深い溜息とともに破顔した。
「教えたよ。確かに教えたけれど……それを一度言われただけで、完璧に、いや、僕以上の精度でやってのける人間がどこにいるんだい?」
アルベルトは私の元へ歩み寄ると、その大きな手で私の頭を優しく、愛おしそうに撫でた。
「やはり君は天才だ。
いや、世界の理を超えた存在かもしれない。
嬉しいよ、ローゼマリー。
君のような至宝を、誰の目にも触れさせず、この僕が付きっきりで育てられるなんて、魔導師としてこれ以上の幸福はない」
その切れ長の瞳に宿る、狂気にも似た深い溺愛の光。
前世のバロア公爵家では、私が何をしても無視されるか、あるいは
「目障りだ」と罵られるだけだった。
それなのに、ここでは私が少し力を示すだけで、世界で一番の宝物のように扱ってもらえる。
この圧倒的な居心地の良さが、私の前世の傷を少しずつ、確実に癒やしていってくれた。
「お嬢様、アルベルト様。
特訓でお疲れでしょう。
冷たいハーブティーと、焼き菓子をご用意いたしました」
演習場の脇に用意されたガゼボ(東屋)から、
リンが楽しそうに声をかけてくれる。
リンは、私が驚異的な魔法の才能を見せても怖がるどころか、
「さすがローゼマリー様です!」
と我がことのように喜んでくれている。
「ありがとう、リン。ちょうど喉が渇いていたの」
私はアルベルトと共にガゼボへ移動し、リンが淹れてくれた極上のハーブティーに口をつけた。
爽やかな香りが鼻腔を抜け、火照った身体に心地よく染み渡る。
「――ところで、ローゼマリー。
君が魔法の制御をこれほど早く覚えたのなら、そろそろ次の段階に進んでもいいかもしれないね」
アルベルトが上品にティーカップを置きながら、ふと、その美しい瞳をシリアスに細めた。
「次の段階、ですか?」
「ああ。君の膨大な魔力なら、この帝国の外……例えば、
隣国へと『遠隔で魔力を飛ばす索敵魔法』や、
広範囲の情報を集める『情報魔術』の基礎も扱えるはずだ。
実はね……最近、南のバロア王国が妙な動きをしていてね」
『バロア王国』その単語が耳に飛び込んできた瞬間、私の心臓がドクン、と大きく跳ね上がった。
私の前世、シャルロットを無実の罪で奈落に突き落とし、自殺へと追い込んだ、あの忌々しい祖国。
私はカップを持つ手が震えないよう、細心の注意を払いながら、意識して静かな声を絞り出した。
「バロア王国……ですか? どのような動きを?」
「ああ。あそこの第一王子――カイルだったかな。1年ほど前に、長年連れ添った優秀な公爵令嬢を『無能だから』
と婚約破棄して国を追放したらしいんだが
……その後釜に座らせた『聖女』とやらの癒やしの魔法が、
どうやら真っ赤な偽物だったらしくてね」
アルベルトの口から語られる、かつての仇敵たちの現状。
私は平然を装いながら、耳を澄ませた。
「偽物……だったのですか?」
「そうさ。その聖女がカイルの不貞の言い訳に使っていた『呪いを解く奇跡』は、すべて身内の魔導師を使った自作自演だったことが、最近になって露見したらしい。
激怒した国王によってカイルは王位継承権を剥奪され、聖女共々、相当悲惨な境遇に追い詰められているようだ。
自業自得だね。無能な男が、真の宝を見抜けずに捨てた結果だ」
アルベルトは冷淡に、嘲笑うように吐き捨てた。
(――ふふ。あはははは!)
私の胸の奥で、暗く冷たい笑い声が弾けた。
カイル、エレン。私を悪役に仕立て上げて手に入れた幸せは、たったの1年しか持たなかったのね。
けれど、そんなもので終わらせるつもりはないわ。
国から罰を与えられたくらいで、私の復讐が終わると思ったら大間違いよ。
あなたたちが味わうべきなのは、国の法律による罰なんかじゃない。
無能と蔑み、崖から突き落としたこの私――
シャルロットの手による、絶対的な絶望なのだから。
「ローゼマリー? どうしたんだい、急に黙り込んで。
怖がらせてしまったかな?」
アルベルトが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
私は一瞬で復讐の炎を瞳の奥に隠し、ローゼマリーとしての、可憐で儚い笑みを浮かべてみせた。
「いいえ、お兄様。ただ……そんな愚かな人たちがいるのだな、と思って。私、そのお話に、少し興味があります」
「おや、珍しいね。君が他国の情勢に興味を持つなんて。
いいよ、君が知りたいことなら、僕の持つ情報網のすべてを使って、いくらでも調べてあげよう」
アルベルトは愛おしそうに私の手を握りしめる。
その温もりに包まれながら、私は心の中で、カイルたちの首元に冷たい刃を突き立てるイメージを浮かべていた。
力を手に入れ、盤石な味方を得た。元婚約者たちの没落の報せを聞きながら、
私の復讐へのカウントダウンは、いよいよその速度を上げていく。
ねむ
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#転生
コシ
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耀聖(ようせい)
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コメント
5件
なななななんでこんなにも良い小説を書けるんだい??? 国語私苦手だからかなぁ、、(?)
最高すぎるぅ!!
第4話読了です!特訓の成果でお兄様を驚かせるローゼマリー、静かな自信が感じられてかっこよかったです。でもお兄様の溺愛、ちょっと危ない執着の香りがして……癖になります。そこに届いた凶報。カイルたちの自業自得な没落は溜飲が下がる反面、「私の手による絶対的な絶望」という内なる言葉に鳥肌が立ちました。可憐な仮面の裏で復讐の炎を秘めるギャップ、最高です。続きも静かに読みにきます🌙